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傭兵、爆発に巻き込まれて異世界に転移する(第1部完)  作者: @ルケミー
第1部 第0章 傭兵、魔王討伐戦に参加する。
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公国

「やっと都市に着いたか。

 ふむ、ここの様子を見た感じだと、帝国とはいまだに緊張状態ってところか。多少の鮮度が落ちていても情報屋が言ってた内容とほぼ同じか。あとは不自然な内容と量のデマだが、この雰囲気で確認できるか、これ?」

『住民の方々は今の帝国と公国の状況から戦争が起こるのではと不安なのでしょうね。となると、戦争が起きることを国側が否定していないか若しくは否定しても起こる可能性が高いと考えられる判断材料が流れているのか、色々と勘繰りたくなりますね。

 それはそうと、ここまで何も起きなくて良かったですね、マスター。この後はどうしますか?』

「ああ、兵士に変に絡まれなくて良かった。

 よし、もうじき夕方になるし先にG.M.Cに行こう。どうせ検査に時間かかるだろうし、そのあとはギルドに行ってどこか適当な安宿でも紹介してもらおう。情報確認は大事だが、わざわざ危なっかしいところに長居する必要は無ぇ。とっとと終わらせて帰るぞ」

 住民と思しき人達がノームを警戒するように見ながら歩き、兵士が不審者を監視するような目つきで巡回している姿を見て俺達は公国の現状を事前情報とすり合わせて把握する。

 俺ははやる気持ちを抑え目的地まで大小様々な自動車や機械が行き交う大通りを事故に気をつけながらノームで歩いていく。


「ここだな。えっと、研究開発棟は......あった。

 えー、すみません。俺はBランク傭兵のミハエルです。定期検査でこちらに来ました」

『はい。確認を取りますので少々お待ちください。

 ......お待たせしました。確認できました。第3世代量産機[ノーム]の定期検査ですね。場所は第4棟です。どうぞお入り下さい。案内は別のAIが行いますので』

 俺は門の前に浮いているイクスと同じ大きさの警備用の球形AIを拡大映像で捉えて事前に受け取った書類を送って確認を取らせ、案内役というより監視役としてやってきた別の球形AIの案内のもと第4研究開発棟の方へノームを歩かせる。目的の建物へ向かう途中、俺は目の前の小さなAIを見失わないよう拡大映像で見つつ、時折別カメラで様々な人や機械などが行きかう様子を見ていたが、他国にある支社と比べてAIの数がかなり少ないことに気づく。

 公国の政府からの指示だろうか、だとしたら一企業になぜそこまでとあれこれ考えていると第4棟へ着いたらしく、案内役のAIが中型機械用の扉を開ける。すると、中から別の球形AIが姿を現し検査用格納庫へノームの誘導を始めた。誘導に従いノームを格納庫へ収納した俺はイクスとともにノームから降りて誘導を行ったAIの案内のもと今回の検査を担当する研究者がいる隣の区画へ向かった。

 


「お待ちしていました。ミハエル様。ノームの定期検査を担当させて頂く者です。今少し手が離せなくて、このような状態で失礼しますね」

「いえ、大丈夫です。今回はよろしく頼みます」

『よろしくお願いします』

 AIが扉を開き、俺達がその中へ入ると黄緑色の長い髪を雑にひとくくりにして白衣のようなものを着ている落ち着いた雰囲気の女性担当者が様々な機器の前で作業をしながら目線だけこちらに向けて挨拶をする。

 忙しそうにしている担当者の姿に俺はどうしたものかと思い、他に人はいないのかあたりを見渡すが、誰もいなかったのでノームの検査について話かけていいものかと悩んでいると、イクスが俺の心を読んだのか彼女に話しかける。


『すみません、前々から疑問に思っていたのですが、貴方達の生産している最新量産機は第5世代なのですよね? 第3世代であるノームの戦闘情報なんか集めてどうするのですか?』

「まあ! 何を言いますか! ノームちゃんは今までのどの量産機よりも特別なんですよ! さらに、このノームちゃんは他のノームちゃん達と違って普通の量産機なんかじゃないんです! 私達のような開発に携わった者から見れば、この子は新たな理論や素材がふんだんに盛り込まれた試作量産機(可能性の塊)なんですよ! それなのに上層部の連中ときたら、使えないオモチャなんか作ってないで実用性のあるものを作れとか偉そうに言いやがって、実用性の有無なんて作って動かしてみなきゃ分かんないっての。それに、最近じゃうちのところの上層部と公国のお偉いさんが持ってくる兵器をただただ量産してろだとか何とか命令してくるしここは研究開発するところであって量産はちゃんと別部門があるでしょまったく私はそんなことをするために研究開発をやっているわけじゃないのにほんとせっかくノームちゃんのいい感じな強化計画案を思いついてみんなに見てもらおうとそれをまとめてブラックb......」

「あー、イクスが変なことを言ってしまいすみません。えっと、俺は結構気に入ってますよ。軍学校の訓練機もノームでしたし。使いやすくて良いですよね。それに、えーっと、操縦にクセもないですし? えーっ......あっ、操縦席内の環境も良いですし。あとは、えーっと、あとは......」

「流石はこの子をお迎えしたお方、いえ、この子に選ばれたお方ですね。見る目が違います。この子を貴方のような素晴らしい傭兵に譲り渡した開発仲間を絶賛したいですね」

 俺も疑問に思っていたことをイクスが一切の遠慮なしに言うと、さっきまでのもの静かな様子から突然可燃物が爆発して燃え広がるかのように担当者が語りだし、よほどの恨みでもあったのか社内の機密事項のようなものが愚痴とともに飛び出し始めたので急いで俺は彼女を諫めるために話題を逸らす。

 なんとか担当者を静めることに成功したが、ノームの検査の話をするまでこの状態を維持できるか内心でドキドキしながら会話を続ける。


「あぁ、あの時は丸め込まれて押し付けられたと思ってましたけど、今にして思えばかなり得したしある意味その人には感謝してます」

『そういえば、あなたも開発者であるならば、何故1人で作業してるんです? 他の仲間の方はいないのですか?』

「それはですね。この子の情報分析を行う者が社内に誰1人いないからです。

 貴方は傭兵であちこちノームちゃんを乗り回すでしょう?

 なので、何処でも対処できるように当時の開発チームであった私達が各支社や支店に最低1人はいるように各地に散って待機しているのです。情報共有はきちんとしていますので大丈夫です。それに、基本的な業務はすべてAIがやってくれますので1人でも問題無いのですよ。あ、もちろん、ノームちゃん以外の研究開発もちゃんとやってるわ。」

「あー、そうだったんですか。本当にありがとうございます。あなたたちのおかげで助かってます。大変でしょうけど頑張ってください」

 このまま続ければ無事に本題に入れると思っていると、イクスがさっきまで俺が気になっていたことを担当者に尋ねる。俺は彼の発言に一瞬ドキリとするが、彼女は何事もなく普通に疑問に答えていたのでよかったと思いつつ、彼女の言った業務をAIに任せているという言葉を聞いて、そういえばここも他と比べてAIが少ないようなと気づいてあたりを見渡す。そして、担当者のテキパキと作業を行なっている様子を見て俺は感謝の言葉を述べると同時にこれまで出会ったノームの担当者達に心の中でも感謝をしていた。

 そんな俺に担当者が不穏な声で話しかけてくる。


「私からも質問いいですか?」

「ええ、どうぞ」

「私、この子の複座型操縦席の開発を担当した者なのですが、戦闘情報を見る限り副操縦席が使われた形跡が無いのです......どうしてですか?」

 突然ピタッと手を止めた担当者が体はディスプレイを向いたままグルリと顔だけをこちらに向け、冷ややかな声で俺に尋ねてくる。彼女自身の熱気のようなもののせいか髪の毛がユラユラと揺れている、というより蠢いているように見える。


「え、えぇ? どうしてって、それは、乗る人間がいないからでしょう?」

「そ、そんな、困ります。複座型は操縦者とオペレーターが乗り込むことでどんな状況下でもスムーズに戦闘が行えるようにと私が設計したんですよ!?

 それに、戦闘補助用AIと協力することでより戦況に関する情報処理が速く的確になり、操縦者とオペレーター、AIがそれぞれ負担なく戦うことができ、より生存率が上がるという三位一体システムも導入したのに。

 あと、搭乗者のいずれかが熟練者である場合に、戦場で他の初心者を安心安全に実地訓練を施して育成することもできる便利機能だって載せたのにそれをなんで......」

『マスターはきちんと副操縦席を利用していますよ。物置兼寝床としてですけど』

 担当者の様子に俺が原因が分からず困惑しながら当たり前のことを言うと目を見開いた彼女が椅子から立ち上がって俺に掴みかかりガクガクと体を揺らしながら機関銃の如く喋り出す。何がどうしてこうなっているんだ、とにかく誰か止めてくれよと体を揺さぶられながら思っているとイクスが爆弾を投下する。


『特に最近は宿に泊まらず駐機場での機内泊が多くて、そのための毛布や携帯口糧保管庫、給水機なんかもあそこに置いていますよね、マスターは。それに、傭兵なりたての頃に無理して買った故郷にあるコンテナ型居住区付格納庫なんて今じゃ文字通りの物置ですから荷物整理以外に使うことはないですよ。無駄遣いが多いですよ。だから万年金欠なんですよ』

「そんな......どうして副操縦席に人ではなく物を乗せているんですか?!

 ボッチなんですか?! 誰か傭兵ギルドで誘える人いないんですか?! 斡旋とかされてないんですか?!」

「だぁー、もう、うるせぇ! ボッチじゃないわ!! イクスもいらんこと言うな! それと余計なお世話だ!

 そもそも、機械操縦者と一緒に危険な前線に行くオペレーターなんかいる訳ないだろ! どこの傭兵に雇われるオペレーターもみんな後方から支援車両や船舶とかに乗って仲間を援護してるわ!

 つまり、このシステムは失敗してんの!」

 さらに強く体を揺らして好き勝手なことを言ってくる担当者と今までの俺の懸命な努力を吹き飛ばすかのように火に爆弾を放り投げたイクスに、さすがに俺はキレて担当者の腕をほどいて体の自由を手にしてから両者に対して反論する。

 すると、担当者の燃え上がる何かが鎮火したのか、彼女はシュンという音が聞こえそうな感じで体を縮こませそのままフラフラと椅子へ座り込み両手で顔を覆う。


「そうかぁ。失敗かぁ。あの時は上手くいくと思ったんだけどなぁ。

 ......うん、やっぱり理論だけじゃダメね。実戦してこそ本当のことが分かる。よし、この経験を次に活かすぞ。だからあなたたち、これからも戦闘情報の収集に協力してね」

『流石はノームの開発者、立ち直りが早いですね』

「ああもう、好きにしろよ」

 老け込んだなぁと思いきやすぐに若返ってやる気に満ち溢れる担当者を見て俺は検査に来ただけなのにどっと疲れた、とにかくここを早く出たいと願うのであった。

 ちなみに、この後は立ち直ったおかげかまともになった担当者によって順調にノームの検査が進むのであったが、最初からやれよと思いつつなんとか耐えて言わなかった自分をほめてほしいのとなんでこういう時にイクスは俺の心を読んで言わないんだという気持ちがせめぎあって複雑な心境で作業を見守っていたのは別の話。


「先程は失礼しました。全ての作業が終わりました。ご協力ありがとうございます。

 お詫びとお礼にこの子の整備と補給を無償でしますね。ただ、時刻がもう夕暮れでして、作業完了が翌日になってしまいますがよろしいですか?」

「ああ、はい、お疲れ様です。もともと、この後はギルドに行って宿の紹介をしてもらおうと考えてましたので大丈夫ですよ。その間ノームをお願いします。一応、イクスも置いておきますので何かあれば彼に言ってください。

 あ、あとすみません。E(エネルギー).A(アサルト)ライフルとE(エネルギー).C(コンバット)ナイフ、E(エネルギー)シールドを新しく買い替えるのと、対小型機械用胸部E(エネルギー)機関砲、対超小型機械用頭部機関銃の整備と補給をお願いできますか? 料金は払いますんで」

「はい。全てお任せを。ノームちゃんは隅から隅までじっくりと舐め回すように整備します。それに、この子の大事な嫁入り道具(武器類)もね。ウフフッ」

 担当者の後半ほとんどのセリフを無視して俺は注文を言ったあと、そそくさと建物から出て歩いて傭兵ギルドまで向かった。そして、宿を紹介してもらおうと思っていたら、なにやら新人傭兵がこの街に多く集まっていて、彼らによって安い宿がすべて満室になっているらしく、俺が提示する金額で泊まれる宿はないと言われてしまった。さすがに、整備中のノームの操縦席に泊まるわけにはいかないので俺は仕方なく少し高めの宿を紹介してもらい、そこで一泊して翌朝に報酬を受け取るためにギルドの建物へ向かった。


「Bランクのミハエル様。確認ができましたので、こちらをどうぞ」

「ああ、ありがとうございます。

 ......おお、こんなに。てか、討伐報酬もすごい額だが、依頼者に渡した盗賊が使ってた機械の部品の額がすげぇ」

『すごい額ですね。あの盗賊団、地味に有名なだけはありますね。それと、分解した機械部品をなかなかの値段で買ったようですね、あの商人』

 俺はギルドの受付で報酬を受け取りその場から少し離れたテーブルに向かい、端末で内容を詳しく確認しながら予想以上の大金に少し顔をニヤつかせているとイクスが通信で話に参加する。


「よし、大金も入ったしさっさとここを離れて観光が盛んな国にでも行って少しのんびりしようかな。こんだけありゃ航空輸送便使っても余裕があるし良いかもしれねぇ。イクス、ノームの整備はどうなってる?」

『もう少し時間がかかるそうです、マスター。

 それとマスター、観光地でのんびりすると言っても、観光名所には行かず安い酒場で飲み食いするだけなのでしょ? それより少しは貯金したらどうなのです? 金欠という札が切れてしまった以上、無意味に金欠でいる必要がないと思うのですが。せめて、武器をそろえるとか考えないのですか? このお金なら武器収納パックと一式武器セット、外付けのバッテリーを買っても十分おつりが出ます。いい加減アサルトライフルとナイフで全てを片付ける癖を直したほうが良いと思います。聞いてますか? 私はマスターの将来を心配して......』

「だーもうわーってるよ。ちゃんと貯金分は考えておくって。それと武器はまだいいだろ。しばらくは小規模な戦闘が絡むやつしか受けないつもりだし、下手に装備を拡充してると面倒なのに絡まれるんだよ。

 それより観光だ。イクス、文句を言ってるが観光客向けの安い酒場は良いもんだぞ。まあ実際問題、飯も酒も美味く無いが、こう、たまたま出会った他の観光客や現地の人からいろんな情報を交換し合ったり、世間話という名の馬鹿話をしたり、それらを笑いながら楽しむその場の雰囲気とかがさ、良いんだよ。俺は好きだねあの空間。

 てか、前にも言ったがもともと俺は旅がしたくて傭兵になったんだぞ? 今まで借金返済のために依頼をこなして時たま息抜きしてを繰り返し続けてきて気ままな旅なんてできなかったんだから、これくらい良いだろ?」

 ここでのやるべきことをすべて終え、あとはノームの整備が終わるまで時間をつぶすだけなので俺はイクスからのお小言を華麗に聞き流して少し先のことについての妄想に入り浸っていた。

 そんな俺を現実世界に引き戻すかのように突然大きな音をいくつもたててギルドの自動扉をくぐる複数の人影が現れる。


「傭兵ギルドの諸君、突然の訪問失礼するよ。なにぶん、緊急事態なんでね」

「ええっと、すみません。当ギルドにどのような御用でしょうか?」

「受付嬢風情が、何を勝手にしゃべっている。まだ私が話をしている途中ではないか。それと、この私に気安く話しかけるな。

 私は公国軍最高司令部所属の佐官なのだぞ。貴様のような下賤な身分とは違うのだよ」

 この場にいたすべての人間が突然やってきた集団に注目する中、その集団の中から先頭へ歩み出てきた煌びやかな飾りのついた白い服を着て黒色の帯剣を動くたびにガチャガチャと鳴らす偉そうな金髪オッサンが喋り出すと受付嬢が何用かと尋ねてしまう。彼女の行いにオッサンがごみを見るような目をして非難する。

 これだけのやり取りで公国軍の面倒な内情とすごく嫌な予感を感じたのは俺だけではないはずだと俺は周囲を見てみると困惑する人や関係のないフリをする人のほかにギルド職員達が異様に殺気立っている様子が見えた。


「いいか、よく聞け、今回私がわざわざこんなところに足を運んで来たのは貴様ら傭兵を召集するためだ。

 つい先ほど、帝国軍が我が国の国境付近に進軍しているとの情報を我が軍の情報部が得た。

 帝国の連中は現状に対してヤケを起こしたに違いない。周辺諸国へ戦争を吹っかけるそうだ。だから、戦力もかなり分散されて少ないはずだと我々は考えている。

 だが、敵の数が少ないからと言って油断するわけにはいかない。常にしっかりと国境の守りを固めねばならないが、その役目は公国軍の我々が全うするから安心して欲しい。

 と言う訳だ、傭兵の諸君らには我々に代わってやってくる帝国軍どもを叩き潰してもらいたい。

 因みに、これは任意ではなく強制だ。我が国に現在いる全ての傭兵は参加義務がある。きちんと国連の許可もある。

 我々軍は貴様らの出入国管理を徹底しているのでな。我が国にいるのに参加しなかったと判明したものは国連の掲げる人類守護に反する存在とする。分かったな?」

 静まり返ったギルドの中で、オッサンはそう言ってそのまま帰っていった。

 しばらくしてから、え? 言うだけ? なにか書面的なものは? と俺が思っていると何かを受け取ったのか受付嬢が慌てた様子で受付カウンターから手を振って声を張り上げる。


「あ、えーと、すみません。軍からの強制依頼です。この場にいる傭兵の皆さんはこちらに来て受付をしてください」

「おい、ふざけんなよ! 俺はさっきDランクに上がったばかりだぞ。戦争なんて生き残れる訳ないだろ!!」

「そうだそうだ! 特にこの国の奴ら傭兵に対する扱いが酷いってのに、こういうときでも偉そうにあいつら......俺達は都合のいい駒かよ! クソッ、だから俺はここに来たくはなかったのに! 用事さえなければ......」

「え? そうだったのか......軍に言えば最新鋭機を安く譲ってくれるって聞いてここに来たら本当にくれたからてっきりいい国だと思ってたのに......」

 静まり返っていたギルド内は受付嬢の一言で新人傭兵を中心にこの場にいる全ての傭兵が騒めきだす。俺は彼らの慌てようと騒ぎようを見て、巻き込まれないようにテーブルから離れ入口付近の壁によりかかるが、移動中に傭兵の誰かが気になることを言っていたような気がしたので注意深く聞き取ろうとした。しかし、喧噪の中から特定の人間の声を聞き取ることができず、イクスからもなにも言ってこなかったので忘れることにしてこれから始まるであろう面倒ごとに対して愚痴ることにした。


「はぁ、マジかよ。せっかくこの後の予定を立てたってのにタイミング悪すぎだろ」

『ある意味でタイミングが良いですね。来年の事を言えばオーガが爆笑? でしたっけ?』

「知るかよ、そんなことわざ。それに、オーガなんて空想上の奴だろ?

 そんなことよりマジでどうすっかなぁ。今から装備を考えようにももう遅いよなぁ。はぁ」

 受付付近で新人傭兵が受付嬢に掴みかかろうとして他の職員から拘束されているさまを見ながら、俺はやる気なさげにイクスと駄弁った後、彼からノームの整備が終わったという連絡を受けノームを取りにギルドを出るのであった。

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