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傭兵、爆発に巻き込まれて異世界に転移する(第1部完)  作者: @ルケミー
第1部 第2章 傭兵、異世界人と遭遇する。
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異世界人発見

 今日のお昼前に地震があったけど、あれはいったい何だったのかしら。

 ここは王国領で公国との国境である魔の大森林。何が起こるか分からない危険な場所だけど今まであんな大きな地震なんて無かった。きっと何か良くないことが起こる前兆に違いないわ。私のいるほうに被害が出ないかどうか急いで調査しなくちゃ。


 私は森の中にある家の地下の研究部屋で日課の魔術具研究をしていたら、突然大きな揺れが起き、驚いて器具を落としそうになった。

 最初は大型の魔物が近くをゆっくりノシノシと通り過ぎただけかと思ったのだけど、周囲に張ってある魔物を感知する魔術具に反応が無かったから私は急いで魔物対策の用意をしローブを羽織って家を飛び出し調査に向かった。


 あれからだいぶ時間がたったけど今のところは何もなし......か。魔力の流れも特におかしな感じはしない。ふぅ、この調子なら何かいたとしても私の家に来ることはなさそうね。はー、安心したらなんだかお腹減ってきちゃった。お昼食べずに飛び出してあちこち走り回ったし、ここの魔物は危険だからなるべく遭遇しないよう常に魔術を普段以上に発動してるから魔力の減りも早いし。

 冷静になって思えば、何かの魔物の影響なら他の魔物にも影響がすでに出てるはずだし、誰かの仕業だったら何か他に動きがあるはずだわ。もしかしたら、たまたま大きな地震が起きただけかも。ま、まあ、気分転換だと思えば無駄足じゃないわ、うん。

[キュルルルゥー......]

 はぁ、そんなことよりもお腹減ったわ。さっさと安全を確認して家に帰ってお昼を食べよ。今日のお昼は何にしようかな。

 あっ、家に帰るといえばそうだ、最近の魔術具の研究、最近なかなか捗らないのよね。見聞を広めるためにそろそろ旅に出たほうが良いのかな? うーん、でもいくら魔術がそこそこ使えると言っても一人で旅するのは嫌だし、誰かと旅しようにも信頼できそうな人がそうホイホイ出てくるとは思えないし......


 魔物から自分自身の姿や臭い、気配などを消す隠蔽の魔術と魔力探索用の魔術を常時発動しながら魔物との遭遇を避けつつなるべく草が生い茂っていないところを走って地震の原因を探していると、何も起こらないせいで緊張感が和らいだのかお腹が鳴ってしまい、徐々に私の集中力が少しずつ下がっていき、ボーッと今日のお昼と今後の魔術具研究について考えていた私はいつの間にか森が開けた場所に来ていた。


 あれ? ここは......どこ? というよりどうして森にこんな場所が? もしかして、魔物の住処? こんなにわかりやすいところどうして今まで見逃してたのかしら? うん? あそこにいるのは......人? まさか、こんな所にいるなんて。一体何をしてるの?


 不可思議な場所を発見してこの辺りにこんなところあったっけ、と考えていると中央にいる深い緑色の鎧のようなものと顔を全て覆う兜を着けた、人間の騎士のような姿をしたものを見つけ、私は近くにあった木の後ろからコッソリと顔を出してその人を観察する。


 遠くて聞こえないけど何かを喋ってるわ。魔力量は高くないから魔族ではなさそうだけど、公国や王国の騎士でもなさそうね。あんな鎧見たことないわ。それに、あの人の周囲に何か丸い物が飛んでるけどあれは魔物かしら? 一体彼等は何者なの?


 見れば見るほど得体の知れない相手に恐怖を抱いたが、正体が何なのか、ここで何をしているのかなどと好奇心が勝ってしまったので、私はしばらく観察をすることにした。しかし、突然、鎧の人物がこちらに向け歩き始めたので、私は気付かれたと思い、急いで顔を引っ込めて木の影に隠れ息を潜める。

 魔術で姿や気配を隠しているはずなのに鎧の人間がまっすぐこっちに向かってくるのを足音で判断した私はなんでバレてるの? いや、たまたまだ。きっとあたりをつけて来ただけで私の位置まではバレてないはず、と心の中で慌てるが冷静になるよう自身に言い聞かせていた。


「縺昴%縺ォ縺?k縺ョ縺ッ蛻?°縺」縺ヲ縺?k縲。

 螟ァ莠コ縺励¥蜃コ縺ヲ縺上l縺ー菴輔b縺励↑縺??」

「ひぃっ」


 鎧が何かを言うが何を言っているのか分からなかった私は明らかに隠れてる私がいる方へ向けて声をかけてる、絶対バレてる、どうしよう見つかったら殺されるかもしれないと今更ながらに思い、でも隠蔽の魔術を使ったのにどうしてバレたの、とパニックを起こしてその場にうずくまってしまう。

 そして、しばらくした後、鎧は私のもとへ近づくと腕をとり強引に木の影から開けた場所へと連れて行く。


「ひぃっ。助けて! 殺さないで!! 私は何も見てないし聞いてないわ!! だからお願い見逃してぇっ!!」

「險?闡峨′騾壹§縺ェ縺?h縺?□縺ェ縲。

 繧、繧ッ繧ケ縲∬ィ?隱樒炊隗」縺ョ陬懷勧繧帝?シ繧√k縺?」

『縺贋ササ縺帙r縲√?繧ケ繧ソ繝シ。

 險?隱櫁ァ」譫舌?縺吶〒縺ォ螳御コ?@縺ヲ縺翫j縺セ縺』


 鎧と球体が何かを話しているようだけど、泣きながら後悔をしている私はそれどころではなかった。とにかく、何も見ていないのと知っていないというアピールを全力で行って何とか殺されないよう考えるのに必死だった。


「アー、ソコのオジョウさん? ワタシはテキじゃないヨ? なかナイデ。ホラ、食べ物をあげるから」

『コエのカケカタがマルッキリ不審者ですよ、マスター』

「え? なに? 食べ物......?」

[キュルルルゥー......]


 鎧の人間が泣きじゃくる私の前にしゃがみ、球体がその隣に来てそれぞれカタコトで喋り出し、食べ物という言葉だけは聞き取れた私は、食べ物ってどういうことなの? 秘密を知られたからには殺すとかじゃないの? と思い、徐々に落ち着いていきゆっくりと泣くのをやめ、突然言葉が理解できるようになったことにあっけに取られるが、食べ物と聞いた私のお腹は鳴き声をあげた。


〜〜〜


「初めての異世界人遭遇がこんな風になるなんてな」

『ええ、流石に予想外でした』

「何これ。なにこれ! ナニコレ!! 今まで食べたことない味がするわ! なんかよく分からない色してるし色によって味が変わるなんて面白いわね! 不味くないけど美味しくもない、でも食べれる! 不思議ね! 一体何が材料なんだろう? 気になるわね!」

 俺とイクスは目の前の異世界人である茶色い半ズボンに白色の半袖と灰色のベストのようなものを着てその上に黒色のローブのようなものを羽織ったそこそこ軽装の白髪金眼の少女が俺が軽食のつもりで持っていた一本昼食バー(三種のおにぎり沢庵付き※風味)を夢中で貪っている様子を見て何ともいえない雰囲気を感じていた。彼女が色々と落ち着くまで俺は彼女と遭遇する前の出来事を思い出すことにした。


〜〜〜


「よし、昼飯食ったし、やることやったし。生身での鍛練に励むとするか。イクス、すまねぇが手伝ってくれ」

『承知しました、マスター。疑似ホログラムによる射撃と格闘訓練ですね? お手伝いします』

「ノームは置いていくからその間管理を頼むぜ、少年イクス」

「はい。お任せを」

 イクス達が大量に作った熊肉料理を全て食った俺は、その場にいた少年執事にノームを預け、本体イクスとコンテナの外へ出てエレベーターに乗り込み地上へ向かう。


「久々のスーツとヘルメットを使ったホログラム訓練だ。これなら大きな音を立てずに訓練できるから外で思い切り身体を動かせるぞ」

『食後の運動ですか。肉をあれだけ食べてよく動けますね』

「いや、食わせてきたのはお前らだろ。こっちは結構腹がいっぱいでキツいんだぞ。本当はノームの操縦訓練をしておきたかったが、たぶん吐くかもしれねぇ。それと、体を動かしてある程度腹を空かせておきたい。いやはや、様々な調理法で作ったとはいえ流石に肉だけってのは色々とキツいな。まあ、それなりに美味しかったが」

 地上に出た俺は軽く準備運動をしながらイクスと昼飯について、今回の肉は薄く切って炒めてみたり茹でてみたり単純に焼く以外の方法で調理したらしいが、食感とか味わいみたいなもんとか全然違ってくるもんだな、でもやっぱ味が薄いなど話をし、スーツ右腕部の端末を操作してヘルメットのバイザー内側に異世界で遭遇した動物をあたかも目の前にいるかのように映し出させる。

 バイザーに映像を映し出すことで疑似的なホログラムを作ることができ、専用の映写機や施設がなくても簡単にホログラム訓練を行うことができる画期的なシステムだが、映し出したものを動かすのは端末操作者しかできないため、一人ではできないという欠点がある。俺にはイクスがいるので彼に熊や猪の動作をやってもらうので問題なく、より現実的な訓練を行うことができるのである。

 そして、しばらく訓練をして二足歩行や四足歩行の動物相手での射撃戦闘や格闘戦闘の感覚を掴みいい感じに小腹をすかせていると俺とイクスは異変に気づく。


『!? マスター。接近する生命反応です。これは動物ではなさそうですね』

「ああ。動きに知性を感じる。しかも、人型というより人間の可能性が高そうだ」

『何やら、こちらを観察しているようですね。敵意は無いようです。どうしますか、マスター?』

「気配を隠す気がなさそうだな。ならば、素直に用件を聞いてみよう。だが、油断するなよ。あえてそういう風に振る舞っている可能性がある。常に周囲を警戒しろ」

 俺とイクスはすぐにこちらを観察している相手へ近づくことはせず、しばらくは訓練をしている体を装いつつ相手の出方をうかがう。そして、こちらに近づいてくる気配はなかったので訓練を中断し、武器を仕舞った風に装って反応のある木に向かってわざと足音を立てて歩くが、隠れている奴は出てくることはおろか、その場を動こうとはしなかった。

 全く反応が無いので俺は罠の可能性を考え油断なくハンドガンを構えて声をかける。


「そこにいるのは分かってる。

 大人しく出てくれば何もしない」

「縺イ縺?▲」

 声をかけても変な声を上げるだけで木の影に隠れている奴は一向に姿を現さなかったので仕方なく、近づいて覗いてみるとうずくまっている少年くらいの身長の人がいたので、やはり何かの罠かと思って腕あたりを掴んで開けた場所へ引き摺り出すと、それが羽織っていたローブのフードが捲れ、少年だと思っていたその正体が少女であることが分かり、俺は驚いて銃を突き付けたまま固まる。

 そんな俺に気づいていない少女は涙を流して何かを訴えるように騒ぎ始める。


「縺イ縺?▲。蜉ゥ縺代※!谿コ縺輔↑縺?〒!!遘√?菴輔b隕九※縺?↑縺?@閨槭>縺ヲ縺?↑縺?o!!縺?縺九i縺企。倥>隕矩??@縺ヲ縺?▲!!」

「言葉が通じないのか。イクス、言語理解の補助を頼めるか?」

『お任せを、マスター。言語解析はすでに完了しています。言語パターンが似ていますのですぐに習得は可能です』

 相手に敵意と俺達を陥れようという気を感じないことと相手と会話ができていないことを理解した俺はイクスに補助を頼み、ヘルメットに内蔵された翻訳機能付きのスピーカーを使ってすぐさま言語を合わせ、敵意がないことを泣いている少女に示そうとする。

 異世界のはずなのにどうして言語が似ているのか気にはなったが今は対話を試みるのが先決だと俺は考え、とにかく敵意がないことをアピールするために銃を仕舞いケースから携帯口糧を取り出す。


「アー、ソコのオジョウさん? ワタシはテキじゃないヨ? なかナイデ。ホラ、食べ物をあげるから」

『コエのカケカタがマルッキリ不審者ですよ、マスター』

「え? なに? 食べ物......?」

[キュルルルゥー......]


 俺は少女の目の前にしゃがみ、イクスは俺の隣に来て最初はカタコトで喋り出したが、最後あたりは流暢に話せるようになった。すると、言葉が通じたのか少女は泣くのをやめ、呆然とこちらを見るが、何故かその場でお腹を鳴らすのであった。

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