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傭兵、爆発に巻き込まれて異世界に転移する(第1部完)  作者: @ルケミー
第1部 第1章 傭兵、異世界でサバイバルをする。
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周辺探索3

「そうだ、忘れてた。この解体した余りはどうすんだ? 流石に肉は全部食いきれないし、内臓とかいうやつなんか食えるとも思えないしな」

『マスターは食べることしか考えていないのですか?

 処分を考える前にまずは解体時に得た情報をまとめましょう。結論を言えば、私達の世界にいた猪の情報とこの緑色の猪はほぼ変わりません。まだ断定は出来ませんが、ここの動物は私達の世界のものとほぼ同じと考えて良いと思います。あとで解体記録を送っておきます。

 しかし、同じものとはいえ大気や鉱石のときと同様に例の物質が体の至る所に含まれていましたね。特に、この薄い緑色の塊はほとんどが例の物質で構成されています。さらに言えば、これに関する情報が私達の世界のものには全く無いのでこれの正体が不明です。もしかしたら、例の物質を取り込むまたは生み出す機能があるのかもしれません』

「悪かったな食い意地張ってて。

 俺たちの世界とほぼ同じなら情報さえあれば初めて見るやつでも問題なく対処はできそうだな。もちろん、情報にないやつもいる可能性があるから警戒はするぞ。

 で、これがその塊か。大きさはさっきの鉱石と同じくらいだが重さはほとんど感じないな。どうなってんだ?」

 初めての動物の肉を堪能してしばらくした後、残った猪の肉や内臓を見て俺は処分をどうするか思い出したようにイクスに尋ねた。すると、彼からあきれるような視線を向けられ、まずは情報処理をということで彼の分析結果を聞くことにし、それを聞いた後、俺は内臓の一部だと思っていた塊を持ち上げ、鉱石の時と同じように軽く上へと投げて異常な軽さを感じていたが、ふとイクスの話に気になることがあったので彼に聞いてみる。


「ん? 体の至る所に例の物質って......まさか、肉にもあったんじゃ無いのか?」

『はい、ありました。ですが、死ぬと機能が停止し体外へ抜けていく性質があるのか、最初は一定量あった物質が徐々に減っていき、解体を終え調理をする頃にはほとんどありませんでした』

「よかった......

 だが、流石に少量とはいえ例の物質を飲み込むのは危なくねぇか?」

 俺は慌てて塊を地面に置き両手で腹を押さえるが、イクスは俺の心配をよそにさらりと言う。彼の言葉を聞いてホッとしたが、行動を間違っていたら危うく危険な状態に陥るところだったのでこれからは気を付けようと俺が気を引き締めながら例の物質の話を彼にするととんでもない事実を知る。


『いえ、呼吸の段階で少量飲み込んでいますし、全て体内に蓄積されずに外へ出ています。この結果から、マスターの体は例の物質を体内に溜め込まないと判断できます』

「そういうのはもっと早く言ってくれないかねぇ?」

『すみません。てっきり知っていて食べているものだと思っていました。あと、整理する情報が多すぎますので私達にとって必要な情報を優先的にあげるようにしていました。それに、マスターの死に繋がるものではないと判断すると、どうしても報告が後回しにしてしまうのです』

「はぁ、まあ、確認しなかった俺も悪いな」

 呆れる俺にイクスが若干の申し訳なさを醸し出して謝罪をするが、その後の反論の余地が全くない言い訳をものすごく饒舌に語るので、本当にコイツは優秀なのかポンコツなのか分かんねえなと思いつつ、これまで集めた情報から考えれば必然とたどり着けてたなと心の中で情報処理を怠った己に反省をした俺の心情を察しているのか、平然としている彼を見ながら俺は再度呆れる。


『はてさて、猪の余りものの処分についてですが、あの塊以外全て埋めてしまいましょう。例の物質が含まれていたという事実以外に特にこれといった特徴が無い毛皮や牙なんか取っておいても使い道が無いですし、研究素材ならあの塊があれば十分です。肉や内臓は生だと傷みますし、加工技術や保管技術が私達には無いですからノームへ持って行ってもゴミを増やすだけです』

「わかった。勿体無ぇが、使えないんじゃ持っていてもしょうがねぇ」

 イクスの案を聞いて納得した俺はヘルメットを被り、薄い緑色の塊をケースに入れてから森付近に鉱石を採掘した要領で穴を掘り、その中へ猪だったものを全て放り込んで雑に土をかぶせて埋めた。


「さて、ノームの所へ戻りますか。バッグを取りに行ったときはまだ何も起きてなかったが、そろそろ何かしらの結果が分かる頃合いだろ」

『そうですね。途中、色々とありましたが今一番のすべきことはノームの修理ですものね』

「帰りは荷物が少ないからすぐに行けるぞ。早く確認しなきゃな」

 バッグを背負って俺は来た道を気持ち早めに走ってノームの所へ戻り、到着してすぐに腹部の確認を行う。


「お。傷が直ってるぞ。それと胸部の傷や焦げ跡も少しだが直ってる。凄くねぇか?」

『あの少量でここまでとは。予想以上に優秀みたいですね。それに、あの鉱石は金属と例の物質以外の不純物が無いようですね。普通にありえないのですが、これも異世界だから、なのでしょうか』

「とりあえず修理が可能だって分かったんならそれで良いじゃねぇか。早速持っていけるだけ採りに行こうぜ。

 あ、入れるもんが無ぇな。仕方ねぇ、緊急用バッグの中身を出してこいつの中に詰め込むか」

『私はノームに乗り込んで探知を行います。定期的に確認しないと危険ですから』

 奇麗になったな、まるで新品みたいだぜと驚きながら俺は傷があった場所を触ったり軽くたたいたりして調子を確かめ、収容箱に入れた鉱石が無くなっているのをイクスと確認したあと、彼と操縦席内へ向かいバッグの中身を内部の後方の隅に置き、彼が台座に嵌まるのを確認してから外へ出ると、鉱石が採れた山へ走っていった。

 その後はあちこちの地面や岩壁などを掘ったり削ったりしてバッグに入れるだけの鉱石の採掘を行った。そして、バッグがいっぱいになるころにはそこらに無数の穴ができていた。


 おし、こんだけ採れば十分だろ。足りなくなってもまた採ればいいし。穴は......埋めなくていいか、時間かかるし。

 しっかし、この鉱石、ちょっと掘ればポンポン出てくるな。この世界じゃありふれたもんなのか?

 まあいいや。急いで戻ろう。

 そんなことを思いながら鉱石が詰まったバッグを軽々背負って俺はノームへ向かって走る。何度も草や木の根であふれる森の中を走っているので今ではイクスが最初に計算で出していた時間の通りに移動することができていた。


「おーい、戻ったぞ」

『お帰りなさい、マスター。早速ですが、採ってきた鉱石を各部位の収容箱に入れてください。私は傷の修復と欠損の復旧にどれくらいの時間と鉱石の量が必要かノーム経由でナノマシンに接続して調べます。おそらくですが全快に1か月以上はかかると思います』

「欠損状態からの自己修復じゃそれくらいかかるよなぁ。コンテナがあれば新しい部位を早く造れるんだがな。無いもんはしょうがねぇ。はぁ......コンテナ、ノームの簡単な整備以外であんまり使わなかったな......」

 戻って来てすぐに俺はとってきた鉱石を胸部や右腕部など入れられる箱すべてに鉱石を流し込む。そして、作業を終えてイクスからおおよその修理にかかる時間を聞いたあと、若いころに先を見据えて買ったのにまさか異世界に飛ばされるなんて当時でも思わねぇよなと俺はあの頃を思い出し若干哀愁を漂らせながらノームの失った左腕と左足部分を見つめる。

 そんな俺のしみじみとした空気を台無しにするようにイクスが突然奇声を上げる。


『ん? は? ええっ?!』

「どうした、イクス? 変な音出して」

『す、すみません、マスター。その、全ての修理にかかる時間が......1日で終わるという結果が出たのですが......』

「はぁ?! そんなバカな!? 1日って、外装だけの修理とかそういうことだろ? だって、骨格やケーブルとかの内部構造なんて中身や造りが複雑だから1つの部位を民間用製造機で1から造るとなると早くても1週間はかかるのに」

 異世界に来て2度目のイクスの慌てようを見て、何かとんでもないことでもあったのか? まさか爆発......はないだろうな、と俺が考えていると、彼は歯切れ悪く修理に関する内容を話しだす。俺はそれを聞いて驚きながら見間違いか計算違いなのではと人間ならありえることをAIである彼に聞いて確認をとる。

 イクスは相当慌てているのか、俺の質問に答えることはせずに次の報告を俺にする。


『さらに、修理だけでは材料が余るのと私達の世界の金属よりも優秀なようなのとでノーム全体の能力を強化することも可能みたいです。それも含めて1日、正確に言えば夜明けには完了すると結果が出ています』

「おいおい。流石は異世界とか言ってられねぇぞ。そんなやべぇもんがその辺の山に転がってるとか、もし文明がそれなりに進んだ異世界人と遭遇したらと思うとゾッとするわ」

『ちょうどノームの修理どころか装甲や運動性などの機体全体の強化までできることは運が良かったと思っておきましょう。どこまで対応できるか分かりませんが』

 俺はイクスからの追加報告を一言一句逃すまいとしっかり聞いて自分達がいる異世界がどれほど想像を超える場所かということを認識する。そして、俺は急いでノームの操縦席に乗り込み、最優先事項としてこの後の行動についてイクスとともに慎重に話し合う。


「流石に気のせいだとか大げさだとか楽観的にはいられねぇ。明日からノームが動けるなら今後はもっと探索に力を入れよう。特に、異世界人か何らかの文明の痕跡を探さないと。何事もないのが一番だがそうじゃなかった場合が一番危険だ。

 とにかく、今回は西と東に行ったから次は北か南へ行こうと思っている」

『そうですね。今のところは反応探知では全く見当たりませんが、もしかしたら、こちらの知らない技術で察知されないように動いている可能性があります。情報を何も持っていない私達は不利な立場にいますから何かあっても大丈夫なように少しでも優位になれるように情報収集をして立ち回らないといけませんね』

「とにかく、次の行動指針が決まったな。そして、今日の探索はここで終わりにしよう。今は鍛練以外にやるべきことが無いし、無駄に体力を消耗するのは良くない」

 細かい行動は決まらなかったが大まかな方針は決まったので会議はいったん止めて、念のためにとイクスがノームの周辺に何かいないか使える探知を全て使い隅々まで調べた。しかし、何も見つけることができず、俺は少し不安に思いながら、イクスとノームの操縦席内で仮想訓練機能を起動させてこの場所での機械戦闘訓練をしてから寝るのであった。

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