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1話 ヤバイとこにはヤバイやつが集まる



「行ってきます!お姉ちゃん戸締り忘れないでね!最後だから!」


「分かってるって、毎日最後でしょーが。はよいけ」


「今日の晩御飯は鍋にするって、お母さんが!」


「だから、はよいけ!」



時刻は8時20分。

オフィスカジュアルな服をまとった妹の背を見送り、まだぼやっとする頭のまま階段を上る。

我が社は、社員が全体的に朝に弱いらしく通常のオフィスワークとやらに比べれば出社時間が遅い。

家族が仕事に出払い、朝特有の騒々しさも落ち着いたところで

遮光100%カーテンで朝日を遮断し、薄暗くなった部屋に満足しながら布団へダイブ。


・・・まーなー、夜のほうが仕事がはかどる人が多いしなー。


起ききっていない頭は、ふかふかの毛布を察知し即座に二度寝へと方針を切り替えたようだ。

今日も一段とよい二度寝が出来そ・・・



ピンポーン!ピンポンピンポンピンp



「起きろおろちーーーーーーー!!!!!お出迎えだぞーーーーーーーーー!おきろーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」


「ぎゃああああああっ!!!!近所迷惑!!!!!最悪!!!!!やめて!!!!!!!」




けたたましいピンポン連打とヤクザの取り立てかと思えるほどの大音量。

布団で一回すっころびながらも、慌てて階段を駆け下り玄関を勢いよく開ける。




「うるせぇ!朝っぱらからそんなデカい音だすな!シンプルに迷惑なんですけど!!!!」


「なーんだ起きてんじゃん。『絶対起きれる!』で評判のあきよし目覚ましは不要だったかー残念っ」


「起きてたんじゃねぇ起こされたんだよ、ふざけんな」


「あきよしさんを送り付けて、叩き起こすっていう罰ゲームが一時期流行ったんですよ。懐かしいですね。」


「こんなことでなつかしさを感じてほしくないんだけど・・・」




玄関には、叩き起こせたことに満足したらしく仁王立ちでゲラゲラと笑う女性と

対照的に小柄で控えめな笑みを浮かべる女性が待っていた。



こいつは、あきよし


乱雑に切られたベリーショートの髪は、うっとおしい時に自分で切るといっていた通り、

乱雑さがにじみ出ている。

身にまとった白いつなぎにピンクのTシャツも、ところどころが黒いススのようなもので汚れている。

おおざっぱで無駄に前向きかつしゃべるだけで騒音レベルの破天荒野郎かと思いきや、

普段は会社にある地下室に籠もり、自称万能グッズを作り出すメカニックらしい。

彼女は私の面倒を見る教育係として任命されているものの、私があきよしの工作に付き合うことはなく

社内でのルール等を一通り教えると、朝はおこしに来る夜は送っていく昼飯はあきよし指定のものを食うなど

はき違えた教育係として私の面倒を見てくれている。まじ迷惑。



で、こっちの小柄なほうは、まぐろむ・・・隊長って呼ばれてることの方が多いか


女性の平均身長に比べるとずいぶんと小柄。ふわっとした内巻きボブの髪は紫がかっている。

この時期には少し暑そうなカーディガンをまといながら、控えめな表情を浮かべる彼女は先輩であるものの歳は一個下。

普段はオフィスでデスクワーク仲間として仕事を教えてもらうような間柄だが、

時々情報収集として外へも出向き、とあるパートナーと組めばカチコミにも出向けるという謎スペック。

おとなしく控えめな印象なのは最初だけで、周りに影響されてしまったのか慈悲のない鋭い一言は結構刺さるものがあったりする。




「今日なんかあったっけ・・・?出社時間にはあまりにも早すぎるんじゃないの。」


「え、あきよしさんから聞いてないんですか?」


「へ?私が言うの?」


「いや、あんたおろち先輩の直属の先輩なんだからあんたが伝えなきゃ誰が伝えるんですか」


「誰か言ってくれるかなって」


「アホだこの人」


「よっしーがクソだっていうのはわかったから要件を教えろ」


「まぁまぁ、そうカッカするなって」


「おまえのせいだよ」




反省の様子もなく、馬鹿でかい笑い声をあげるあきよしに何か聞き出すのはあきらめて

隊長に視線を向けると、「諦めて私が説明します」とアイコンタクトで受信した気がした。




「これから、次の現場の視察に行くことになってるんです。

普段デスクワークばかりで刺激が足りないだろうから、たまには外回りに同行して違う空気を吸えば身が引き締まるぜ!ですって。」


「悪魔じゃん」




入社して一か月ほどの私は、社内で先輩や上司にあたる人たちの書類サポートが主だ。

確かに書類ばかりを片付けているのも眠くはなるけれども、別にこういう刺激を望んではいない。

しかもここでの刺激なんて尚のこと浴びたくない。




「なので、大変申し訳ないのですが今すぐ準備して下さい。」


「ひどい」


「先輩のガバは報告しておきますので今回はご容赦いただけると」


「え!?やだ!まためっちゃ怒られるじゃん!!!!」


「自業自得なんだよなぁ~」




先輩どものやり取りを半目で眺めつつ諦めるように準備を始める。

どうせ拒否権なんかないのだ。今日は早上がりできるなーうれしー。


そんなこんなで私、新しい会社で新しい生活を送っています。


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