第13話 ゲームスタート
『その部屋は君の単純な戦闘力を見ようと思うよ。僕の知るマリアなら、こんな事は簡単だと思うよ』
真っ白な部屋に正面と左右に扉がある。
「具体的にはどうしたらいいの?」
『今見えてる扉から僕の育て上げた実験動物達が入ってくるから、そいつらを殺して貰えればいいよ』
「アンタ私に何して欲しいのよ」
『それじゃ、二分後に放つから』
「無視かい」
そこで一度会話は途切れ、言われた通りに二分後に正面と左右の扉が開く。扉の先から、何とも判別のつかない生物が大量に押し寄せてくる。
「うわっ。これが実験動物・・・・・・。ベースは何なのよ」
実験動物達が魔理亜に向かって一斉に襲い掛かる。
「ちょっ!」
魔理亜は慌てて1番近くに来ていた実験動物に手をかざす。しかし、何も起こらない。
「あぁ! そうだった!」
近くに寄って来ていた人間に限りなく近い実験動物の頭部に後ろ回し蹴りをきめる。
「クッソ! 何なのよ!」
魔理亜は何とか実験動物の攻撃を躱しつつ着実に数を減らしていく。しかし、扉からは絶え間なく実験動物達が入ってくる。
「どんだけ造ってんのよ!」
魔理亜は、ポケットに入れていた神器を取り出して使おうとする。神器はぴくりともしない。
「クッソ! これもか!」
ここで言う神器は、能力者の能力を格段に引き上げる効果がある。しかし同時に、使用するには対応する能力の力を必要とする。その為、右腕の腕輪に強制的に能力を使用不可能にされた状態では、起動させる事すら出来ない。
「ぐぅ!」
魔理亜は次第に押されていく。実験動物のやたらと長い爪が、魔理亜の肌を傷つけていく。
「だぁっ!」
何とかして数を減らしていく。そして、実験動物の投入から四十分して、
「これで最後ッ!」
魔理亜は最後の実験動物の胸元を拳で貫く。
「はぁ・・・・・・、はぁ・・・・・・」
魔理亜の体は、あちこちに傷ができ、自身と、実験動物達の血液塗れになっていた。
『おぉ。お疲れ様。流石だね。もっとボロボロになるかと思ってたけど、戦闘力は衰えてないみたいだね』
「アンタ、クラスメイトや施設の人は使ってないよね?」
『それはないよ。確実に。だってそれじゃあゲームにならないよ』
「その言葉は信じていいのかしら?」
『いいと思うよ。少しくらい信じなよ。かつての仲間なんだから』
「信用ならないね」
『そうかい。じゃあ、次の部屋も頑張ってね。正面の扉からだからね。少し休んだっていいんだよ? だって時間は沢山あるんだしね』
「そうですか」
魔理亜はその場に座り込む。
「はぁ・・・・・・。次に行きたい所だけど、どの道休まないと、これじゃあ満足に動けない・・・・・・わ・・・・・・」
魔理亜はそのまま大の字に寝転び、目を閉じる。
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