異世界転移は突然に
「2番と35番の方、カップル成立おめでとうございまーす!!」
華やかなパーティー会場に、司会のお姉さんのはずんだ声がマイクを通して部屋中に聞こえわたる。
狙っていた2番が別の女性とカップル成立してしまった。
やはり研修医という未来のお医者様は私には高嶺の花だったか・・・。
玲香はガックリ肩を落としてパーティー会場をあとにした。
今日参加したのは二十代限定の婚活パーティーだ。玲香は今年27歳になる。同い年の友達は結婚ラッシュにベビーラッシュとおめでたい話題がインスタグラムを占拠している。
私だって、結婚したい。というか、子供産みたい。あと社畜やめたい。
女性は30歳を意識してしまうと本能的に子を産まねばという謎の使命感に襲われる気がする。まだ27歳だと言われるが姉の出産の話が壮絶で焦りが出ているのだ。
35歳で初産を迎え年の離れた姉が出産のとき、なかなか陣痛がこなかった。
そして、子宮破裂などリスクを覚悟のうえですという同意書にサインをして陣痛促進剤を打ち24時間陣痛に苦しんだ末に結局帝王切開になった。
後日医師に理由を聞くと「高齢出産だから、体力にかかわらず生き物として子供を産む力が足りなかったんです」と言われた話を聞いた。
これを聞いた私は早く産まねばと思うようになったのだ。本能のままに。
「ハー、次の婚活どうしようかなー」
家で部屋着に着替えたあと、缶ビール片手にノートパソコンを開く。
お気に入り登録には婚活サイトがずらっと並ぶ。
「もうマッチングアプリやってみようかな。あ、趣味婚新しいの更新してる」
趣味で繋がる婚活のことだ。
サバゲーや、釣り、ロードバイク、ゆるキャンといったアウトドアなものが多いが、趣味を通して仲良くなれる。
引きこもりがちな玲香には向いてないが、たまに映画などもあるのでチェックしていた。
「なんだコレ。アンケート?」
サイトのしたの方に小さく書かれた「クリック」の文字。
なんとなくクリックするとアンケート画面のようだった。
1問ごとに入力して答えなければいけないため、少しめんどくさそうだ。だが、自分の趣味の婚活を開催してくれるかもしれないので、大人しく入力する。
『どんな趣味をお持ちですか?』
「えーと、ネット小説を読む、映画を見る、アニメを見る、ゲームする」
カタカタと入力し、クリック。
『どんなジャンルが好きですか?』
「うーん。恋愛よりは推理ものとか、ネット小説はラノベみたいな異世界転移か転生ものが好きだなあ。ゲームみたいな世界に行くやつ」
カタカタ、クリック。
『好きな世界観はありますか?(例、近未来、幕末)』
「いやー、ここは剣と魔法のファンタジーでしょ。スライムとかモンスターがいて、中世ヨーロッパくらいかな」
缶ビール片手に独り言を喋りながら入力、クリック。
『あなたの職業はなんですか?』
「花嫁修行ー!なんつって!」
ケラケラ笑う。
『人生はイージー、ノーマル、ハード、ノーフューチャー、どれがお好みですか?』
「ノーフューチャーって未来ないじゃん!!イージーに決まってんでしょ?もうスライム一匹倒しただけでレベル5くらいあがったらいいのに」
ジャーキー食べながらビールを飲み干す。
1缶で充分酔えて楽しい気分になれるからお酒は好きだ。
『剣と魔法のファンタジー世界、中世ヨーロッパの街並み、極限イージーモード、そんな世界で恋をしてみませんか?』
「冒険者になって仲間と恋したり、貴族様と身分違いの恋をしたり?あー、確かにトキメキ欲しいなぁ。婚活って条件ばっか見ちゃうんだもん。恋して、結婚できたら理想だよね」
『承りました。よい旅を』
「・・・え?よい旅って、てか私途中から入力してなーーー」