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第6話

 あれよあれよと呆気に捕らわれていた私とアント兄様が何も言えずにいたまま、王城から連れ出されました。


 これまた、あっと言う間に、私とアント兄様はリリーの家、レンブラント公爵家へサクッと連れて行かれましたと、さ。


 私達兄妹の家、エンデューロ子爵家には、レンブラント公爵家当主のリリーのパパから、「しばらくの間、娘のリリーたっての願いで、私とアント兄様を公爵家で宿泊させるから」との事後承諾ともいえる使者を出した後だそうですよー。なんて手際のイイ事!


 そして何故か、ケイン様と王太子様こと、バーンノティス様も一緒に公爵家に滞在するのだと言って、何故か夜会での服のままで、レンブラント公爵家の応接間で、リリーのパパとママと一緒にお茶を飲んでいます。


 どうしてこうなった…。


 リリーのデビュタントのエスコート役だったケイン様が公爵家へリリーを連れ帰って来たのだからと、この茶飲みに同席するのには納得出来るけれど、どうして王太子様までが一緒なのかが全く理解出来ない、いや、理解したくない。の、間違いだ…。理解した途端に私の立場がヤバい事態になりそうです…。


 陰謀渦巻くキツネとタヌキの化かし合いの巣窟である王城で、暮らしていける度胸は有りません…。


 あぁ、リリーのママが可笑しそうに、何かの娯楽を見つけたように、ニマニマとした笑顔で、こっちをチラチラと見てるぅー…!!

 そして、その娘のリリーは、アント兄様を嬉しそうにチラチラと見てるよー!

 この人達、間違いようもなく似たもの親子だー!うわわー!


 そんな私は、リリーのパパさんと楽しく領地の特産品についてお話し中だったりしますー。


 そこへアント兄様とケイン様と王太子様が加わっています・け・ど・ね…。


「女性で、しかもこんなに若いのに、私達と楽しく話が出来るとは!リリーが言わなくても私の方でも養女にしたいと思ったよ。これは決定打だな。

 リリー、パパもママもセレナ嬢をリリーの妹にするのには大賛成だ。

 明日にでも、セレナ嬢の生家に気付かれないうちに、そして、邪魔をされないうちに、養女の正式な手続きを完了してしまうとしよう。セレナ嬢もいいね?」


「娘が増えるのは大歓迎よー。」「姉妹になるのね。私の方が生まれた月がセレナよりも先だから、妹が出来るのねー。嬉しいわ!」


 この雰囲気の中で私自身が爵位の高い家の無茶振りに、断る事は出・来・な・い。

 どうせエンデューロ子爵家では、私がいたって邪魔者扱いだから、この家の養女になった方が気楽だろうし、弟のフルトに私がやってもいないミスや失敗した事を擦り付けられなくなるんだし、姉や妹から馬鹿にされたり、容姿を(けな)されたりしなくなるんだったら、この話は私にとって、良いかもしれない。


 妹のシルに、私の数少ない私物をより上げられないようにする為に、執事のオットーに預けてあるのと、それと、祖父母が私だけの為に作ってくれたドレスだけは着れなくても手元に持っていたいのだ。と話すと、公爵夫妻に「いいよー。」と快く許可をもらえたので、良かったですよー。


 公爵家からは、信用のある人に私とアント兄様の荷物を持ってきてもらえるようにするのだとも約束してくれたので、取りあえず、一安心かな。


 今夜と明日は、公爵夫人の着なくなったネグリジェや普段着用のドレスを譲ってくれると言われたので、それでしばらくは着回しをやりくりして、生活する事にしましたよー。


 お見合いは、私の養女の手続きが終わったら、まずは王妃様と公爵夫人の開く私的なお茶会で交流してから、個人対個人での正式なお見合いをすると言う手順になりましたー。


 いきなり1人対1人のお見合いじゃ、人柄までは貴族特有の猫かぶりで見えないから、何回かお茶会をして話させてもらえたら、多少はその片鱗が見えるんじゃないかと思っています。


 夜会の翌朝の朝食の席で、アント兄様がケント様の家の養子になる事が決まったと報告がありました。


 いつの間にでしょうか?


 そこへリリーのパパが、面倒だから、脳内では「リリパパ」と呼ぼう。そのリリパパが、更なる爆弾を落としてくれました!


 リリーとアント兄様が結婚するんだそうです!!!初耳です!聞いてないですよ!そんな事!と思ったら、その後の内容が凄かったんです…!!!


 リリーが昨夜、アント兄様の寝室へ単身で乗り込んで、2人きりでの話し合いと、身体的コミュニケーションを行い、実質的な夫婦になったそうです。


 …はあ?!リリーが夜這いしたぁ?その上、アント兄様を食ったぁー?!


 待て待て待て!リリーって乙女だったよね?初めての逢瀬でアント兄様を食い散らかしただとぉー!


 ま・さ・か?と思って、リリーの方を見ると、兄様がリリーの隣の席に座っていて、2人が並んで座っていた。2人でチラチラとお互いに見つめ合っていましたよー!!ま・じ・か?!!


 本当・み・た・い・で・す・ね…。

 リリーとアント兄様の2人の周りでピンクのハートが飛び交っている幻覚が見えた……。

 リリーって、肉食女子だったのか…。

 ああ、ケント様の所へアント兄様が養子に入るのは、リリーとの結婚にエンデューロ子爵家からの要らぬちょっかいをかけられないようにする為ですか。その為の養子縁組ですか。


「セレナ嬢、私はリリーが羨ましいよ。」「俺もだが。邪魔する従兄弟が憎たらしいけどね。」


 王太子様とケイン様のやり取りを聞かなかった事にして、私は公爵家の美味しい朝食をいただきましたとも。


 あー、朝ご飯が美味しいなー。


 まぁ、ビックリはしたけれど、アント兄様が幸せになるんだったらいいか。丁度、食事も終えたので、2人に向かって、「リリーとアント兄様が幸せなら、私が異議を申し上げるつもりはありませんわ。結婚確定、おめでとうございます。」と言って、食事をしていた食堂から出ようとしたら、公爵夫人に呼び止められました。


「セレナちゃん、今日の午後に私達3人のドレスや小物を作る為に、商会がやって来ます。セレナちゃんに必要な物をその場で買いますから。

 既製品でも公爵家に相応しいものを持ってくるので、遠慮しないで選んでちょうだいな。

 それと、3人で夜会に出る時のドレスを作る予定だから、そのデザインを考えておいてね。うふふ、楽しみだわー。タイプが違う娘2人の買い物が出来るようになるなんて♪幸せっ!

 またあとでね。」


「わかりましたわ。私が公爵夫人をお呼びする時は、何てお呼びすればいいでしょうか?」

 後から慣れた頃に呼び方を変えるのは面倒だし、間違えやすいから、聞いておかなくちゃ。


「家では「ママ」呼びでいいわ。外では「お義母様(かあさま)」呼びで宜しくね。」

「私も家では「パパ」で、外では「お義父様(とうさま)」呼びで頼む。」

「私は家では「リリー姉様」か、同い年だし、今まで通りの「リリー」でいいわ。外では「お義姉様」で、頼みますわ。」


 うん、似たもの親子だ。

「はい、分かりましたわ。パパ、ママ、姉様。不束ですが、これから宜しくお願いいたします。そして、私を家族に迎えていただき、ありがとうございます。」

 感謝を込めて頭を下げ、お礼を告げておきました。


 そうしてから、改めて、食堂を後にしました。色ボケしたアント兄様は知らん!好きにすればいいさ!


 それにしても、私が昨夜から泊まっていた部屋、客室にしては少女趣味なの。女性用の部屋って感じで。

 白地に青い小花柄の壁紙に、調度品は白で統一されているけど、壁紙と同じようなスカイブルーのさし色が効いていて、もろ、私の好みど真ん中なのよねー。花瓶に挿してある花も、ピンク色の可愛らしいものだし。


 もしや、私を養女にする計画をリリー主体で、たてられていたのかも。そこで、私の事を探るようにと、リリパパが昨日の夜会で、隠れて様子見していたんではないか、な。王太子様とケイン様まで巻き込んで。


 そう考えると、昨日の夜会からのあれこれが納得出来るなー。

 …計画的に囲い込まれたって事か。ま、いいや。公爵家の料理長には遊びに来る度に、前世の主婦だった経験を生かして、あれこれ教えていたんだし、それで気に入られてたからなー。

 私を養女にするって決まった理由の一つに、料理長経由で公爵家の皆さんの胃袋を私が掴んでしまっていたって事だよね、多分。


 それとも、リリー経由で、リリママに渡していたシャンプーもどきと、リンスもどきのせいかな?


 考えても分かんないんで、与えられた部屋の中で本を読んで過ごしました。

 公爵家の図書館に行って、読みたい本を何冊も部屋に持ち帰って、何日かをかけて、読んでいくつもりです。


 あ、そうそう、昼前に王城へ向かったリリパパから、昼過ぎに養女にする手続きが終わったと早馬で報告がありました。ついでの報告として、アント兄様の養子手続きとリリーとの婚約手続きも、滞りなく済んだそうです。


 これで、エンデューロ子爵家の好きなように私を動かせなくなりました。


 アント兄様も、弟のフルトが成人したら家から追い出される予定だったのが、それよりも前に、アント兄様の方からエンデューロ子爵家を兄様の人生から追い出してやったんだと思うと、スッキリしました。

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