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第4話

 夜会へ向かう馬車の中で、お父様とお母様から夜会の心得と、不届き者から逃げるには、などの珍しくタメになるお話がありました。


 アント兄様は、カレン姉様のデビュタントの時にもエスコート役をしているので、デビュタントのエスコートの手順の確認をしてました。


 そんなこんなで、王城へ着き、お父様とお母様は先に夜会会場へ向かい、私と兄様は、デビュタントの娘とそのエスコート役の控室へ向かいました。


 今回、デビュタントを迎える娘は、16、7人らしいです。王子様が4人いらっしゃると娘さん方が話しているので、王子様1人に付き、4人から5人のデビュタントの娘と踊るのでしょう。


 デビュタントの自己紹介は、下位貴族から自己紹介をするので、男爵位のデビュタントする娘さんの後に、子爵位の家の娘である私の自己紹介があるのですねー。


 カレン姉様の時は、デビュタントの娘が30人以上いて、待ち時間が長かったって愚痴っていたっけ。


 ん?私をつついているのは?


 振り返ってみると、友人のリリーでした。リリーは公爵位の娘さんなので、最後の方に自己紹介があるんですねー。


「セレナ。こんばんは。私ったら、ドキドキして、落ち着かないの。」


 あらあら、リリーったら可愛いわぁ。私なんて、前世のおかげか、それともおばさんだったから図太いのか、ドキドキはしてないかなー。貴族の娘としての義務を果たしに来てるだけだしー。


「こらっ!リリー。私の紹介もせずにいるのか?」

「あ!ごめんなさい。お兄様。こちら、私の友人のセレナ・エンデューロですわ。気が合う一番の友人ですの。」


 リリーの今夜のエスコート役のご親戚でしょうか?キラキラしい美男子が立っていましたー。眩しーい!


「ただ今ご紹介にあずかりました、リリーの従兄のケイン・ドリーです。お見知りおきを。」


 これまた丁寧なご挨拶ですね。正式な挨拶を受けたので、私も挨拶をし返した。


「こんばんは。はじめまして。セレナ・エンデューロです。子爵家の次女ですわ。家格が違うのにも関わらず、リリー様には仲良くしていただいております。大変、光栄に思っておりますわ。

 ドリー侯爵家の嫡男の方でしょうか?王太子様の側近として名高いとのお噂を兄から聞いております。どうぞよろしくお願い致します。」


「ほぉ。これは、これは。今日のエスコートはお兄様がされているのですか?」

「はい。兄のアント・エンデューロが今夜の私のエスコート役ですわ。

 …アントお兄様。こちらにいらして。」


 お兄様を呼んで、私の隣に来てもらった。そうしたら、2人が気安い感じで話し始めたのだ。

「何だ。アントもか。こんばんは。今日は従妹のエスコートなんだ。」

「ケインもエスコートだったっけ。忘れてたよ。おいおい、昼過ぎまで王城で会っていただろうに、何も言わなかったな。」


 知り合いだったみたい。


「ふふっ、お兄様方が知り合いだったのだから、安心したわ。」

「私も知らなかったわ。」と、リリーとこそこそと話していた。そこへ2人のエスコート役の兄達が話しかけてきた。


「なぁ、セレナに聞きたいんだ。収穫量が減ってきている農家に何を言えばいいのか迷っていてさ。俺やケインじゃ考え付かなかったんだ。」


「おいっ!こんな事を聞かれても、セレナ嬢が困るだけだろう?」

「いいんだよ。困った時のセレナって、俺の中では決まっているんだ。」


 腑に落ちないような表情のケイン様に対して、アント兄様はどや顔ですけど。


「質問していいですか?」と私。

「いいよ。」とアント兄様。


「同じ作物しかその場所に植えていないんですよね。」

「そのせいで、収穫量が極端に減ってしまったんだ。」

「そのせいで収穫量が減ったんでしたら、連作障害、分かり易く言うと、同じ物を植え付けたので、土の中のその植物を育てるだけの養分が極端に減ってしまったか、なくなってしまったのだと思います。

 …そうですね、解決策はあるんですけど、この場で話すような事ではないので、後で、お兄様の部屋へお伺いして話したいと思いますわ。出来ましたら、その収穫量が減ってしまったのが小麦でしたら、試していただきたいですの。」


 ケイン様が驚いた顔で聞いてきたけど、デビュタントの夜会でする話ではないので、即答を避けましたー。

「どうして、小麦だと分かったのですか?!」って聞かれてもねー、前世の知識ですー。って答えられないからー。

「それも後ほどご説明をいたしますわ。」

 後で説明すればいいかー。それよりも、デビュタントの娘さん達を誘導する役目の騎士様が、こっちを見て困ってますよ!


「ケインお兄様!移動するようですわ。」ナイス!リリー!

「ケイン、エスコート役だろ。行こう。セレナは手を出して。エスコートをするから。」


「はい。お兄様、お願いしますわ。」


 さっさか移動しよう。呆けているケイン様は公爵家のリリーのエスコートだからゆっくりでいいだろうけど、うちは子爵家なんで、ねー、サクサク動かないとならないんですよー。


 カレン姉様の時のような大人数でなかったので、移動は楽でした。


 まずは、デビュタントの娘全員での王家の方々に向けて一礼をしてから、男爵家の娘さんから名を呼ばれて、マントを脱いで、エスコート役の男性がマントを受け取り羽織ると、一歩前に出て、自己紹介をしていっています。


 ふーん、男爵家は2人かー。子爵家は3人いるって事前に聞いていたから、そろそろかなー。


 あ、呼ばれた!


 マントを脱いで、兄様に渡してー、あれ?兄様がパッカーンと口を開けたままだー。どうしたんだろう?マントを受け取って、羽織ってよー!


 うん!もう!動きがぎこちないなー。兄様がマントを羽織ったから、一歩だけ前に出て、自己紹介と礼をしないとなー。


「エンデューロ子爵家が次女。セレナ・エンデューロと申します。姉や妹のような美しさはない平凡な娘ですが、真面目ですので、お見知りおきくださいませ。」


 ドレスを少しつまんで、足をクロスして中腰になって、頭を下げるっと。カーテーシーもきっつい!

 一息溜めてから頭を上げて、ニッコリと微笑む。っと。


 一歩後ろへ下がったら、まっすぐ立っていればいいんだからっと。


 はー、終わったー。


 ん?兄様の方から視線が来てる。チラッと見ると、ニコニコ全開の笑顔なんだけど。どうしたんだろう?


 頭の中で、王城の中でも生かせる事がないかと考えていると、リリーの名前が呼ばれました。


「…公爵家が長女。リリー・レンブラントと申します。子爵家のセレナとはこの先も仲の良い友人ですわ。どうぞよろしくお願い致しますの。」


 んーなー!爆弾を落とさないでー!何がどうしたのー?!何でー?えー?!


 リリーのドレスが良く似合っていて綺麗だなー。とか気軽に考えていたから、(ばち)が当たったのー?え、えー?!


「リリーは王子達の従妹にあたるので、な。セレナとやら、これからも仲良くしてくれるのは助かるぞ。」

 ちょい悪イケおじの陛下が、お茶目な事を言い出したー!!


「は、はいっ!」私ー!返事だけは出来たけどー、どうしたらいいの?!


 私が内心で慌てているうちに、私の目の前にいつの間にか王子様が立っていた!ひえー!!


「王太子のバーンノティスです。デビュタントのダンスをいたしましょう。」


 恐る恐る手を差し出すと、がっつりと手を掴まれて、夜会の会場のボールルームど真ん中まで連れて来られてしまった…!


 ダンスを踊るポジショニングの姿勢になったら、音楽が流れた来たので、ニコニコ顔の王太子様とのダンスが始まった。


 ほぅ。ダンスのリードが上手い。さすが、王子様。


「リリーと仲良しだそうですね。リリーがいつも嬉しそうに話していたセレナ嬢は、貴女の事でしたか。」


「ええ。家格の低い私とも仲良くして下さっていますの。よく2人でお茶を飲んでいますわ。」


「リリーが自慢する訳だ。子爵家のご令嬢なのに、ダンスが上手ですね。今夜が夜会のデビューとは信じられないですよ。」


「ほほほ。殿下のリードが大変上手でいらっしゃるから、踊り易いのですわ。」

 この王太子、口元だけは笑顔だけど、目が笑っていない…!私の事を値踏みしているな…!リリーに無害なのか、有害なのか、はかっているんだろーな。


「それに、私、結婚出来なければ、家から無一文で追い出される程の平凡さしかないのですわ。だから、リリー様に何かしようなんて一切、思っていませんの。」


 私がそう告げると、一瞬だけ、殿下が驚いたような気がしたけれど、次の瞬間には、殿下の表情は元に戻っていた。


「どういう意味でしょうか?」


「姉や妹の様に綺麗でないからですわ。幼少時から、平凡だから、兄弟の中でも要らない子扱いで、何かと差も付けられていましたし。結婚出来なければ、無一文で追い出すつもりなのは、一緒に暮らしていれば、解りますわ。だから、リリー様には無害ですのよ。ご安心なさって下さいませ。」にこっ!


「そうですか。今日のドレスはどこでお作りになられたんでしょう?」


「白いだけのドレスと靴、シンプルな小物だけを買い求めましたわ。あとは自分の趣味で少しづつ飾り付けましたの。(だって、私には余分にお金をかけてもらえないんですもの。自分でどうにかしないとなりませんでしたわ。)」


「そうなんですか。ご自分で、ね。なるほど。」

 そう殿下が言ってすぐ、音楽が終わりました。次のデビュタントの娘さんに交代しなければ!


「音楽も終わりましたわ。ダンスをありがとうございました。」


 私がダンスのお礼を言って移動しようとしたら、アント兄様の声が私の横から聞こえた。


「迎えに来たよ。次は私の番だね。」

「兄様、ありがとうございますわ。」


「アントの妹だったか。カレン嬢とは全く違うな。」

「ええ。()()()()()()()が私に似ている妹だと思っておりますので。」


「なるほど、ね。」

「後でケインがセレナと話したいと待っていますので、どこか良い場所をお借りできれば助かりますが。」


「用意しておこう。ではまたあとで。」


 ん?兄様が不穏な言葉を言ってなかった?家に帰ってからじゃ駄目なのかな?


 兄様のエスコートでダンスを踊り終えると、リリーとケイン様が私達兄妹の所まで、やって来た。

 ケイン様と兄様が2人で二言三言だけ言葉を交わすと、兄様が「セレナの分も飲み物を取ってくるから、リリー様とケインと一緒にいてくれよ。」と、飲み物を取りに行ってしまった。


 私は私で、リリーに私とダンスをした王子とした話を聞かせて、無害認定してもらえたようだと報告していたのだったー。


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