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第17話

先週に投稿出来なかった分と今週分、そして、お詫びの1話を追加して、3話を投稿します。

宜しくお願いします。

 リリママに相談をした次の日、リリパパがリリママと一緒に食堂へ先にいた私を安心させるかのように、朝食の席で言ってくれました。


 私やアント兄様を狙う者がいないかというのと、ドリー侯爵家の内情とエレイン様の継いだ家の内情とその背景の事も一緒に調べてくれるって事と、リリーとアント兄様の視察中の護衛を増やすと3つの事を約束してくれました。


 ビートエンドラ王子様にも、内々でのお茶会のお誘いをした手紙をリリパパ経由で王城にて手渡ししてくれるそうです。


 リリママは、王妃様宛の手紙をリリパパに託していました。私の件でしょうか?


「午後から、王城で王妃様とお茶会してくるから、あの件は私に任せてね。セレナは、誰が来ても今日は家から、いいえ、部屋から出ないようにしておくのよ。いいわね。」


「はい、ママの言う通りにします。もし王太子様が来たら、居留守をしてもいいのでしょうか?」


「いいわよ!王妃様とその辺りもじっくり相談してくるから。ビートエンドラ王子様が来ても、今日だけは出ちゃだめよ。少しは小悪魔の様に、男性を()らさなくっちゃね。分かった、セレナ?」


「ママは凄いですね。見習いたいです。また教えてください。」


「セレナは母親思いのいい子ね。私も嬉しいわ。

 リリーだったら、突っ走っちゃって止まらないから、こういう話がまったく出来ないの。

 リリーは、その辺で私が母親らしさを発揮出来ない残念感を味あわせるから、困った娘だものね。」


「リリーはママに甘えているから、信頼しているから、相談しないんだって思いますけれど。」


「んーーー!セレナは思いやりのあるいい子ねー!かわいいわー!わがままだって沢山、言っていいのに、言わないんですもの!

 だから、私もね、セレナに相談されたのが嬉しかったのよ。これからもどんどん、相談して頂戴ね。」


「はい!」


 執事さん達も侍女さん達もリリママに何度も言われていたからか、リリパパやリリママとご一緒した時以外、私は鍵が丈夫ないつもと違う部屋から一歩も出ずに、部屋の中で本を読んで過ごしていました。


 部屋の鍵の施錠も、侍女や侍従、執事が出入りする度に施錠していますもの。


 訪問された王族の方を撥ね退ける理由を私自身の拒絶とする為にも、必要な措置だと聞かされてしまえば、しがない養女の身である私には「はい」と答える以外の返事が出来ませんでしたので。


 静かに、そして、いつでも逃げ出せるようにと、身軽でいる為の簡素なワンピース姿に、短剣と金貨と銀貨の数枚入った袋を腰に付け、本を読んで静かに過ごしていただけです。


 私が走って逃げやすいように着ていたワンピースと似ているワンピースを着た何人かの侍女も、私と同じ部屋の中で静かに本を読んで過ごしていました。


 万が一、私がいる部屋に押し入ってきた者がいた場合、彼女達が私と違う方向へ逃げる為に備えているのですから。


 報酬は、私の作るお菓子ですって言われていますわ。それ位は、お安い御用よ!


 私の居る部屋へ厳重な施錠をしていたのに感謝したのは、その日の午後3時過ぎでした。


 ドアをガンガンと打ち付ける音と、それを止める何人かの声と、若い男性の怒鳴り声が聞こえて来たのです。


 公爵家に訪れる予定のある来客だったら、こんな無作法な事はしないでしょうし、同じ公爵家ならば、玄関で物理的に追い返されていた筈。


 それを公爵家の方で出来ない人物が家に入り込んだからこそ、私の居る部屋の前まで来れたのでしょう。


 陛下は若くないし、若い男性の声で扉の前でも怒鳴ったりしないでしょう。そうすると、私の手紙を読んだビートエンドラ王子様か、王太子様ですか。


 ビートエンドラ王子様は、私からの手紙を読んでいれば、こんな事をしなくても、正式に私への面会の客人として迎えられるのだから、この暴虐武人な行いの主は、王太子様でしょう。


 若いうちにこんな事をしでかすと、第4王子が王太子となられるでしょうに。取るに足らない女性(わたし)の事で、ご自分の後先を考えないような行動をするようではこれから先が困りますね。


 王妃様や王様がこの状態をどうやって諫めるのかと考えていると、ドアの向こうが静かになりました。


 本当に、鍵の丈夫な部屋にいて良かったわ。出入りの度の施錠は、皆、面倒そうでしたけど、施錠するだけで、こんなに安心出来るとは思わなかったです。


 自室の窓やドアにこまめに鍵をかける習慣を今日から始めましょうか。


 そのまま様子をみていると、何かを引きずっていく音と、何人かいた人の気配が無くなっていったのが分かりました。


 それで、隣の部屋の中と繋がっている扉から廊下を見に行った侍女が、走ってすぐに部屋の中へ入ってきて、鍵を急いでかけていました。


 その侍女が小さい声で私や近くにいた侍女仲間に伝えてきました。


「誰もいなくなったように見せかけたのは、フェイクだったようです…!

 廊下には息をひそめて隠れている王太子様がいるのだと手渡された紙に書いてあります。

 私はそっとドアを開けて、ドアの外にいた侍従から紙を手渡されましたので、気付かれないようにと、すぐに戻って来たのです。


 セレナお嬢様、渡された紙を読んで下さいませ。」


 侍女から渡された紙には、急いで書いたのか走り書きで、『廊下の端、お嬢が出てくるのを第1王子が隠れて待つ。まだいる。夫人と主に早馬を出した。そこから出るな。』


 私が小声で読んだのを侍女達も聞いていたのを忘れて、おしゃべりの話題を提供してしまったようで、小声での侍女達のおしゃべりが始まってしまった。


 一応、大きな声で話してはマズいと思っているのだろうけれど、おしゃべりをしている時点で、私にとっては残念な事態になっているのだから。


 私や侍女達の手助けをすると言う名目で控えていた侍従に執事が、厳しい目で彼女達、侍女を見ているのにも関わらず。噂を公爵家の外へ流さないだけの理性はあるみたいだけれどね。


 彼女達の態度は、頭の痛い事だと思う。


 後で、侍女長にたっぷりと彼女達が説教されるだろうに、懲りないなぁ。彼女達に渡す予定だった報酬のお菓子も減らしてもいいだろうと思ったのも、あえて、言葉にはしないでいる。


 それよりも、控えて気配を消している彼らの方へ報酬のお菓子を渡す事に決めたのだから。


「…主様が戻るまでいるに、1シルバー。」

「私は、主様がいても居座るに1シルバーね。」

「すぐ帰るに1シルバーよ。」


 うん、賭け事をしていたわ。第1王子である王太子がいつ帰るかの賭けを。あなた達、私からの報酬は無くなったと思いなさいね。はぁ。


 私が呆れた表情をしたまま、後ろを振り返ると、私と目が合った執事が目が笑っていない口元だけが笑んでいる、怖い微笑みを浮かべていました。


 うん。しっかりと彼女達の声が彼らに聞こえているみたいね。リリママやリリパパにも報告が行くでしょうね。


 幾人かは、残念そうな表情で、彼女達を見ていました。お説教をする侍女長の疲れを癒す差し入れを料理長に頼みましょうか。侍女が公爵家のお嬢様の仕事を増やしてどうするんだか。はぁ。


 呆れた表情をしている私に気付いたのでしょう。侍女達が口々に私へ謝罪してきましたが、手遅れです。もう無理だから。


 それから、リリママかリリパパが家に帰ってくるまでの間だと思ったので、部屋の中が静かになったのもあったし、私は本を読むのを再開したのでした。

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