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第11話

 厨房での確認も終え、王太子様の待つ、サンルームのある応接間へ向かいました。


 私が「お待たせして、申し訳ありません。」と王太子様へ告げ、用意していたデザートを出すと、喜んで下さいました。


「キラキラと輝いているのに、溶けていないのだな。食べるのがもったいないな。」


 よしっ!果汁寒天デザートはオッケー!ティーワゴンで運んできたイチゴ味の生クリームで出来たショートケーキを出す様に目配せをして、ティースタンドへケーキを乗せた皿を出して貰うと、これまた、「彩りがイイな。」と言われましたよー。


「そのケーキの生クリームは溶けやすいので、そちらからお願いします。」


 ティースタンドには、軽食のサンドウィッチ(定番のキュウリサンドに、私が今朝作ったばかりのBLTサンド)の皿に、イチゴ生クリームのショートケーキとフルーツの乗った皿、上段には、果汁寒天で作ってキレイに盛り付けたフルーツソースが飾りになっているデザートの皿があるんですもの。


 お菓子と軽食に気を取られた王太子様がこっちを見るので、「まずは、お茶をしてからお話をいたしませんか?」と、先に食べましょうと話を振ってみました。


「セレナ嬢の言う通りに、先に味わってから、話をしましょう。」と、王太子様が嬉しそうに、食べ始めました。

 私は、果汁寒天のデザートを試食で食べて来たので、ショートケーキを食べていました。


「どれも美味しい。これらは全てセレナ嬢が?」


 王太子様だけではなく、後ろに控えている側近の方の振りをして付いてきていた第2王子様も、何も言わないでも、凄ーく食べたそうにしていたので、笑いだしそうになったわー。

 でも、耐えたんですわ。貴族のご令嬢として、王家の王子達の前で、大爆笑は出来ませんもの!!


 部屋の端に控えていた侍従と侍女に、あと3人分のサンドウィッチと果汁寒天のデザートの追加を頼むと、即座に厨房へ、それらの追加を頼みに向かったようだ。


「第2王子様が王太子様の側近の振りをして、公爵家まで、ご一緒に来られるとは思いませんでしたわ。

 ビートエンドラ王子様も、王太子様とご一緒にお茶を召し上がりませんか?」


 恥ずかしそうに微笑んで、「兄上と一緒にご馳走になります。」と、第2王子であるビートエンドラ王子様も席に着かれました。王家の王子って、どうしてこんなに長い名前で、言い難いのかしら?忘れないようにしなくては!と、焦るじゃないのっ……!


 内心の動揺を隠して、何くわぬ表情で、ティーワゴンからお茶を淹れて、サンドウィッチを皿に盛って、第2王子様へと(きょう)しました。


 あらら。兄弟お2人共、食べるのに夢中でいらっしゃいます。


 王太子様は20代になったばかりだし、第2王子様はまだ10代の育ち盛りだからかなー。凄く食べてるわー!

 ああ、キツネやタヌキの化かし合いもない、毒見をしなくても良い程、信用のおける公爵家で出されるものだから、気を遣わずに食べられているのかもしれないなー。


 ショートケーキも、「もしかして、食べ盛りの男性だから、食べる量として足りなくなるんじゃ?」と思って、多く作ってありましたんでー。


 まぁ、万が一、ケーキやサンドウィッチが余ったら、コック達や侍女達が食べるって言っていたけど、この分じゃ、余りそうじゃないなー。

 わー!見る見るうちに減っていくわー!凄ーい!と感心するばかりでした。


 ホールで作っておいたケーキも、追加されたサンドウィッチや果汁寒天デザートも、キレーに食べ尽くしましたよー!王子様お2人が。


 王子様方がお茶を飲んで落ち着いた所で、今回の訪問がどういう意図で行われたのでしょうか?とお聞きしてみました。


「王命で愛称呼びをするようにした事については、「済まない。」とは思う。

 けれど、子爵家のご令嬢が公爵家の養女となっても、私達を愛称呼びをするのは、敷居が高いのだと遠慮するだろうからと、レンブラント公爵家の当主殿と父である陛下が言い出して、な。」


「ついでに、第2王子である私の事も愛称呼びをするようにと頼みに来たのだ。」


 私を王家へ嫁に行かせるつもりで、逃がさない!と言ってきたって事?

 それも、リリパパまで、その話に一枚噛んでいるって事ー?!


「私ごときにその様な価値があるとは思えませんわ。リリーの同情と懇願で、この公爵家の養女になったんですもの。ほほほほほー。」


 これで、誤魔化されてくれないかなー?王子妃はともかく、王太子妃は、将来、この国での王妃になるんだから、もの凄ーく遠慮したーいんですがー!!


「王妃が重荷なら、兄上よりも私を選んでくれると嬉しい。私は現在、宰相見習いなので、将来は宰相になる予定なのだから。どこでも仕事の話が出来そうな、見識のあるお嫁さんがイイのだっ!」


 第2王子であるビートエンドラ様が、いい笑顔で白い歯をキラッ!とさせて、私にアピールしてきましたよっ!


「いやいやいや、王妃は国の頂点になるのだぞ。そのような価値があるのだ。どの貴族女子が目指す頂点だろう?

 セレナ嬢もその頂点を目指さないか?」


 呆けている場合ではないぞ!このままだと、マズイい!言い返さなければ!


「私、のんびり暮らしたいのですわ。

 子爵家では一切、返りみられず、肩身の狭い思いをしておりましたから。


 頂点は、頂点ならではの苦悩や苦労、努力が必要だと存じ上げておりますわ。

 妬んだ方々や、ご自身の娘を王妃になさりたい方々達に、頂点になった方が命を狙われる危険があるのだと簡単に想像出来ますもの。


 ですので、私ではその頂点に立ち続ける勇気も、気概も意地もないのです。


 それでなくても、王子妃などと、畏れ多いと思っておりますのに…。どなたか他の方をお選びになって下さっても、私は一向に構いませんし、困りませんわ。」


 にっこりと微笑んで、扇を広げて、反論を聞く気が今はないのだとの姿勢を貫きます。


 私では王妃になる勇気も、気概も意地もないので、ご遠慮いたします。王子妃でも恐れ多いと思っていますのに。普通の貴族の嫁でも大変だと思っておりますわ。子爵家の教育が足らない私では役不足ですわ。他の方を選んでも、愛も友情もないので、全然、大丈夫です。気にもしませんわ。って意味!


 どうか、諦めて欲しいです!との意味をも、思いっきり込めてみましたよー!!


 チラッと王子様方を見ると、やれやれだぜってな風情で、私を見てましたー!何故にー?!


 はっきりと断ったのにー?!どうしてー?!分かんないわー?!


 私が混乱の渦にいる間に、私が愛称呼びの候補にしていた名前一覧を書き記した紙を見て、王太子様と第2王子様が話しておられたようです。


 うん、話しているのだと言う情報だけは、私の視覚で見えていたんで。頭の中は、グルグルしたまんまだったけど。


「私は、バーンノティスで、家族からは「バノティ」と呼ばれていたので、家族とは違う呼び方を希望するから、この紙に書いてあった「ノティ」と呼んで欲しい。」

「私は兄上達や、友人たちには「ビトエン」と呼ばれているけれど、「エンド」と呼んで欲しいな。」


 はっ!混乱している場合ではないわ!更なるトドメを刺しておかなければっ!特に王太子様!


「そうですね。私だけの呼び方って個別化されるのが苦手なんですの。嫉妬や恨みを買うような真似をしたくなくって…。

 この年で、殺されたり、罠をかけられたりされたくないですわ!怖いですもの!淑女は、身を守る(すべ)を身に着けていないんですわ!

 王家や公爵家では当たり前なんでしょうが、私は、最近、養女になっただけの普通の貴族令嬢ですの!何か、誤解なさっていませんか?幼少時から身を守る(すべ)を教えられている公爵令嬢ではないのですわ。お分かりいただけないのでしたら、王命で、私を処刑すればいいわ。暗殺されるよりはマシですもの…!!」


「す、済まなかった。」


 あら?第2王子様の方が素直だったみたいね。先に謝って来たわ。顔色が悪いけど。

 さて、王太子様は?


 あらあら、うふふ。顔色が若干、白いような気がするわ。でも、何も言わずに、何を考えているのかしら?


「ああ、私も済まない。公爵令嬢と聞くと、身を守れるのが私達王家の者にとっては、当たり前だったので、な。王家と公爵家だけの慣例の中の事を当てはめて、それを当たり前の事だと思い込んでいたようだ。」


「ですので、皆さまが使われている愛称呼びしかしないと、私は言っているのですわ。

 私だって、無一文で家を追い出されるよりは、と思って、自分の命可愛さに、この家の養女になったのですから、簡単に死にたくないのですのよ。

 それも、自分の意志ではない所で、勝手に命の危険性を高くされるような真似を勝手に決められ、勝手に枠にはめられるのは、一切合切、これからもご遠慮しますわ!いいえ!王家との婚約も婚姻も遠慮したいとさえ、今は思っていますのよ!王子様方の発言で…!!」


 これで、どうだ!!殺されたり、不自由な身体にされるような行動はしたくないんだってーのっ!!分かれよ!いい加減に!!はぁ、施政者は傲慢だよねー。これだから、王家には近付きたくなかったんだけどーぉ。怒りMAX!!


 私が怒りを(あら)わにしたままでいたので、王太子様と第2王子様の愛称呼びを決めるまでにはなりませんでした。


 リリーが招待されていたお茶会から帰って来たので、王太子様と第2王子様の事と、その発言を洗いざらいぶちまけると、首をかしげて、不思議そうにしました。


「変ね?愛称呼びなんて、公爵令嬢達は誰もしてなかったわよ。セレナ、揶揄(からか)われたのかしら?」


 何ですってー!!!


 陛下とリリパパが話して決めた王命も、命の危険性が上がるのだと言うと、リリーがママに是非この話しをしましょうと言ってくれて、リリーと私の2人は、出掛けたリリママの帰宅を待ちました。


 このクダラナイ、けど、危険な王命を取り消して貰えるようにと、リリママへ相談しに行きましたわよっ!


 リリママが帰宅した所を捕まえて、今日起こった事をリリーと私の2人で話し、王家から届いた手紙をリリママに見せました。


 うん、うん、リリママが起こるとこの家で一番、怖い事なのだと理解出来ました…。


 その日の夜から、公爵家のご当主が自分の屋敷に入る事も出来なくなり、王城にある仮眠室で生活せざる得なくなりました、と、さ。


 リリママから、王妃様へ話が伝わったのでしょう。あのお茶会から3日後に、王妃様の名前で、謝罪する手紙を私宛にいただきました…。


 何があったのかは聞きたくないので聞きませんでしたが、陛下とリリパパで決めた王命の取り消しをした事と、王太子様と第2王子様が私に会う事を2(つき)程、禁止したので、それを破ったら、教えてね。この約束を破ったら、セレナ嬢の婚約者候補から外すからと厳命してあるから。また、新しいものが出来たら、私にも譲って欲しいわ。と、手紙には書いてありましたので、明日にでも、果汁寒天のデザートを差し入れましょうか。


 その日の夜も、リリパパが私達へ謝罪に帰って来たのに、屋敷の中へ一歩も入る事が出来ず、王城へ引き返していきました。


 こっそりとリリパパの後姿を見たら、フラフラして、力なく歩いてましたよ。強いわ、リリママ。


 私が魔法少女なら、命を狙われてもヘイチャラだったんでしょうけど、魔法もないから、身を守るしかないし、危険を遠ざけるしかないんだよねー。はぁっ。悩ましいわー。


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