第10話
そんなこんなで、王命でバーンノティス王太子様を愛称呼びする事になったので、その愛称を何にするのかを決める為だけに、わざわざレンブラント公爵家まで遊びに来る為だけにいらっしゃいますっ!
私も開き直って、「バーン様」「ノティス様」「ティス様」「バティ様」「バーノ様」のどれかにする予定で、紙にその愛称呼びをする候補の名前を書きだして、いつでも見せられるように用意してあります。
ああ、面倒臭いー。王妃にだってなりたくないわー。あらやだ!本音が出ちゃったわー。
王太子様がわざわざ訪れるのですから、イチゴをドライフーズにして粉末状に加工した物を混ぜて泡立てた生クリームを使ったケーキと、東方で使われている寒天を粉に加工して作った物を使って、作った果汁寒天をデザートとしてお出しします。
これらは私が会頭となった商会で、これから先に売り出す商品を色々と試していた中で出来た果汁寒天なんですよー。
私一押しの新製品でしてよ!
ゼラチンを使ったゼリーの様に、暑いと溶けてしまうという欠点もなく、水中でも溶け出さないので、色々な用途にも使えそうで、ワクワクです!
フルーツポンチの様に、ゼリー入りのフルーツポンチの様にして、見た目にも涼しげなデザートと売り出すのにも最適だと思うんですよねー。
ま、生クリームのケーキよりはお持ち帰り出来る点で優れているんですけどねー。しばらくは、喫茶店での店頭販売と実食のみで、売り出していこうと思っているんですよねー。
その為にも、日本にあった白くてサラサラとしていた砂糖、上白糖のような砂糖の生産にも着手しています。蜂蜜やメープルシロップのような甘味料だけでは、これから先のデザート部門での生産が追い付かなくなるはずだから。
そうそう、商会はレンブラント公爵家の後援を受けてますので、「ブラン商会」と名乗る事を商業組合に届け出ましたー。
商会は、菓子部門の喫茶店で新しいデザートを売り出して、その場で食べ方や客足での様子を見てから、お届けや、お使い物に手を出す予定となっております。
美容部門では、リリママや横流しで気に入ってくれていた王妃様が是非にでも、売り出して欲しいと言っていたシャンプーやリンスを売り出します。
これらは、もう幾つかの香りを付けたトータルフレグランスシリーズとしてお使い出来るように、石鹸まで同じ香りで使えるように、生産して用意している所です。
試作品で作った物は、リリママと王妃様と私とリリーで実地で使用して、使い心地や残り香を検証し、感想をまとめ、評価の高かったものを採用しましたー。
ハーブシリーズと、ポプリでよく使われている薔薇のシリーズと、ラベンダーのシリーズです。
ハーブシリーズは、男性でも使えるようにと、ミントの香りの物と、レモングラスの物を用意しましたー。
その他にも新製品の開発をしているんですけどね。現代日本であった香りのシャンプーやリンスの再現に苦労しているんですけど。
日本だったら、もーっと沢山の選択肢があったのになーとか、考えちゃうんですよねー、はぁ。日本って便利だったのねー。魔法が使えたら、こんな苦労はしなくって済んだんでしょうけどー。
次の製品の構想を紙に書いてまとめていると、(何故だか、紙はあったのよねー。羊筆紙だとばかり思っていたけれど、私の居た子爵家でも本が買えるほどだったのだから、地球の中世とは違うんだなーとか感心したっけ。)王太子様が玄関先に着いたと侍女が知らせてきました。
面倒だけど、養女にしてもらえたんで、お返しの一つだと思って、頑張るかー。よっこらしょっと。
魔法使いだったら、こんな短い距離でもスイスイと移動するのも一瞬で済んだでしょうに、とかなんとか考えながら玄関まで行くと、王太子様が執事に該当を手渡している所だった。
「出迎えてくれたのか?」
そんな全開の笑顔で嬉しそうにされてもー、王妃にはなりたくないんでー。と言う本音をキレーに隠
しながら、「ようこそいらっしゃいませ。今日はサンルームのある応接間にお茶とお菓子を用意してあります。執事がご案内いたしますわ。」と、ニッコリ作り笑顔で対応しましたともー!!
「そうか。では、案内を頼む。」
「私は、愛称呼びを考えて書きだした紙をうっかりと部屋に置いてきてしまいましたので、取りに行ってきますわ。」
「それは残念だ。そなたの顔を見る時間が減ってしまうのは。」
いやいやいや、そんな言葉では、おばさんは落とせませんって。社交辞令にも慣れてますからー。
「いえいえ、今日の為にと新しいお菓子を用意したので、その様子も見たいだけですの。ですから、私に時間を与えてくださらないと困りますのよ。」
あなたが来るって言うから、新しいお菓子を用意したのよ。お菓子を出す前に、その最終確認をしたいの!愛称呼びの紙は忘れて来たけど、色々あるんだってば!ちゃんと待っててよ。と言う意味ですが、何かマズかったかしら?
「そうですか。大人しく待っていますので、戻ってきたら、お菓子の解説をお願いしましょうか。」
静かにして待っているから、解説と説明を楽しみにしていますよ。ですか。
執事さんが、王太子の坊ちゃんを案内しているうちに、私は愛称呼びを書いた紙を取りに行き、厨房へ向かいました。
厨房では、私の来る事を分かっていたらしく、コック達が待っていましたー。
「セレナ様、最終確認をお願いいたします。」コック長が私へ言ってきた。
デザートは皿の上にキレイに美味しそうに盛り付けられていて、味見の分を私が食べて、確認するだけになっていましたー。
味見をして、私が作って保存しておいたフルーツのソースを添えるように指示をすると、コック達からほぉーっと、感心するような声が聞こえてきた。
見本として、スプーンとフォークで、盛り付けられたデザートの隙間に、フルーツソースを垂らしてから、なんちゃってソースの飾りを作れば、コック達の目がギラッと輝いた。
「さすが、お嬢様!」「流石です!セレナ様!」と言われちゃったけど、ここは王太子様へデザートを出すのを優先するとして、聞き流しておこう。
公爵家に養女になった翌日に、ハーブ塩を使うと料理の幅が広がるんだって、コック達の目の前で料理を作っちゃったから、それを味見したコック達が私へ教えを乞ようとして、さぁ大変!な騒ぎを起こしちゃったんだよねー。
そこから、商会の喫茶部門で出す予定のお菓子を試行錯誤していたんで、すっかりコック達から尊敬のまなざしで見られるようになってしまったのでしたー。
公爵家のコック達の中から、商会の喫茶部門の責任者を選ぶので、仕方ないって言っちゃえば仕方ないんだけどねー。
デザートの見本として用意されていた分を味見するコック達の姿も可愛いっちゃ可愛いんだけど、絵柄がムキムキの男性ばかりだからねー、圧迫感が半端ないんだー。
厨房は力仕事と体力がモノを言う世界だから、私みたいな貴族のご令嬢の出る幕は本当だったらないんだけど、こちとら、前世が主婦だったし、子供を育てながら、仕事もしていたもんで、その中には育児をする男性、通称、イクメンも、奥さんが社員でバリバリ働いているからと専業主夫になっていた男性の知り合いもいたんで、厨房のコック達に交じっても、私自身は違和感はないんだけどねー。
この世界の貴族女性では見かけない変わり種だと面白いってこの公爵家の当主のリリパパが私を認めていてくれるから、公爵家では好き勝手出来ているんだけど。そこはリリパパに感謝だなー。
リリパパも私の娯楽に付き合うようなつもりでなく、この公爵家のネームバリューを高めるいい機会だと思っているようで、双方でwin‐winな関係を築きつつあると思っていますよー。
領地だけの稼ぎじゃ、天候に左右されるから、どうしようかと考えていたんだってー。私を養女にしたら、商会を立ち上げる良いネタが出来て良かったって本音を出して、私を歓迎するからって喜んでいたもんねー。
ある種のビジネスパートナーになれたんだと思う事にしたら、公爵家に遠慮しなくなってましたー。