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貨物船

こちらの小説の進捗が芳しくないにも関わらず、新しい小説も書き始めました。もし良かったらご覧下さい。

アンゴラス帝国 竜母 ラーサルマニス


「見張りより伝達!敵貨物船隊目視!」


「全艦砲撃用意!」ディートハルムが号令を出す。


「あの巨船が沈む姿が、新聞に載るのが楽しみですね。」内務省の報道官が言う。


「まだ気が早い。敵の耐久性もどれ程の分からんのだ。現に銀竜が繰り返し攻撃をしているが、貨物船相手にまだ沈められておらん。」


「しかし、艦砲射撃となれば別でしょう?」


「ならばよいがな。」


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貨物船 龍角丸

貨物船団の中で一番大型ゆえ一番速度の遅い龍角丸は、必死で離脱しようとする他の貨物船に置いていかれ、船団の最後尾に位置していた。そんな船の上には竜が舞い、後ろからは竜母が迫ってくる。


「くそっ!自衛隊は何をしているんだ!」船長が炎に包まれてた甲板を見て呟く。


「あの税金泥棒め!」船員の一人が憤る。


「一人で逃げやがって!」他の船員も続く。


悪態を吐いていると、様子を確認に向かった船員の一人が小走りで戻ってくる。

「船長!上部甲板が破損!船内に火が回っています!」


「なんだと!何処だ!」


「中央部の船倉です。」


「なぜ、そんなところが燃えるんだ?可燃物なんてないだろう?」船長はそう言いかけて思い直す。


「まさか小麦粉か。何てことだ…。」船長は小麦粉が粉塵爆発を起こし、カントリーエレベーターが爆発したというニュースを思い出す。


「手空きの乗員はすぐに火を消すんだ!」そう言い終わるか終わらないかのタイミングで爆発音が木霊する。


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アンゴラス帝国 竜母 ラーサルマニス


「おお、やっと燃えたか。」ディートハルムが感嘆する。


「ええ、とても綺麗ですね。」報道官が写真を連写しながら言う。

船には喜ぶ兵達の歓声が響き渡る。


「敵船隊、射程距離内に入ります。」


「とどめを刺す。魔導砲、撃て!」


「発射!」輝く9本の青い光の筋が鉄の塊に放たれる。


「4発命中!」


「最装填急げ!」


「これより各艦の判断で、撃ってもよい!まだ何隻も残っているだ。敵の増援が来る前に一隻でも多く沈めろ!」


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龍角丸

「第四区画に浸水!」


「消火に向かった船員と連絡が着きません!」


「もうこの船はだめだ。脱出出来るうちに脱出する。」


「ヌァ!」また爆発が起き、船が大きく揺れる。


「船長、扉が開きません!」


「こじ開けろ!」乗員の中で一番がたいのいい男が扉に体当たりを食らわす。


「駄目です。びくともしません。」


「仕方ない、危険だかガラスを割って飛び降りる…」船長は甲板を見て愕然とする。甲板を埋め尽くす炎と煙。たとえ怪我なく飛び降りれたとしても丸焦げになること必至だ。船長が放心していると一際大きな爆発音が響いた。


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「敵艦撃沈!」


「おぉーーー!」


「帝国万歳!」


「手を休めるな!まだ船は残っているぞ、喜ぶのは帰還後だ。」ディートハルムは部下達を戒める。


「しかし、貨物船相手にここまで手こずるとは。向こうに戦列艦を全ての送らなければよかったな。」


「何隻か呼び戻しますか。」副官が聞く。


「そうしてくれ。」


「かしこまりました。」


護衛艦 たかなみ


「貨物船の反応、消失しました。」CICが静寂に包まれる。


「間に合わなかったか。」艦長が呟く。


「応援はまだか!」


「あと数分とのことです。」


「私のせいだ。」艦長は自らの決断を嘆くのだった。


竜母 ラーサルマニス

しぶとく逃げていた船は大きく傾き、今やその傾斜角は40度を越えている。

「敵船沈没します!」再び拍手が沸き起こる。


「魔導探知機に未確認飛行物体15を探知!すごく速度です!」観測員が悲鳴を上げる。


「15か…。竜母と竜を合わせた数だな。先程の光の槍に違いない。全竜騎士へ伝達!敵貨物船へ着陸せよ!竜母の乗員は総員退艦だ!」竜の利点として挙げられるのは、垂直に離着陸できることだ。これにより、竜母では8騎同時の発艦を可能とした。


「司令、正気ですか!負けたわけでないのに、総員退艦は…。それに回避運動を取らせなければ撃ち落とされますよ!」副官が異を唱える。


「戦闘記録を読んだだろ。そんなもの取っても同じだ。民間人を盾にとって撃つのを躊躇うならそれでよし、躊躇わなくても敵を道連れだ。」


護衛艦 たかなみ

「敵航空部隊、貨物船に着艦しています!」


「航空機体に連絡、対空ミサイルを自爆させろ!」艦長が急いで命令を出す。


「了解!」


「しかし、敵機はどうするのですか?」


「司令部に問い合わせる。」



「貨物船へ発砲などできるか!」


「しかし、このままだと竜に乗っている敵兵が船内に侵入する可能性もあります。」艦長は押し黙る。


「しかし、この件に関しては我々では判断できん。」そういうや否や艦長は通信士にサマワ王国臨時司令部へつなぐように言うのだった。


日本国 首相官邸

日本がこの国へ来てからというもの、総理ら閣僚は働き詰めでまともな休息を得られていない。書類の決済が終わった頃、気づけば日が昇っていた。ようやく眠れると思った瞬間一本の電話が鳴り響く。

「総理、貨物船上へ陣取った敵機への攻撃許可を現地司令部が求めてきています。」睡眠不足で働かなかった脳がその一言で活性化していく。


「どういうことだ!」


「輸送船団の貨物船に竜が着陸したそうです。」


「勝手に撃ってくれれば助かったというのにな。」総理はため息をつく。


「機関銃で攻撃をするとのことですので、貨物船への被害は少ないかと。アミル王国からの貨物船と違い爆発物も積んではおりませんし。」タンカーなどとは違い、荷物はただの穀物であることは不幸中の幸いだった。


「仕方がない。細心の注意を払うように。」


「了解!」


船が沈まないにしても修理のために暫く使えなくなるのは明らかだ。おまけに、海運会社への補償や記者会見なども控えている。総理は寝るのを諦め、閣僚を集めるのだった。


竜母 ラーサルマニス

眼下には燃え盛る竜母と貨物船、その上にちょこんと乗る竜が見える。竜が此方を狙い火の玉を撃ってくるが明後日のへ翔んで行く。


「こちら在サマワ王国司令部発砲を許可する。発砲を許可する。」


「了解、攻撃に移る。」


「撃て!」機首の機銃が火を吹き甲板上の竜を次々と引き裂く。安全のため。貨物船の乗組員にはブリッジに固まるように要請しているので万一にも流れ弾が当たることはないだろう。しかし、そんな甘い推測は打ち破られることとなる。

貨物船の一隻より白い煙が立ち上ぼり始めたのだ。


「そんな…。なぜだ!貨物船には穀物しか積んでいないはずなのに…。」


次の瞬間、船で爆発が起こった。船倉の中央部に大穴が空き、大量の水が流れ込む。この様子だと30分と持たないだろう。この出来事は国民から反感を買うことになった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 粉塵爆発は密閉空間で粉塵に引火して爆発するので、爆発は無理があるわな。
[気になる点] なんで哨戒機が飛んでいないんでしょう? P-1やP-3Cなら、魚雷や爆弾を詰めます。対艦ミサイルが品切れでも、木造船なら十分効果があります。機銃弾や砲弾が作れるのに、爆弾が作れないはず…
[気になる点] 貨物船やタンカーを脆弱に見積もりすぎでは 1974年に起こった第十雄洋丸事件では、5インチ砲36*2以上 127mmロケット弾9発 爆雷9発 魚雷2発が命中しても撃沈に約一日にかかった…
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