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護送船団(下)

護衛艦 あさゆき

出動が重なり疲弊する機動運用部隊と異なり、地方隊にはそこまでの負荷はかかっていない。それゆえ船舶の護衛は地方隊が行う運びとなり、護衛艦まつゆきとともに護衛の任にあまっている。

しかし、どうしても対艦ミサイルが足らず、各艦に2発ずつしか乗せられていない。


「敵艦隊、直進してきます。」


捕虜からの聞き取りや、戦闘記録からの情報によると、アンゴラス帝国の砲の射程距離は10km。対してこちらの射程は18km。一見すると大きく思えるが、ミサイルを用いてのロングレンジ攻撃に慣れた自衛隊においてはとても短く思える。それにアンゴラス帝国艦隊の船速は速く、ものの十数分で距離を詰められてしまうだろう。


「大丈夫だとは分かっていても、この距離は不安だな。」


「相手は50隻もいるんですから、ミサイルを満載していても一緒ですよ。」


-------------------------

アンゴラス帝国 竜母 ラーサルマニス

ラーサルマニスの艦内は竜の姿が消え、その世話をしてきた兵たちが悲嘆に暮れている。


敵の長距離攻撃により瞬く間に4隻もの戦列艦が奪われ、多くの兵が不安に苛まれた。だがここ一時間もの間第二波は来ていない。


「長距離攻撃、来ませんね。」副官がつぶやく。


「ああ、そうだな。魔力切れを起こしてくれたのならよいが…」艦隊司令、ディートハルムが言う。


「あれほどの攻撃です。連射できないのでは?」


「それか日本に金がなくて少数しか輸入できなかったかだな。」


船長室で会議をしていると、ノックもなしにドアが開かれる。

「見張りより伝達!11時の方向20km程に敵艦2隻を発見!」


「ようやくか!全艦に伝達!敵艦隊に進路を取れ!」


「了解!」


ディートハルムと高級将校達は、甲板に出でる。そして双眼鏡を除きこむ。

この星は地球より大きく、20km先でも見ることができるのだ。


「なんという大きさだ。そのくせ我が方より速い。しかし、砲は一門しかないのか?」


明らかに帝国の魔導砲より大きく、射程距離の長いであろう。しかし、砲が一門というのは設計思想が分からない。多いに越したことはないはずだ。


「敵艦発砲!」

敵の砲から微かに煙が上がるのが分かる。


「回避行動はとるな!敵への肉薄を優先せよ!」ディートハルムは叫ぶ。


「戦列艦ダグマー、撃沈!」戦列艦は魔導回路に引火したのか、色とりどりの煙を上げて、中央部から真っ二つに裂ける。


「敵艦発砲!」


「なんだと!」

普通、魔導砲というのは装填に少なくとも一分はかかる。しかし、前方の敵は一秒に一回ほどのペースで撃ってくる。しかも、その度に戦列艦が沈んでゆく。


「オリーヴィア沈没!」


「フェーベもだめです。」


「竜母ジルモニス、大破!航行不能!」


大砲が一門ならば何とかなると楽観していた自分を呪った。これ程連射が効くのなら一門で事足りる。

増えゆく被害報告にディートハルムは決意する。


「これ以上の作戦続行は不可能であり無意味だ!戦域を離脱する。追い付かれんように散開して逃げろ!」


「ありえません!相手はたった2隻なのですよ!」幕僚が不満そうに言う。


「このままでは、有効射程距離に到達する前に全滅する。私は君に相談しているわけではない。」ディートハルムは憤慨する。


ゆっくりと艦隊は回頭をはじめるが、それには時間がかかる。その間にも船の数はどんどん減っていく。おまけに衝突する船も出て来てなかなか思うように進まない。あちこちで大爆発がおこり、船体より高い火柱が立つ。


「回頭完了!戦域を離脱します。」


「敵は追ってきているか?」ディートハルムは心配そうに言う。


「いいえ。」


「そうか。残ったのは何隻だ?」


「8隻です。」


「彼らには悪いことをしたな。」


「司令の責任ではありません。上からの命令でした。」副官が慰める。


「いや、長距離攻撃を受けた時点で撤退していたら…」ディートハルムは海を見やる。木材と肉片が浮いており、その下を大量の魚が泳いでいる。目当ては食事だろう。


「すまんが、しぱらく一人にしてくれ。」ディートハルムはしばしの間、艦長室に籠るのだった。


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護衛艦 あさゆき

「追わなくて良かったのですか?」副艦長が聞く。


「我々の任務は船団の護衛だ。敵の殲滅ではない。あれが陽動で、我々が船団を離れている間に襲撃されてみろ。目も当てられん。」艦長が言う。


「本艦は、再び貨物船団と合流する。取舵一杯!船団に進路を取れ!」


戦いを終えた2隻の船は、休息を与えられることなく元の任務へと戻るのだった。










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