アンディーおじさんの冒険3
サマワ王国
常に冷静沈着なアンディーおじさんもその光景には絶句させられた。呆然と立ち尽くすアンディーおじさんの隣では、先程の少女が手品に成功した子供のようにニヤニヤしている。まぁ、子供ではあるのだが。
天井には小振りのシャンデリア。ただのシャンデリアでないようで、蝋燭ではなく電球が嵌まっている。そしてテレビ、冷蔵庫、電気ストーブその他もろもろの家電製品が整えられていた。
「これは…」アンディーおじさんは言葉を発しようとするが言葉にならない。
「これはねぇ…」少女は家電製品の説明をし始める。アンディーおじさんはもちろん家電製品の使い方は知ったものだが。
「あら、シェリー?帰ってたのかい?」奥からエプロン姿の女性が出てくる。
「うん、お客さん連れてきたよ!」シェリーは無い胸を自信ありげに張る。
「ありがとう。良い子だね。」頭を撫でられシェリーは満足そうだ。
「どうです、うちの宿は?」
「変わった道具がたくさんありますね。」
「でしょ、日本から大枚はたいて輸入したんだ。」女主人も自信たっぷりに言う。
「日本とはどのような場所なんですか?」アンディーおじさんは情報収集とばかりに聞く。
「私も行ったことはないからよくは分かんないけど、ものすごい技術力がある国だね。帝国軍を討ち破ったり、こんな道具を作れるくらいにはね。」
アンゴラス帝国が鉄道を敷いてからサマワ王国が独立したのか、独立してから敷かれたのか分からなかったが、どうやら後者のようだ。
「この道具を買ってから珍しい物見たさに客が集まってさ、万々歳だ。」女主人は笑顔で言う。
「じゃあ、あんたの部屋は204号室だ。ご飯ができたら呼ぶからね。」
アンディーおじさんは自室に入るなり、ソファーに深く腰かける。窓からは幾つもの並ぶコンテナと作業機械が目に入る。理解できない目の前の光景にアンディーおじさんは深く溜め息を吐いた。
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「申し訳ありません。本日の乗車券は完売しました。」朝食を食べ、荷物をまとめ、今日こそはと再び駅へと赴いたが、アンディーおじさんが聴いたのは昨日と同じ答えだった。
「そんな、まだ朝ですよ!」
「6時に並ばないと、手に入らない状況でして。」
アンディーおじさんはガックリと項垂れる。そうしているとクイクイと袖を引っ張られる。
「これはシェリーちゃん、どうしたのかな?」シェリーは懐から紙を取り出す。
「おじさんが欲しいのはこれ?」乗車券をヒラヒラ見せびらかす。
「そうだとも。おじさんに譲ってくれないか?」
「いいよ、10000バールでならね。」ちなみに、10000バールとは平均的な家庭の収入3ヶ月分に匹敵する額である。
「少し高いような気がするが?もう少し安くならないか?」いくら懐が温かいとはいえ、財布の大きさは限られている。
「嫌ならいいよ。」笑顔でそう言ってくるあたり、流石は商人の子だなと思う。
「分かった。言い値で買おう。」
「やったー♪商談成立ね。」
そう言うとアンディーおじさんは懐より金貨を取り出す。ごっそりと。財布が一気に半分くらいの重さになり、先行きが不安になった。
「帰りの船賃が尽きることは避けたいのだかなぁ。」
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幾つものコンテナが連なる貨物列車。その一番後に1両だけ設けられた客車でアンディーおじさんは考え込む。これほどの貨物を引く気動車の出力。共和国の物より大きいかもしれない。しかし揺れは激しく速度も遅い。おまけに駆動音が大きい。技術力の限界を感じさせる。流れていく景色には目も暮れず、ただただひたすら考え込む。
「間もなく、トランスト港前駅、トランスト港前駅です。お降りの方はお忘れ物にご注意してください。お出口は左側です。」
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目の前には、近代的な港、そして金属製の貨物船が行き来していた。遠くには軍艦らしき船が4隻停泊しているのも見える。どうやら回転砲塔が採用されているようだ。砲のサイズは小さくミサイルは見当たらない。
「やはり、技術者の亡命が有力か。」そうでなければこの片田舎の国が鉄道を敷けるはずがない。日本が積極的に雇いいれているのだろう。しかし、アンディーおじさんはひとつの事実を思い出す。
「いや、確かあの国は数ヵ月前に召還されたばかりだ。そんな工作できる時間はないはず。」諜報員であるアンディーおじさんは、その大変さをよく知っている。列強に入国し、欲しい人材に当たりをつけ、そして連れていく。そこから鉄道や機械を作り始めても、完成するのは早くて数年後だろう。
アンディーおじさんは、頭痛を我慢しながら埠頭へ向け歩いて行く。




