帝国新聞
アンゴラス帝国 内務省 大会議室
いつもは外部者立入禁止の内務省であるが、今日は人で溢れている。内務相リジーは、カメラを持つ報道陣を見据える。
「市民諸君!現在、我々はかつてない試練に直面している。ヒルメラーゼ共和国が帝国へ越境、そして罪のない人々の命を奪い去った事件よりはや3週間。共和国はそれだけでは飽きたらず再度帝国領へ侵攻、大陸軍はなんとか敵艦隊の撃退に成功したが、大陸軍第三艦隊は半数以上の艦が轟沈し、10万以上の兵が戦場に散った。我々がなにかしたのか。否、我々は何もしていない。こんなことが許されていいはずがない。今、われわれは団結しなければならない!死んでいった家族、友人、隣人達の仇を討つのだ。邪悪なる敵に正義の鉄槌を!」
内務相リジーが拳を振り上げた瞬間、眩いフラッシュが周囲を覆い尽くす。自分の姿が新聞の一面を飾り、全国へ流通されると思うとこそばゆい。しかし、目立つことは嫌いではない。
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アンゴラス帝国 帝都キャルツ キャプテンの酒場
昼間は閑古鳥が鳴いている酒場もいつもより人が多い。その多くが片手に新聞を抱えている。でかでかと刷られた写真の中の人物は、大げさな身振りをして動いている。
「なぁ、大陸軍が負けたってよ。」
「ああ、信じられねぇよ。」
「ったく!やってらんねぇぜ。」空のコップを机に叩きつけ、男は言う。
『アンゴラス人は魔法の使える民族の中でも最上位種族である。』ということを誰もが信じ、自尊心を肥大化させていたため今回の戦いが民衆の心理及び精神衛生に与えた影響は多大だ。
「ヒルメラーゼの奴等め。どんな卑怯な手を使いやがったんだ。」
「アンゴラス人に逆らったらどうなるか思い知らせてやる!」
「魔力容量の少ない劣等人種の糞どもが!くそっ、ビールもう一杯だ。」
「あんな奴等、俺が兵士になったらぶっ飛ばしてやるぜ!」
演説の後、帝国軍への志願者は今までの4倍に跳ね上がり、受付や事務官は連日連夜面接や書類の整理に追われることとなった。この時点では帝国政府の発表に疑問を持つ者などいなかった。




