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対岸での大火災

ヒルメラーゼ共和国

この世界から見ると最新鋭、日本人から見るとレトロなテレビにキャスターが映る。金髪碧眼のかなりの美人で画質の粗いことが惜しまれる。

「皆さん、こんばんは。ニュースワンデイのお時間がやってまいりました。早速今日1日の出来事を振り替えっていきましょう。」

全面ガラス張りのヒルメラーゼ証券取引センターの画像が表示される。

「今日のヒルメラーゼ平均株価は3000バールの値下がりで取引を終えました。これで20日連続の下落となり、過去最長記録を更新しました。石油精製所の失陥による影響で石油価格の高騰が主な原因と考えられます。今回は、ブルクラヴィ大学マクロ経済学部教授シュトラさんにおいで頂いております。シュトラさんこの状況をどう思われますか?」

妙齢の女性が話を始める。

「私は政府の態度に問題があると感じますね。」

「といいますと?」

「政府の存在意義とは、第一に国民の生命及び財産を守ることです。しかし、政府は現在その義務を怠っております。租借金はアンゴラス帝国の要請通り10年単位で払っているのです。しかし、支払いからまだ4年しかたっていません。しっかりと財産を取り戻すべきでしょう。ここで、弱味を見せればどこまでも付け上がってきます。強気に対応すべきです。」

「しかし、戦争に発展する可能性もありませんか?」

「戦争も投資の一つでしょう。初期投資は異様に高いですがね。」

「なるほど、ありがとうございました。それでは、次のニュースです。今日正午、重工業大手であるパーペチュアルスチームが8000人のリストラを発表しました。石油の高騰による採算悪化を見越してとのことです。現在、石油高騰の負い目を受け倒産もしくは事業縮小を決断する企業が増えており失業率は1.2ポイント悪化し、5.8ポイントとなりました。この流れは石油の提供が安定化するまで続くかと思われます。」

ただでさえ伸び悩む経済。そこに追い討ちのような石油の高騰。かつて好景気に湧いたこの国には閉塞感と憂鬱が漂っていた。


「次のニュースです。サワラール中央駅で許可なく戦争を扇動する演説を行ったとして、公共施設占有罪により政治活動家エグモント・ルーカスが警察当局に逮捕されました。逮捕より六時間後には釈放されましたが、この逮捕に対し国民からは多くの不満の声が出ております。」


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ヒルメラーゼ共和国 大統領官邸

あちこちのガラスが破損し、応急処置としてガムテープが至るところに貼ってある。今日は平日のため、デモ隊の姿はほとんどない。

「大統領、現在の党の支持率をご存知ですか。」内務相デスターレが問う。

「確か、60%ほどだったか?」

「それは先月のデータです。現在、48%へ落ちています。事の重大さを理解しておいでですか!」

「だからと言って、国民の言う通りに戦争を始める訳にはいかんだろう。」

「アンゴラス帝国は動員を始めたのですよ。こちらも不測の事態に備えるべきです。」軍務相オズワルトが言う。

「まだアンゴラス帝国が攻めてくると決まった訳ではあるまいし。下手に動けば相手を刺激しかねん。もう少し様子を見極めようじゃないか。」

「大統領、徴兵した兵が一朝一夕で兵力になるわけではありません。通常2年、どんなに促成栽培しても1年はかかります。」

「徴兵!冗談じゃない。そんなことしてみろ。人権団体や、企業連合から苦情が来るぞ。」

大統領がそう言うと、扉を叩く音が聞こえてくる。

「失礼します。」大統領が促すと外務相ノエルが書類を抱え入ってくる。

「どうした?そんなに慌てて。」

「アンゴラス帝国が大陸軍を動員いたしました。」

みるみる大統領の顔が青くなっていく。

「大統領、諦めてください。」内務相デスターレが諫める。

「時計の針は巻き戻せないのです。そろそろ覚悟を決めていただきたい。」と軍務相オズワルト。

「あっ!いえ、そういうわけではありません。」外務相ノエルは、ヒルメラーゼ共和国とアンゴラス帝国の現在の関係と、それがもたらすであろう誤解に思い至る。

「今年、新たな召喚地がこの世界に呼び寄せられたことはご存知ですよね。」

「ああ、勿論だ。」

「その地域に住む原住民、彼らは日本国を自称しているようですが、その地域にアンゴラス帝国は大陸軍を派遣しました。」

「国際会議での主張通りだな。」大統領は外務省からの報告をオモイダス。

「そして、大陸軍は壊滅。半数以上を失い撤退したもようです。」

「すまん、よく聞き取れんかった。もう一度言ってくれるか。」大統領は自身の聴覚を疑う。

「大陸軍の召喚地《日本》への侵攻は失敗、大陸軍は半数以上の艦を失い撤退しました。」一同は目を丸くする。

「あり得ませんね。一瞥の価値すらない報告です。大方、欺瞞情報でも掴まされたのでしょう。」デスターレが言う。

「諜報網を掻い潜り、我が国に奇襲をかけるための準備では?この情報の確度はいかほどですか?」とオズワルト。

ノエルは白い封筒から写真を取り出す。

そこには重巡クラスの金属製の船、そして小型空母が映っていた。艦首には太陽を表していると思われる、不思議な旗が掲げられている。

「何だこれは!」

「信じられん。」

「合成ではないのか!」

自分の国の兵器とどこか似た、しかし異なる兵器を前に各々は口々に叫ぶ。

「脱出に成功した石油精製所の警備兵が撮った写真です。身分を隠し、民間船を乗り継いで二日前に共和国に帰還しました。」

「つまり、日本という国は巡洋艦や空母を独力で作れるとでも言うのか!」デスターレが問う。

「可能性は高いかと。」ノエルが答える。

「確かアンゴラス帝国は石油精製所の使用停止の理由を原住民の反乱のためだと主張していたな。」大統領が言う。

「そうですが。」

「そして、第13艦隊はミサイル攻撃を受けたと主張した。」

「まさか…」オズワルトは唾を飲む。

「ノエル、日本についての情報を集めさせろ!スリーパーを全て使い潰してでも情報を集めるんだ!」




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