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狼狽の帝国

アンゴラス帝国 帝都 キャルツ

会議室よりステンドグラスを通して見える空は、まるで嫌味のように青々と輝いている。

「…。よって大陸軍は、主力の半数以上を失い撤退。本国へ向け帰投中です。」軍務相、デクスターは報告を締めくくる。

「とんでもない事を簡単に言ってくれますね。」魔導相、アイルは口元を歪めながら言う。

「陛下、どうやら軍務相をまた変える必要があるようです。」

「お待ち下さい。」内務相、リジーがアイルの発言を遮る。

「今回は、敵の奇襲でもなく、地方軍でもなく、大陸軍が万全を期した上での敗北です。どのような言い訳が出来ると?そういえばデクスターを軍務相に推薦したのはリジー、貴方でしたよね。任命責任について問わねばなりません。」アイルは微笑を浮かべながら言う。

「正直、兵器の質の差がここまでとは想定外でした。今までの魔導研究の怠慢が主な敗戦の原因かと。」リジーが言う。

「ちょっと、責任転嫁するのは止めなさいよ!」アイルはすかさず言い返す。

「ヒルメラーゼ共和国の研究者が、我が国の研究者より遥かに勤勉で優秀だと言いたいだけで、別に魔導省が悪いと言いたいわけではありません。」リジーは淡々と言う。

「そのくらいで止めておけ。戦時中にあまりにも頻繁に軍務相を変えるのもよろしくない。処分は戦争が終わってからだ。それより、今後はどうするつもりだ。」皇帝、バイルが問いかける。

「ヒルメラーゼ共和国製の兵器の利用には、石油より精製される燃料が必要です。作戦の第一段階として、失陥した石油精製所を往来する輸送船を攻撃いたします。また、失陥した衛星国に駐留する間者によると日本の食料は輸入に頼っているとのことです。よってこちらの輸送船も攻撃いたします。基本的に戦闘艦との戦闘は避け、標的は輸送船に絞るつもりです。」デクスターが説明する。

「随分と消極的なのねぇ。」アイルが悪態をつく。

「もっと兵器の質が良ければいくらでも攻められますのに、全く惜しいものです。」

「つっ!」アイルは皇帝の前だということも憚らず、盛大な舌打ちを放つ。

「そんなことをしている間に、日本に貸与されている艦隊、もしくはヒルメラーゼ共和国主力が本土上陸を計るやもしれん。そっちの警戒はしているのか。」バイルは不安げに聞く。

「もちろんです。戦争を終わらせるために、敵は帝都へと進軍しようとしてくるでしょう。帝都近郊の海は浅瀬ばかりで、接岸に適した場所は港湾都市デザイルしかありません。上陸されるとすれば、おそらくここです。そこに戦力を集中させます。」

「しかし、敵の上陸となると国民への説明がつかんな。交戦の予定される地域の住民も避難させねばならんというのに。」バイルは呟く。

「魔法生物飛来のため、避難が必要ということにする予定です。」とデクスター。

三百年に及ぶ政治的宣伝の影響で、今日誰もがアンゴラス帝国は選ばれし人種だということを疑わない。

「いや、正直に敗戦を伝えた方がよいのでは?」内務相リジーが言う。

「いえ、しかしそれですと兵の士気に影響が…」

「国民にも悪影響があるでしょうね。」

批判を浴びながらもリジーは口を開く。

「しかし、国家の危機により国民の団結を図ることができるかと。いずれにしても、その場しのぎの嘘は身を滅ぼすだけです。」

皇帝バイルは悩ましげな表情も浮かべながら、熟考する。

「分かった。新聞社への説明はリジー、お前に任す。」

「ありがとうございます。」





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