陥落
アンゴラス帝国 首都キャルツ
荘厳な城の中は、血液が凍るかと思うくらいピリピリした雰囲気に包まれている。
「そんなことがあるか!」外務相ケニスは事実を受け入れたくないがために怒鳴るが、そんなことをしても事実は変わらない。
「いえ、カンタレラ王国、アマリーナ公国、そしてアミル王国駐留軍は壊滅。日本による攻撃を受けたものと考えられます。 内務相リジーの推薦により新任された軍務相、デクスターが言う。
「よりによってアミルとはな。」皇帝バイルは怒りで声を震わせながら言う。
「全くです。軍の連戦連敗には閉口ですわ。魔道相アイルが言う。」
アンゴラス帝国は植民地であるダイナの一部の地域を、ヒルメラーゼ共和国に高額で貸している。そこで産出される黒い油は、科学文明国にとって、必要不可欠の資源であるらしいが魔道文明国には関係がない。
「大陸軍の動員用意はあと10日以内に整います。向かわせますか?」デクスターは聞く。
「いや!日本を直接叩いた方がいいだろう。」内務相、リジーが言う。
「ヒルメラーゼ共和国への報告はいかがなさいますか?」外務相ケニスは聞く。
「まだいい。帝国の威厳に関わる。するならダイナを奪還した後だ。とにかく大陸軍を動員を急いでくれ。」バイルは言う。
「了解しました。」
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首都キャルツより南200km 港湾都市 デザイル
灰色煉瓦の建物の隙間を、幾つもの輸送ゴーレムが、荷車を引いて進んでいる。
「ザカライア商会です。ご注文の品をお届けに参りました。」大陸軍基地の守衛が言う。
「第八倉庫に持っていけ。そこで係りの者から代金を受けとれ。」
「はい、ありがとうございます。」ゴーレムと男は奥へと消えていく。
「次の者!」
大陸軍動員に伴い、兵糧を各所より取り寄せている。
「テレンス地方農業連合です。ご注文の品をお届けに参りました。」
「第四倉庫だな。」
「はい、ありがとうございます。」
「はぁ」どこまでも続く長蛇の列に帝国兵はうんざりするのだった。
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港湾都市 デザイル サディアスズパブ
今、商人がひっきりなしに港に訪れるこの街は空前の好景気に沸いている。このパブもその恩恵を受ける店の1つだ。
「いやー、本当どこも人だらけだな。」商人が言う。
「大陸軍の兵糧だけで数十万人分。おまけに船の増産までしてる。とんでもない金が動いてるからな。」
「ローレンス級戦列艦だったか。あれは凄まじい大きさだ。」
「何で、辺境の国にわざわざ大陸軍なんて動員するんだ?」
「知らねぇよ!おっとやべぇ、もうこんな時間か。マスター、勘定頼む。」大半の帝国国民は、戦争に対する不安感など微塵も感じていなかった。




