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報道

日本国 首相官邸 プレスルーム

「…。サマワ王国は食料、資源の日本への輸出を前向きに検討しておりますが、アンゴラス帝国を名乗る武装集団に独立を脅かされております。貿易相手の損失は、日本に致命的な傷を与えることになります。ですので政府はサマワ王国へ護衛艦2隻の駐在を決定いたしました。」総理は原稿を読み終える。

「それでは質疑応答へ入らせて頂きます。左前の方からお一つずつどうぞ。」

「総理、他国への駐在は専守防衛の観念から外れる物ではないでしょうか?」若い記者が言う。

「集団的自衛権の一種であると考えております。」

「今回の自衛隊の行動は侵略行為なのでは?」次の記者が問いかける。

「サマワ王国の方から駐在を求めてきたのです。それに加え、我が国はサマワ王国の内政に干渉はいたしませんので侵略行為ではありません。」

「アンゴラス帝国とは、国ではないのですか?」

「我が国は国家承認しておりませんので国ではありません。」

「そういうことを聞いているのではなくて、事実上国なのかと聞いているんです。」記者が苛立ち気に言う。

「事実上も何も国ではありません。」総理は淡々と答える。

「ですから…」

「質問は一人一つでお願いします。」大人しく記者は座る。記者会見はもうしばらく続くのだった。

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軽快な音楽と共に東京の夜景を背景としたスタジオが映し出される。

「こんばんは。今日もニュース24hourのお時間がやって参りました。それでは早速、今日のニュースを見ていきましょう。」女性キャスターが原稿を読み上げる。

「最初のニュースです。食料の輸入途絶に伴い、全国のスーパーマーケット及びコンビニエンスストアで様々な商品が消えています。現場はどのような状況なのでしょうか?」画面が切り替わり、スーパーマーケットの店長が話し出す。

「米と野菜はまぁ、ある程度の量は入ってくるんですがね、それでも全然足りません。肉とかパンとかは一個も入って来ません。早くなんとかしてほしいものですね。」しみじみと言う。画面は再びキャスターを写す。

「国は食料対策として休作地、持主不明の空地の耕地化を進めており、一定の改善が見られますがトラクターなどの農業器具を動かすための石油も途絶しておりますので、改善は一時的な物と見られます。」テロップが変わり、次のニュースに移る。

「本日17時、自衛隊海外駐在法が賛成多数で衆議院で可決されました。これにより、自衛隊が海外に永続的に駐留できることとなります。審議時間は異例の少なさで、もっと時間を掛けて議論すべきとの声が野党から上がっております。本日は、経済学者の高田薫さんをお招きしております。高田さん、今回の法律についてどのようにお考えですか?」キャスターは年を取った、しかし威厳を感じさせる経済学者に話を振る。

「日本は食料、資源に関して、今危機的状況にあります。休作中の田畑で再び作物を生産するにしても限界があります。そんな中に現れた食料を輸出してくれる国なのです。なんとしてでも確保する必要があります。法律の制定は妥当でしょう。」

「侵略行為だとの批判もありますが?」

「食料だよ、食料がなければ飢え死ぬのだよ。そんな事言っている場合かね?憲法や法律は人命よりも重いものなのかね?違憲だ違法だ騒ぐマスコミのあり方には私は…」

「あの、すみません。時間が少し押してますのでそのくらいに…」キャスターが口を挟む。

「今の日本に、これよりも大事なニュースが有るとでも言うのかね。」話を止めさせようとするスタッフを余所に、学者の話は延々と続く。

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サマワ王国 旧トランスト軍港

かつて幾つもの帆船が肩を並べる姿は壮観であったが、駐留軍が壊滅したため現在は、軍港としての機能を失っている。その軍港の沖合いに停泊する4隻の護衛艦と1隻の客船。サマワ王国外交使節団は客船に乗り込むため、港に待機している。

「なんと巨大な…。」

「アンゴラス帝国の戦列艦とは比べ物になりませんね。これで帝国など怖くない。」

「こんな国と対等な国交を結べるのだろうか?」各々は様々な感想を抱く。

「日本人が来ましたよ。静かに。」

「初めまして。今回皆様をご案内させていただきます外交官の天田と言います。どうぞお見知りおきを。」圧倒的な武力を持ちながら、全く威圧感を感じさせない外交官に使節団は少し戸惑うのだった。

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