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サンドール王国の終焉2

酒場を出て彼が連れて行かれたのは廃墟となった館だった。床の殆どが埃や塵で見えなくなっており、かつて爛々と輝いていたであろうシャンデリアは蜘蛛の巣が張り巡らされている。


「こんな廃墟に連れてきてなんのつもりだ?言っておくが俺は金なんて持ってないぞ。」


「そんなの、お前の身なりを見ればすぐ分かる。」男は振り返らずに歩き続ける。

やがて、2人は一つの部屋に入った。


「ここは…。」部屋の中は本で溢れていた。壁一面に本棚が備え付けられ、それが3階の高さまで続いている。彼は、その光景に威圧感を覚えた。


男は本棚から、赤い羊皮紙で装丁された本を抜く。すると、ガタガタと鈍い音を立て本棚が奥に引っ込み階段が現れる。男が階段を降り、彼もそれに続く。


「着いたぞ、ここだ。」


案内された部屋を見て、彼は目をひんむく。部屋は広く机と椅子が幾つも置かれ、20人ほどが思い思いに座っている。そして壁に立て掛けられているのは…。


「ああ、剣だ。」男が彼の視線に気付き、先ず言う。


「この国じゃ違法なはずだ。どうやってこんなに集めた?」


「ツェザール領の反乱の時に流出したのを買い漁った。そんなことは、話しても仕方がないだろう?問題は、これをどういう風に使うかだ。」


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サンドール王国 フェルツマン伯爵 居城

自らの富と権力を見せびらかすかのように無駄に大きいこの城の薔薇の間で、あまり壮麗とは言えないこの城に不釣り合いな衣装を着た男達が伯爵と話をしていた。


「…それでは、我々の活動に資金援助をしていただけるということでよろしいですね。」男達のリーダー、アウグストは確認をする。


「援助はしない。ただ、儂の財産がお前達に盗まれるだけだ。」フェルツマンが苛立たし気に言う。


「心得ております。」


「なら荷物をまとめ、とっとと下がれ。」側に控えていたフェルツマンの部下らしき男が言う。


「はい、失礼いたしました。」アウグスト達は踵を返し扉をくぐる。

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5人の屈強な男達は、重そうな荷物と共に馬車に乗り込んだ。馬車には窓はなく外から中の様子を伺うことはできない。

「まったく、なんなんですかあの態度は!」アウグストの部下の一人が憤慨する。


「貴族なんてそんなものだ。」アウグストは自らの経験も参照して苦笑する。


「本当に我々の仲間になるつもりなんてあるんでしょうか?土壇場になって裏切られるとか勘弁です。」


「それはないだろう。ローザは父王を殺した女だ。それに王室への上納金もかなり増額されたと聞く。今の貴族、特に父王に近かった貴族にとってローザは目障りな存在でしかない。」アウグストは答える。


「なら、もっと積極的に援助してくれてもいいですのに。」


「革命が失敗しても、自分は知らぬ存ぜぬを突き通すつもりなんだろう。成功したら我々に恩も売れるしな。」


「まったく、貴族っていうのは自分の保身にかけては一流ですね。」


「アウグストさんは、革命が終わったら国をどうされるつもりです?やっぱり、王になられるつもりですか?」護衛としてついてきた青年が言う。


「いいや、王になるつもりはないよ。」アウグストの一言に、部下達は固まる。


「だったら、誰がこの国の舵取りを?」


「日本に行ったことがあることは前に話したと思うが、そこでいろんなことを学んできた。民主主義という概念もその一つだ。」


「民主主義?なんですそれ? 」


「簡潔に言えば国民が権力を握り、国民が政治を行うという概念だ。」アウグストは説明しようとするが、絶対王政しか知らない部下達にはイメージできないようだ。


「つまり具体的にいうと…、自分達の代表を期限付きで多数決で選び、彼らに政治を任すという政治体制だ。日本の場合は間接民主制という…」

アウグストは適当に相槌を打つ部下に、熱弁を続ける。それは彼らが拠点としている館に着くまで続いた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 民主主義をやるにしても最初は制限選挙制にしないと100%失敗するがちゃんとそこまで分かってると良いんだけど
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