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下準備

サンドール王国 駐留軍司令部

ツェザール公爵の反乱より1ヶ月。アンゴラス帝国基準で大きな船が、港に横付けされている。ようやくサンドール王国に輸送用ゴーレムが届き、戦列艦から魔導砲の陸揚げができるようになったのだ。


「今回派遣された輸送用ゴーレムは15体です。一体当たり2門の魔導砲を牽引させることができますが…」司令部付きの将校が口を淀ませながら報告する。


「足りんな。」基地司令は率直な感想を口にする。


「戦列艦一隻当たり、少なくても50門。一隻の火力にも及ばないとはとてもじゃないが火力が足らん。」基地司令はしみじみと呟く。

およそ二万もの怒れる群衆相手に魔導砲30門では心もとない。しかも海の上ならまだしも陸の上では距離は簡単に詰められてしまうのだ。


「それで、次の便ではゴーレムだけでなく竜も手配してもらいたいのだがな。」


「度重なる損失のため、サンドール王国への竜の派遣は却下されました。各駐留軍の竜は大陸軍の穴埋めのため本国へ根こそぎ持っていかれてるようです。」


「まったくふざけたことだ。最前線こそ戦力が必要だというのに。」


「兵力の逐次投入にようやく懲りたのでしょうか?」


「だからといって肝心な時に渋られては困る。これ以上の放置は帝国の求心力の低下に繋がる。」基地司令は頼りない本国にため息を溢すのだった。


サンドール王国 ツェザール領

ツェザール領では急ピッチで武器の生産が行われている。ほとんどの衛星国においては武器の生産法自体が忘却され、資料でしか残っていない。しかしツェザール領では忘れ去られた技術を取り戻そうとこっそりと研究がなされており、質こそ粗悪ではあるが形にはなってきている。


「しかし、鉄はどうしても不足するか。」ツェザール公爵は武器工房の様子を見て言う。


「はい。主兵器は青銅製となるでしょう。さすがに農民の農具を剣へ変えるわけにはいきません。」臣下のアウグストが答える。


「まぁ、仕方がないか。」資源を自分の領地だけでやりくりするのだ。どうしても資源が偏ってしまう。そのことを嘆いていると、執務室の扉がノックされる。


「失礼します。」彼は裏方業務に就かせているレノックスだ。


「何事だ?」アウグストは普段城に姿を見せない部下の急な来訪に驚くが、ツェザール公爵には思い当たる節があるのか喜びを噛み締めたような表情を浮かべている。


「サマワ王国へ派遣した間者が日本との接触に成功したとのことです。」


「それは本当か!よくやった。」喜びのあまり、ツェザールはレノックスを抱き締める。


「しかし、私がこの時期に動くわけにはいかんな。よし、アウグスト。お前を全権大使として派遣する。日本との交渉頑張ってこい。」


「ちょっと待ってください。話が見えてこないのですが。」急に名前を呼ばれたアウグストは狼狽する。


「日本に我々の後ろ楯となってもらう。そしてローザと帝国を追い出してもらうのだ。」


「私には大任が過ぎます。」事の重大さを理解したアウグストはさらに青くなる。


「二週間後、ワルン川の河口にサマワ王国籍の船が来る予定です。漁船に偽装しておりますので、時間はかかりますが疑われることなく目的地へ行けることでしょう。」


「期待しているぞ。」そう言われたアウグストは、はいというより他なかった。


日本国 首相官邸

ソファーに深く腰かけ、重苦しい表情を浮かべた面々が居並ぶ。


「現在、ミサイル及び各種弾薬の生産施設の第一次拡充が完了し24時間体制で生産しております。」防衛相が言う。


「そうか。少なくとも、これで先日のような無様な失態を演じずに済みそうだな。それで、次はどんな手を打つつもりだ?」総理が言う。


「では、今後の作戦計画をご説明いたします。」


「第1段階として、我が国の民間船の攻撃を行った武装勢力の拠点を叩きます。第2段階として、同盟締結を行った7つの国について、武装勢力からの解放を行います。」


「武装勢力の拠点は確かサンドール王国だったか?あの国は政変があって結局同盟締結には至らなかったと記憶しているが?」


「はい、その通りです。」


「そうなると、マスコミが侵略侵略と騒ぐだろうな。」総理は憂鬱そうな表情を浮かべる。記者会見に次ぐ記者会見で嫌気が差しているのだ。


「現地政府の協力は得られないと思われるので上陸せず、船と港湾設備だけを狙うこととなりそうです。あくまで、今回の作戦の目的はシーレーンの確保ですのでそれで十分だという結論に至りました。」防衛相は続ける。


「それだと、敵の陸上戦力を残したまま補給線を絶つことになり略奪が起こるのではないか?」以前、防衛相を勤めたことのある外務相が口を挟む。


「そうなれば我々がマスコミに責められるな。だからといって食糧を支援してやるわけにもやらんし…。」

一時間ほど、議論は進展がなかったが一本の電話により事態は急転すろことになる。


「閣議中失礼します。本来、閣議中にお電話させていただくのは控えるべきだということは承知しておりますが、閣議の内容と関連性が高いので無礼を承知でお電話させていただきました。在サマワ王国日本大使館によると、昨日午後サンドール王国の公爵、ツェザール公爵の部下と接触が行われたとのことです。」




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[一言] 「第1段階として、我が国の民間船の攻撃を行った武装勢力の拠点を叩きます。第2段階として、同盟締結を行った7つの国について、武装勢力からの解放を行います。」 色々、日本国として傭兵稼業をして…
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