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ぼんやりとした意識の中から、近くで話す女性の声に意識が引き寄せられ、目が覚める。

長い長い夢を見ていたような気がする。

少し、目の前が霞んで見えづらいため、数回瞬きをすると、綺麗な女の子が私を覗き込んでいるのが分かった。

陶器のように滑らかで白い肌に、漆黒の髪が垂れ下がり、白と黒のコントラストが見事である。

ルビーを思わせるような、燃えるように赤い瞳は、キラキラと溢れんばかりに涙を溜めている。

私は、この娘を知っている気がする。

正確には、このキャラクターを。

「お母様!!!!ヴァイオレットが目を覚ましましたわぁ!!!!」

泣き叫ぶように斜め後ろに座る女性をお母様と呼んでいるこの少女。

「カメリア、ヴァイオレットがびっくりしていますわ。」

「だってお母様!!!ヴァイオレットったら、高熱で三日三晩目を覚まさなかったんですもの!!!!わたしく、心配で心配で…!!!!!」


カメリア・ルーナ・フェンネル。


ゲーム、悪役令嬢はだれ?〜君の瞳を欺いて♡〜の悪役令嬢じゃないですか。


この瞬間、自分が四ノ宮琴音だった頃の記憶、今世のヴァイオレット・ルーナ・フェンネルとしての記憶が入り混じり、記憶の処理が追いつかなくなったため、再び寝込むこととなった。




二度目の昏睡から目がさめると、頭の中が、クリアになっていた。

脳は、眠っている間に情報を整理するらしいという話は本当だったようだ。

起き上がり、周りを見渡すと、とても広い部屋だが、今度は誰もいない。大きな天蓋付きベッドに寝転がっている私一人だけのようだ。

改めて、今の自分の状況を思い出す。

私は、四ノ宮琴音という普通のOLだったはずなのだが、ゲームプレイ中に倒れ、そのまま死亡したのかな。思い返すと恥ずかしい理由だな。

そして、真っ暗な世界に飛ばされて、何者かと話した後、こちらの世界で、ヴァイオレット・ルーナ・フェンネルとして生ま代わり、高熱にうなされたことによって全て思い出したということなのだと思う。

ヴァイオレット・ルーナ・フェンネルは、ディセントラ王国という国のフェンネル伯爵家の三女に生まれ、一つ上にカメリアお姉様、四つ上に、エイジャお兄様がいる末娘だ。

フェンネル伯爵家はディセントラ王国で古くからある名家の一つで、伯爵位という爵位でありながら歴史が古く、王家とも遠縁の親戚であるため、公爵家をも凌ぐと言われている。

ゲームでは、ヴァイオレットもエイジャも名前しか出てきておらず、容姿や性格など、詳しいことは何一つ分からなかった。

…容姿??

そういえばここにくる前、暗闇の世界で、だれかに、ステータスのことを聞かれて、容姿に全振りしてって言ったような…?

今思うとバカだなぁと思うけど、前から、異世界へ行くときは顔に全振りしたら面白そうとも思っていたから、後悔はないのだが…

ふと、自分の容姿が気になり、鏡を探す。

そういえば、ベッドの脇の引き出しに手鏡が入っていたような…。

前世の記憶を思い出す前から、なんども見ていた顔なのだが、思い出してから改めて見るとどう思うのだろう?

そして、手鏡を取り出し、鏡の中の自分をみて絶句した。

髪はカメリアお姉様と同じ濡羽色の髪、真珠のような肌、スッとした鼻筋、赤く、ぽってりとした唇。目もぱっちり二重で、自分の名前と同じすみれ色の瞳がなんとも美しいことか。年齢はたしか6歳ぐらいだとおもうのだが、6歳にしてこの美貌…

カメリアも結構な美人さんであったが、ヴァイオレットはそれ以上に、美しさや神々しさを兼ね備えた美少女であった。

伊達に容姿に全振りしてねーな。

そのまま鏡とにらめっこをしていると、部屋の扉がノックされ開いた。

扉を開けた主は、私が起きているとは思わなかったようで、私を見て動きが止まった。

普段見せる表情は少ないが、なんとなく思っていることはわかる。家族ですからね。

びっくりしているのと同時に、起き上がれる元気があるなら呼び鈴でも鳴らせよって顔だ。

とりあえず。

「…エイジャお兄様。御機嫌よう」

挨拶でもしておくことにする。




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