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古代魔法の禁忌と魔力操作の練習

「あの、先生。質問いいですか?」


 マーヤと話していると一人の男子生徒が声をかけてきた。

 なんか見かけたことある生徒だな。

 なんだっけ?

 あ。

 確か一年くらい前に僕が興味を持った生徒で、禁忌の魔法が何故禁忌になったのかとか調べてた気がする。

 あれ?

 僕、精霊の説明のとき禁忌って言葉を使ったような……。


「精霊との契約で禁忌の魔法を使えば無理矢理契約が可能なのですか?」


 あちゃー。

 この子いるなら言わなければよかった。

 でもいいか。

 どうせ、僕とクソ野郎ども以外は知らない魔法なんだから、研究をしたとしてもなかなかたどり着けはしないし、ましてや使うなんて出来ない。

 教えてあげよう。


「過去の記録に精霊と強制的に契約するという魔法があったと記載されていたから、たぶん可能なんだろう。ただドラゴンの誕生のせいで、それ関係の資料が紛失。研究データも塵と化した。残った資料もそういう研究があって、ある程度成功していたが禁忌とした、という情報しか残っていなかったし」


「それって古代魔法の禁忌なのですか!?」


「ドラゴン誕生前の魔法らしいから、そうなんじゃない? その禁忌の魔法を使うとしても精霊の力を借りるか、魔法王になれるくらいの魔力が必要だと思うが」


 その魔法を僕は実の親にかけられたのだけど。

 なんでそんな魔法を知っていたのか気になるが、家にはその禁忌の魔法の書物や資料はなかったから謎のまま。

 それでも僕は僕にかけられた魔法を分析したので、魔力さえあれば使えるようになっている。

 そのおかげというか、そのせいでというか、契約を解く方法も精霊と契約の相互破棄をする以外は不可能ということがわかったんだ。

 契約の破棄は精霊の宿るものに人間の契約者が触れていないと出来ないから、怪盗となってまでその精霊の宿るその魔宝石を探しているんだけど。


「先生、ありがとうございます! 古代の禁忌魔法について調べてみます!」


「ああ。あと精霊との強制契約について何かわかったら教えてくれ」


「わかりました!」


 その生徒は嬉しそうにしながら僕から離れていく。

 まあ精霊との強制契約については調べても何も出てこないだろうけど。

 僕が各国の禁書、秘密文書などを不法侵入してでも読んで調べまくったのにわからなかったし。

 でもどこかに資料はあるはず。

 そうでないと、あのクソ野郎どもが使えるはずがないんだ。


 しばらくして精霊への質問を終えた生徒たちが全員もとの席に座った。

 さて。教師としての仕事を続けよう。

 僕は立ち上がって教壇に登り、生徒たちを見回す。


「それぞれ聞きたいことは聞けたようだね」


 生徒たちは皆興奮した様子でノートに何か書いていたり、友人と話していたりしているから、とても有意義な時間を過ごせたのだろう。


《我はもう石に戻って良いか?》


「ああ、良いよ。ありがとね。精霊くん」


 精霊はもとの魔宝石の姿に戻っていく。

 では、授業の続きをしようか。



〜〜〜〜



 授業を終えた僕とマーヤは、僕の研究室へやってきていた。

 部屋にかけた鍵を開けて防犯機能をオフにしておく。

 怪盗サーチの基地へ繋がる場所の一つだし、色々と仕掛けてあるからね。

 ここの魔法道具もマーヤの魔力であれば無効化できてしまうと思うので、改良が必要ではあるけど。


「ここが先生の研究室……」


「主に魔法と魔法道具の作成や改良を行う部屋だ。あとは生徒たちに出した課題の評価をするのもこの部屋かな」


「へえ。本が沢山ありますね」


「ほとんど僕が書いた魔法書だけどね」


「そうなんですか!?」


「僕は世界で五番目に凄い魔法使いだからこのくらい当然さ。本当は一番なんだけど」


「やっぱり先生はナルシストなんですね」


「違う。僕は世界に嫉妬されるほどの天才魔法使いだ。それはいつか誰もが認めることだから、僕の振る舞いは至極当然なんだよ」


「……」


 マーヤは僕をじとっとした目で見つめてくる。

 信じてないな?

 まあいいさ。

 いつかわかることなんだから今は信じなくても構わない。

 それよりもマーヤに魔法を教えなければ。

 その前にやるべきことがあるけど。

 僕はマーヤに椅子を進めて僕の机の前に座らせる。

 そのあと僕も机を挟んでマーヤと向かい合わせに座った。

 では昼前に少しだけ授業をしておきますか。


「マーヤ。魔法を使う前に魔力操作の練習をしようか」


「魔力操作ですか?」


「そう。まずは魔力の存在を感じ取れるようにすること。といってもマーヤは無意識に魔力を操れていたし、それを意識してやれるようにすればいいよ」


 それが簡単に出来たら苦労はしないんだけど。

 無意識を意識してやるのは意外と難しい。

 歩くという動作もいちいち右足をどのくらい上げて、重心をいつどのタイミングで前へ移動させて、右足を地面につけ左足を……と意識して歩くとぎこちなくなるものだ。

 それを瞬時に意識しながら行うのが魔力操作。

 慣れてくれば意識しなくても出来るようになってくる。

 無意識を意識し、慣れてから無意識へ戻してしまえば魔力操作も呼吸をするのとなんら変わりなく行えるようになるが……そこまで行くのが難しいんだよな。

 まあ、まずは魔力を感じ取れなければどうしようもないんだけど。


「魔力……。たぶんこれが魔力なのかなっていうものは感じ取れます。なんていうんでしょう? 心臓とは別のなにかが鼓動してるみたいな? 規則的に縮んだり膨らんだりする変な感覚です」


 ふむ。なるほどな。

 マーヤの言葉を紙にメモしておく。

 やはり僕と同じ魔力の波長を持っているのなら、感覚も似ているのか。

 なかなか面白い。


「それが魔力であってる。それをしっかりと感じ取りながら、自分の意思で鼓動させてみろ」


「えっと、その、どうやって?」


「こればっかりは人によって違うからなぁ。手を使ってみたり、ただイメージしてみたり、紙に書いてみたり、まあ好きにやってみるといい」


「えー」


「最初はどんなことをしても魔力を自分の意思で動かすことは出来ないと思う。でも根気よく頑張っていればそのうち出来るようになるさ」


「……が、頑張ります」


「まあこの面倒くささに心が折れる魔法使いが多いのだけども」


 だから魔法書を使った魔法のほうが一般的なんだ。

 魔力操作の習得に平均十年と言われてるから、そりゃ心が折れても仕方ない。

 僕は天才だし、魔法使いの家系に生まれて幼少期に魔力操作の練習をしたから習得が早かった。

 幼少期のほうが大人より魔力が少なく動かしやすいと言われているし。

 出来れば幼い頃から練習を続けるといいんだけど、魔法使いの家系以外から出た魔法使いではなかなか難しい。

 この世の魔法使いのほとんどが一般の出だ。

 魔法学校だって幼い子が通えるような所は今のところないからなぁ。


「……興味本位で聞きますが、先生はどうやって魔力操作の技術を習得したんですか?」


 マーヤが聞いてくる。


「僕? 僕は天才だから頭の中でイメージしてた。といってもだいぶ昔のことだし、あまり覚えていないがな」


 マーヤがイメージして出来るようになるとは限らない。

 想像力が豊かなら可能かも知れないが、イメージしやすい何かと一緒にイメージしたほうが習得しやすいだろう。


「……何歳のころ習得しました?」


「三歳のころ」


「普通は何歳で習得ですか?」


「んー。二十歳から三十歳が多いらしいね」


「習得が三歳のころなら、先生は昔から魔法が好きだったんですね」


「ああ、ずっと好きだね。魔法のことなら誰にも負けないさ」


「でも魔力は少ないって話ですよね?」


「……まあね。それでも魔法使いを諦められなかったから頑張ったんだよ」


 僕の両親もさぞ驚いたことだろう。

 魔法使いになるという夢を断とうとして、余計に僕が魔法に縋るなんて考えもしなかったはずだ。

 両親が奪ったものは、僕にとってとても大きなものだったから、あのときは絶望したけれど。

 でも絶望したって仕方ないから、僕は禁忌に手を出してでも奪われたものを取り戻すと誓ったんだ。

 それに奪われるほど弱かった僕が一番悪いんだし。

 なあ、そうなんだろう?


「先生は頑張り屋さんなんですね」


「普通なら諦めるところを頑張って魔法使いになったんだ。天才だろう? マーヤはこれから魔法を知って、僕の凄さに恐れおののくがいい」


「……先生は謙遜の仕方を学ぶべきかと思います」

次話は1月3日投稿予定です


今年はこれが最後の投稿ですね

年明けもこの物語をよろしくお願いしますm(_ _)m

皆さま良いお年を!

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