帰ってきた勇者たち
もう1月18日ですが、
あけましておめでとうございます!
翌日もダイザム、ジョセフ、トゥアーサが僕の家にやってきた。
ダイザムに王に会えたか聞くと、会えたそうだ。
……冒険者組合怪盗サーチ対策部隊って思った以上の権力があるのか?
「この国のお祭りである戦術祭という学園の行事で、として魔宝石を出してく景品れるらしい。それを奪えるものなら奪ってみろと挑戦状を出す予定だ。人が大勢見守る中でなら、サーチを目撃する人も増える。更にサーチを捕まえられたら賞金を出すといえば、協力してくれる人も増えるだろう」
「せ、戦術祭を利用するんだ……」
背中にたらたらと汗が流れる。
僕も怪盗サーチ捕獲作戦に参加させられる感じか?
それは非常にまずい。
僕がサーチ捕獲に参加しなくてもいいように、戦術祭のときの僕の仕事を増やしてもらおう。
いや待て。仕事が増えたら増えたで、怪盗として盗めなくないか?
ど、どうしよう。
ディゼオと相談しないと。
そんなことを考えながらも、ダイザムたちを僕の研究室まで案内するために先頭を歩いていく。
「因みに景品の魔宝石って、どんな魔宝石か決まってる?」
「まだ決まってないぞ」
ダイザムが教えてくれる。
決まってないのか。まだ話せないだけかもしれないが、決まったら教えてもらおう。
「しかし本当に王様に会えたんだね。思ったより凄い組織だ、冒険者組合って」
「いや怪盗サーチ対策部隊だからだぞ、ニファン殿。今回も特例中の特例だろう。世界には、なくてはならない魔宝石というものが存在する。それを守るために、もしくはもう盗まれてしまったものを取り返すために、我々は国を超えて活動しているのだ。そのためならばどこの国でも協力を取りつけられる」
「そんな大切な魔宝石のこととか聞いたことないけど?」
「秘密裏に管理されているものもあるのだから当然だ」
「例えばどんなものがあるの?」
「それは私の権限で教えることはできないものが多いな」
「残念。まあ仕方ないか」
「有名でわかりやすいものでいうと、空の島国クラホーズだろう」
「そういえばあの国は巨大な魔宝石で浮いているんだっけ」
あの国は何百年も前から存在しているため、僕の魔宝石ではない。
仮にあれを盗んだら、空に浮かぶ島が落ちてくる。
大きな土や岩の塊が落ちてくるなんて恐ろしい。
そんなことをするつもりはないけれど。
「我が国の魔宝石も大切なものだったのだが、サーチに盗まれた」
「ふーん」
どこの国だろうか。
いやどこの国かわかっても、どの魔宝石を盗んだかわからないし、魔法石を放り込んだ倉庫で探しても見つけられないだろう。
特徴を言ってもらえればわかりそうだが、見つけても流石に返すことはできない。
僕の魔宝石が戻ってきたなら返すことも考えてもいいが、奪われたほうも悪いし返さなくてもいいだろう。
階段を上がり二階へと足を向ける。
「ニファン殿は魔宝石を沢山持っているから、サーチに狙われそうだな」
「別に狙われても困らない。いや魔宝石欲しさに魔法道具を分解されると悲しいけど、絶対に手元に残して置きたい魔宝石はない」
「高価なものを盗まれて良いのか?」
「それ以前に僕のものは誰にも盗むことはできないさ」
盗まれたらそれは僕が悪い。
誰にも盗まれないように、誰にも騙されないように。
僕は奪う側でいたいから。
いつもの決意をしていたら、チリンと鈴が鳴った。
ダイザムたち以外に誰かが来たらしい。
目の前の研究室の扉を開ける。
「客が来たからこの中で待っていてくれ。すぐ戻る」
そう声をかけてから僕は玄関を出て外の門までやってきた。
「ニファン先生! 帰ってきました!」
マーヤとスティナがそこにはいた。
ちょっと困惑してしまう。
もう帰ってきたのか?
マーヤたちが神聖ミアナッシーク王国を出てから五日くらいしか経ってないぞ。
「随分と早いな」
「新しい力を道中で身に着けまして、早く帰ってこれました!」
マーヤがとんでもないことをいう。
そんな短期間に行きより二日も早く帰ってこれるとか、どんな成長の仕方をしたんだ?
流石勇者というべきなのか……。
過去に勇者が人の敵になったらしいが、マーヤのような異常な成長の仕方をするなら恐ろしい。
勇者召喚が禁句になるのも頷ける。
しかしマーヤは人と敵対なんて、そんなことしないだろう。
「マーヤ、スティナ。今は来客がいるから別の部屋で大人しくできるのであれば、家に入れてもいいけど、どうする?」
「はい」
「大人しくします!」
二人の元気な返事を聞けたので、家の中へ招き入れる。
しかし、今日も怪盗サーチ対策部隊の三人は俺の仕事の見学が目的だ。
魔法道具や新しい魔法陣の開発を見せようかとも思ったけど、マーヤたちが来たしな。
マーヤとスティナへ魔法を教えるのも仕事だ。
そちらを見せたほうがよいだろうか?
「今いる客がお前たちと一緒にいることを許したら、魔法の授業でもしようか?」
「いいんですか? 魔法について知ることができるなら私は歓迎ですけど、無理してません?」
マーヤがそんな心配する。
「無理なんてしてないよ。じゃあお客さんを連れてくる。リビングにいてくれ。もしダメだったら、リビングで魔力操作の練習を二人でしておいてくれ。スティナはマーヤに教えてもらってね」
二人をリビングのドアの前まで連れていき、僕は二階の研究室へ向かう。
ドアをノックしてから中に入った。
「お待たせ」
三人は僕が書いた魔法書を読んでいるようだ。
ジョセフとトゥアーサは興味津々だが、ダイザムは眉間にしわを寄せて首を傾げている。
やはり剣のほうがあっているのだろう。
「ニファン殿。お客さんは大丈夫かね? わしらが邪魔なら後日また来るが」
ジョセフが言っている。
その様子ならマーヤたちと一緒でも大丈夫そうだな。
「教え子が来たから、教師としての仕事の見学でもする?」
「いいのかのう? お願いしたい」
ということで、リビングの前までやってきた。
しかし廊下にも聞こえるくらい話し声が聞こえてきている。
どれだけ盛り上がっているんだ?
一応ノックしてからドアを開ける。
するとマーヤが一目散に僕のところにきて腕を引っ張った。
「先生! どうして教えてくれなかったんですか? 先生に素敵なパートナーがいただなんて!」
マーヤは何を言っているのだろう?
スティナもキャーキャー言いながら、ユリアと話しているし。
「あとはねー、ニファンが初めて私にキスしてくれた時の話でもするぅ?」
ユリアがとんでもないことを言っている。
「ユリア」
ドスの効いた低い声でユリアを呼ぶ。
ユリアは僕を見ながら、肩を揺らして楽しそうに笑っている。
「なんて嘘を僕の教え子に教えているのかな?」
「えー、嘘なんてひっどーい」
「白々しい。僕がお前なんかにキスとかするわけないだろう」
「まあそうね。あなたは魔法を愛してる。私は魔宝石を愛してる。もうそれぞれに惚れたものがあるもの」
「マーヤ、スフィア。すまないな。ユリアは人をおちょくることが大好きな嘘つき女だ。信じないほうがいい」
「ニファンだって人のこと言えないでしょ? 嘘つきなんだから」
「いや、僕はいつでも正直さ」
「あはは! それこそ嘘じゃない」
ユリアがにやにやと楽し気にしながら、テーブルに置いたあるクッキーを手に取ってかじる。
今日もお菓子を作ったらしい。
僕も手に取って食べる。
「でもこの家に可愛い女の子が来たから、ちょっと舞い上がり過ぎちゃったかもしれないわ。最近外に出てなくて、キャピキャピしてなかったもの」
ユリアがやっと落ち着いたようで、そんなことを言う。
「だったら外に出て仕事でもしろ」
「そうねぇ。でもここでタダ飯を食うのもいいのよねぇ」
「仕事の腕が鈍るんじゃないか?」
「庭で鍛錬はしてるから大丈夫よ。でもまあそろそろ動こうかしら」
まあ協力者となったからここに住むのは別に構わないんだ。
ちゃんとサーチのサポートをしてくれるなら。
「……ニファン先生。結局ユリアさんって恋人ではないんですか?」
マーヤが首を傾げて僕に聞く。
「違うよ。ただの仕事の協力者。なぜかこの家に居座り続けてるけど」
「そうなんですか。でもユリアさんの話、リアリティがありすぎて信じちゃいましたよ」
「どんな話をされたんだ?」
「……秘密です!」
キスとかそういう話していたから、なんとなくは想像はできるけど……。
嘘と言ったし問題ないか。
では、ユリアのせいで完全にほっぽっていたダイザムたちをマーヤたちに紹介するとしよう。
ダイザムたちのことを知った怪盗サーチファンであるマーヤは凄く喜んで、ダイザムと仲良く話していた。
このままだと魔法を教えることができないな。
マーヤは放っておいて、さっさと始めるか。
「スティナは聖女マジナーサに魔法を教えてもらっていたの?」
「はい。一応マジナーサ様の弟子ではあるんですが、魔法が使いづらくて……。今は魔法陣の書き方と使い方が一番知りたいかもしれません」
「魔法陣の書き方と使い方ね。ちなみに魔法操作を使う気はある?」
「将来的には使いたいですが、魔法操作って難しいんですよね」
「努力次第で誰でも使えはするよ。今すぐは無理だけど、魔法操作を使ってみたいと思うならやり方だけ教えておこう。そのあとは君の努力次第だ」
マーヤに教えたように、スティナにも教えていく。
「まずは魔力を感じ取れる?」
「それはばっちりです」
「君の魔力はどんな感じかな?」
「んーと……波みたいです。右、左と魔力が行き来している感じですね」
「それを自分の意志で行き来させられるように頑張らないといけない。魔力を動かすというイメージは人によって違うから、試行錯誤してみてくれ。頭で考えるだけじゃなく、ものを使ってみるのもいい」
「なるほど」
「ちょっと頑張ってみて。十年頑張ってやっとできる人が多いけどね」
「そ、そうですか」
やり方は教えたし、次はスティナが望むことを教えようか。
「ニファン先生! 私も入れてください!」
マーヤもダイザムとの話は満足したようで、テンションが高いまま僕の隣の椅子に座った。
ではマーヤにも混ざってもらおう。
次話の投稿は早くて1月、遅くて2月です。
改めまして、新年明けましておめでとうございます!
私は新年早々体調悪くて悲しいです。
元日から喉に違和感あって、それを放っておいたら39度の熱を出して一週間くらい寝込みましたから……。
小説のほうは、一週間投稿が出来ていたのが夢のよう。
書きたい気持ちだけ先走って手元が進まないので、ネタになりそうなもの探したり、他の方の作品を読んだりしてみてはいるのですが……。
5000文字をポンと書いていた時期に戻りたい。
ちょっとずつ頑張ります。
2020年もどうぞよろしくお願いします!




