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魔法陣解読(笑)

 いきなり叫んで手の甲をさするユリアを怪訝そうに見るダイザムたち。

 つねったのがそうとう痛かったらしい。


「なにすんのよ! ニファン!」


 ユリアがキッと僕を睨んでくる。


「なにってなに? いきなり叫びだして僕に難癖つけるのやめてくれない?」


 知らんぷりする。


「知らないふりしない! 女の子にもっと優しくしなさいよ!」


「あいにくユリアを女の子としてみてないんだよね」


「ニファンの目はおかしいんじゃない? 見なさい! 私の素晴らしいスタイルを!」


 細い足首、むっちりした太腿、お尻も大きめで腰はくびれてて……。


「貧乳」


「殴るわよ?」


「スタイル見ろっていったのユリアじゃん」


「胸を見ろとはいってないわ!」


「足と尻と腰は完璧なのに、何で胸がないんだ?」


「うっさい! あほ! ちゃんとあるわよ! 服で隠れてるだけ! 着やせするの! 脱げば凄いんだから!」


「そういう魔法道具、作ってやろうか?」


「え、いいの? ……って、あー! もうニファンのバカ!」


「ユリアはものに釣られすぎだろ」


 赤面するユリアを馬鹿にして笑ってやる。


「本当にニファンって最低だわ」


「最低? 最高の間違いだろう」


「あなたのどこが最高なのよ!」


「魔法だ」


「……あ、うん。確かに最高ね。でもそれとこれとは話が違うでしょ!」


 わーわー言い争っていると、ダイザムがごほんと咳払いする。

 ダイザムたちの前でこんなことしてちゃダメだね。

 ユリアも気がついたのか、慌ててダイザムたちに謝って食事に戻った。


 食事を終えた後。

 ユリアに食器洗いを任せて、僕はダイザムから受け取った魔法陣を見る。


「これは大きな魔法陣を模写したもので、サーチが一瞬で書き換えたものです。サーチだけ魔法が使えるという謎の書き換えでして、どうしてこうなっているのか教えてください。今後の対策にしたいのです」


 ダイザムの説明を聞きながら魔法陣を見るが……これは女神の瞳を盗んだときに書き換えたものだった。

 それを真面目に「きっと難しい陣が書かれてるに違いない」って思って説明してくれてるダイザム。


「あっははは!」


 あまりのおかしさに笑ってしまう。

 ダメだ。お腹痛いっ。


「え、ニファン殿?」


「はははっ、ご、ごめん、サーチがめっちゃふざけたことしてるから笑っちゃった」


 それを真面目に解読しようとするダイザムが面白すぎるっ。


「……ふざけたこと?」


「そうそう。はー、おっかしいっ! 指パッチンが魔法発動の鍵って、ふざけてるでしょ」


「……なんですかそれ」


「指をパチンと鳴らしてからじゃないと、魔法妨害の陣の影響を受ける作りになってる。普通は魔法を発動するときは合言葉や呪文を唱えるけど、その代わりが指パッチンだ」


「呪文が動作になっている、と?」


「そうそう。ライトの呪文はそのままライトだけど、それを指パッチンに変える感じ」


 僕はそういって指をパチンと鳴らして、光の玉を作り出す。

 ちゃんと明るさを調節してるので、目がやられることはないだろう。


「なるほど……無詠唱に見えますね」


「無詠唱は魔力操作で行う技術。このライトも魔力操作を使っているけど、魔力で作った魔法陣に呪文を組み込んでるから無詠唱じゃない。詠唱が組み込まれてなければ無詠唱だね」


「詠唱が指パッチンか……」


「笑えるだろ?」


「これを数秒で書き換えられるものなんですか?」


「どうなんだろうね。出来る人は出来るかもよ」


「ニファン殿は出来ますか?」


「んー、出来るのかな? 即席で魔法を作るのは良くやるけど、書き換えはあんまりしない。……いや、魔法陣の改良のときにやってるあれって、書き換えなのか? たぶん書き換えか。だったら出来るかもしれない」


「本当ですか!? では真っ暗な部屋でもできますかね?」


「それは出来ない。無理」


 サーチのときは、暗視機能つきの仮面つけてたから、しっかり見えていただけだし、裸眼で暗闇は流石に無理だ。


「そ、そうですか……」


 ダイザムはしょんぼりと肩を落とす。

 でも暗視のことは言わないから。

 僕も気がつかないふりするし。


「流石ニファン殿じゃ。儂より凄い魔法使いじゃのう」


 元五の魔法使いのうちの五。ジョセフが僕を褒める。


「当たり前だ。僕は天才だからな」


「個人的なお願いじゃが、うちのトゥアーサに魔法を教えてくれんか」


「は? お前の弟子って言ってたじゃん。僕が教える必要ある?」


「儂は戦闘系の魔法しか教えられんからのう」


「学園外の教え子も結構いるから、今忙しいんだけど」


「そうかの?」


「アルファード王国の国王からの依頼で受け持ってる教え子が一人、マジナーサからのお願いで受け持った教え子が一人だ。片方は魔法素人だし、片方は意味不明な方法で魔法発動してきた子だ。一緒に受けるにしても基礎の基礎から教えてるから、ジョセフの弟子じゃ物足りないでしょ」


 彼女たちは今、走って帰ってきているが、マーヤの謎技術によって一週間で帰ってこれるはずだ。

 今日で四日だし、あと三日くらい経てば帰ってくるだろう。

 マーヤがいない間は、魔法道具作成に熱中できたから、暇がなくなって悲しいな。


「大変じゃのう。そこに学園の仕事と魔法と魔法道具の開発もやっておるのか?」


「もちろん」


「想像以上に多忙じゃの……」


「それに今は学園の戦術祭の準備もあるから無理。仕事を見学するくらいなら別にいいよ。ジョセフじゃない魔法使いの仕事を見ればいい刺激にはなるんじゃない?」


「ニファン殿は優しいのう。見学は許してくれるのか。秘密の研究とか、ありゃせんのか?」


「もちろんあるよ。それは流石に見せられないけど、そうじゃなくても僕の技術は世界一高い。そして魔法への理解も世界一だ。参考になるものは沢山あるさ」


「素晴らしいのう。儂が五の魔法使いから外れたのも納得じゃわい」


「そうだろう?」


 しばらく話をして、僕の仕事の見学を早速することになった。

 僕がいつも使っている部屋にやってきて、早速魔法の研究を始めるための準備をする。

 もちろん怪盗サーチ関連はなしで、見せてもいいような魔法道具や研究にするつもりだ。

 準備している間、ジョセフが興味深そうに僕が作った魔法書を勝手に見ている。

 弟子のトゥアーサは焦ったように「見ちゃダメです!」って言っていて、ものすごく好感が持てた。


「ニファン殿、見ても良いじゃろか?」


 魔法書を見ながら言っても、もう遅い気がするのだが。


「まあいいんだけど……壊したり、盗んだりしないのなら」


「魔法陣は模倣するぞい」


「いいよ。どうせもう出回ってる魔法陣だし。出回ってないのは隠してあるから」


「用心深いのう」


「当然だろう。世の中、信用ならないものばかりだ」


「そうじゃのう。しかし素晴らしい。この本の表紙と裏表紙の模様。これは、魔法陣になっておるのじゃな。なんの魔法陣か教えてはくれぬか?」


 流石ジョセフ。元とはいえ、五の魔法使いになっただけのことはある。

 普通の魔法使いではその表紙が魔法陣とは気がつかないだろう。

 何せ形が丸ではなく四角になっている。

 魔法文字も結構崩して書いたから、何が書いてあるのか僕しかわからないだろう。

 しかもわざと模様っぽく作ったし。


「よくわかったね。それが魔法陣って」


「そりゃわかるわい。本の表紙に魔宝石を埋め込んでおるしのう。この本でさえ魔法道具とは、やはり異常じゃ」


「ジョセフに言われたくない。攻撃魔法だけなら僕よりヤバイもの作っただろ」


「あれはまぐれじゃ。して、この本はどんな性能を持っておるんじゃ?」


「……言いたくないな」


「……おぬし、見せたくないものは隠しておるのではなかったのか?」


「隠してたじゃん。本の模様とか飾りに見せていただろう」


「……大胆な隠し方をするのう」


「まあ秘密にしてくれるなら話しても良いけど」


「なんじゃ。そんな対した秘密じゃないのかのう」


「表紙の魔法陣は一部だ。表紙の分厚さは羊皮紙を何枚も重ねてるからそうなっている」


「重ねた羊皮紙にも魔法陣が書かれておると?」


「そう。そしてその厚さ全てを魔宝石に接続してるから、全て必要な魔法陣だ。表紙の魔法陣さえ一部だし、見ただけでなんの魔法陣かわからないようになっている。本を壊さないとマネできないようにしてあるから模倣も出来ない」


「模倣できないから、話しても良いということかね」


「そういうことだ」


「じゃあ教えてくれるのじゃな」


 仕方ないので、教えることにしよう。

 ジョセフの持つ魔法書を奪って、表紙に半分埋まっている赤い魔宝石に触れる。


「性能確認、リターン」


 僕の言葉に反応して、魔法書が蝶のように羽ばたきだす。

 そして僕の頭上でくるくると空を飛び出した。


「これが魔法書の性能。もし盗まれても魔宝石を取り出そうとしたり、長い間僕に返さないでいると、こうやって空を飛んで僕の元へ帰ってくる」


「空を飛ぶなんて夢のまた夢の時代を儂は生きていたのじゃが……。ここまで技術は進んでいるのじゃな」


「僕だけ技術が進んでるんだよ。高性能なものは国ぐるみで隠してるものもあるくらいだ。でも流石に人間はまだ飛ばせていないんだけどね」


「国ぐるみ……。儂が五の魔法使いをやっていたときには、そんなこと起きんかったぞい」


「僕の持つ技術は素晴らしいからね。仕方ないよ」


「恐ろしいのう。どこまで先に進んでいるのか、想像がつかん」


 そういうジョセフに意味ありげに笑ってみせながら、空を飛んでいる魔法書を掴んで飛ぶのをやめさせる。

 魔力が減ったので、魔宝石に魔力を補充しておいた。

 満タン補充、したかった。


「あー、ジョセフ。教えてあげたからこれに魔力補充しといて」


「むぅ。仕方ないのう。このくらいの魔力、自分で補充せい」


 ささっと満タンにしてしまうジョセフ。


「マジで苛立つ」


「ん? なぜじゃ?」


「このくらい自分でとか言うけど、自分でやってそれだぜ? 全部魔力使い果たしてそれだったんだぜ? あーくっそ腹立つ! なに? 魔力がない僕に向けてのあてつけか!?」


「あ……す、すまん。そうじゃった」


「今この中で一番魔力が少ないの僕だからな!」


 うう、昔はジョセフよりも魔力があったのに……。

 悲しくなって、ジョセフから魔法書を奪い盗り、本を開く。

 僕は魔力がなくても誰よりも素晴らしい魔法使いだ。

 こんなにも凄い魔法陣の数々を発明した。

 だから、魔力があればもっと凄い魔法使いになれる。

 絶対、取り返す。


「まあ僕は天才だから、どんなに魔力で負けていても、いつか超えるから見ておけ!」


 指を突きつけ、睨んでやる。

 ふん。今はバカにされてもいい。

 いつか見返してやればいいだけだ。

 僕は魔法王となる男だからな。

次話の投稿は未定です

最低でも年内には投稿します

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