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不思議な魔力を持つ少女

 少し様子の可笑しな友人と話に花を咲かせていたら、いつの間にか国王が待っているらしい応接室の前まで来ていた。

 声をかけてから部屋に入ると見知った顔である国王と見たことのない黒髪の少女がソファに座っている。

 僕は部屋に入ってその黒髪の少女を見たとき、その少女から目が離せなくなっていた。

 だって彼女の持つ魔力の波長が、あまりにも僕に似過ぎている。

 というか同じといっても過言ではないのではないか?

 そしてその魔力は今まで会ったどの魔法使いよりも膨大であった。

 いや、昔の僕と同じくらいの魔力量と言うべきか。

 僕の持っているもの、持っていたものに、あまりにも似すぎている。

 なんだ、こいつは。


 僕は気が付けば彼女の前に立っていた。

 彼女は不思議そうに僕を見上げて首を傾げる。

 その少女の髪を引っ張ってじっくりと眺めた。

 普通ではありえないほどその髪には魔力が宿っていないのに対し、その体からは無限にも思えてしまうような膨大な魔力が宿っている。

 少女の体をぺたぺたと触り、魔力に干渉し、軽くではあれどいろいろと調べた。

 しかしこの少女のどこにも、僕の求める魔宝石は見つけられない。

 魔宝石を持っていないということは、この魔力の波長は生まれ持ったもの。

 とても低い確率ではあるが、僕と同じ魔力の波長をもって生まれたということか。

 この少女、ヤバいな。

 僕の魔力の波長とほぼ同じだということは、今まで作った魔法道具の改良が必要だ。

 魔力の波長で防犯対策をしていたというのになんということだ。

 最悪この少女のせいで怪盗サーチであるということがばれてしまう。


「この変態! どこ触ってんのよ!」


 少女の魔力が高まり僕へ向けて殴りかかってくる。

 身体強化をしたのか?

 魔力が体の外に溢れ出しているから魔力操作の精度はおこちゃまだな。

 でもその魔力量で殴れば、頑丈に作られた分厚い鉄の金庫でも木っ端微塵になるだろう。

 まあ僕なら大丈夫だけど。

 白衣に搭載された物理と魔法の両方を防げる結界が瞬時に発動し、僕を守ってくれた。

 ふむ。

 どうしたものか。

 僕は腕を組んで考え込む。

 この少女を実験対象としてそばに置きたい。

 同じ魔力を持つ存在なんて滅多にいない。

 例え存在したとしても会える確率はゼロに等しいだろう。

 なのに会えたんだ!

 これは運命が僕に研究しろと言っているに違いない!

 ヤバい。こんなに心が踊るのはいつぶりだろうか?

 まずはどんな実験をしようかな?

 不可能とされていた魔力移植とかはどうだろうか?

 考えるだけでもぞくぞくしてくる!

 少女の肩を強く掴んで僕は少女に語りかける。


「今日から僕の研究に付き合え。拒否権はない! さあ、僕と一緒に魔法と魔力の真理を探そうじゃないか! なに、とても楽しい日々が待っているさ! さあ、笑おう! アハハハハハ!」


「ニファン? どうした? とりあえず落ち着け」


 エリックがもの凄く心配そうにしながら僕を少女から引き離す。

 少女に魔力で描いた追跡の魔法陣を刻んだから、彼女が隠れてもすぐに見つけ出せるさ。

 少女と僕の魔力はほぼ同じだからその魔法陣を見つけ出すのは不可能だろう。

 僕が陣を消すまで永遠に刻まれ続ける。

 どうしてくれようか?

 にやにやが止まらないじゃないか。


「おい。ニファン。本当にどうした? 魔法以外に興味のないお前がいきなり女性の体に触るなんて……。魅力的なのはわかるが流石にその、な? わかるだろう?」


 エリックが頬を赤らめて僕に話すが、女性の体?

 だから何?

 

「エリック、少女の魔力を見ろ。あの膨大さ! あの波長! そして濃度! 余りに美しいじゃないか!」


 膨大であるがゆえにその小さな体に凝縮された魔力はあまりに美しく輝いている。

 透明なのでなんとなくでしかわからないが、僕のような天才魔法使いには魔力が見える。

 色とかではないし、感覚的なものではあるんだけど。


「……あー。うん。俺に魔力は見えないんだ。でもニファンがいつも通りというのはわかったから安心した」


 エリックが少し疲れたように僕の肩を軽く叩く。

 ちょっと邪魔だ、エリック。

 少女をじっくりと隅々まで目に焼き付ける。

 凄い。この魔力はヤバい!

 マジかよ。マジかよ!


「こんなこと本当にあり得るのか? 夢? アッハハハハ! こりゃあ研究するしかねぇなぁ!」


「とにかく落ち着け! 父様もマーヤ嬢も引いてるから。なんなら俺も引いてるから!」


 しばらくして僕は落ち着き、大人しく国王と少女と向かい合わせのソファに座る。

 でも機嫌が良すぎて、今なら国王に敵国を滅ぼせと言われたら本当に滅ぼしてしまいそうなくらい胸が高鳴っている。


「……あー。ニファン・ヴィオラン・アスタール殿」


 国王が僕を呼ぶ。

 僕はにっこにこして国王を見つめる。


「……こちらがマーヤ・レイザンガリフ嬢だ」


「彼女がマーヤ・レイザンガリフ嬢でしたか」


 少女マーヤは僕と目が合うとぷいっとそっぽを向いてしまった。


「依頼の前に女性の髪を引っ張ったり、体を触ったことを謝ってくれぬか……?」


 今の僕は機嫌がいい。

 言う通りにしてあげよう。


「マーヤ・レイザンガリフ嬢。すまない」


「ゆ、許しません!」


 許さない?

 許さないだと?


「言っておくけどお嬢も悪いと思うよ? 僕と同じ魔力の波長を持っているなんて僕が興奮しない訳ないじゃないか。ちゃんと僕に心の準備をくれ」


「はあ? 魔法道具の検査では私に魔力はないって出ましたけど?」


「いや、ある。膨大過ぎて魔法道具が壊れたんだろう。あと人を殴るときは気を付けろ。僕だったからよかったけど、膨大な魔力のせいで普通の人間なら塵も残さず消え去ってるほどの威力があったからな」


「えっ?」


 マーヤは面白いくらい一瞬にして青褪めた。

 魔力のコントロールが出来るまでは僕の教えを受けたほうがマーヤにとっても僕にとってもいいだろうな。

 白衣を脱いで、その内ポケットに仕込んである魔宝石を確認する。

 あの一撃で魔宝石の半分の魔力が削られた。

 二度目の攻撃では耐えられるか壊れるかギリギリのところだろう。

 中級冒険者の攻撃なら魔力は1%も減らないのに、半分とか馬鹿げてる。

 とりあえず魔宝石に魔力を注入するけど満タンになる前に僕の魔力が枯渇してしまった。

 僕の少なすぎる魔力が恨めしい。

 つい舌打ちするけど、そこではっと思い当たる。

 僕はマーヤの魔力を操れるか否か?

 同じ魔力を持っているなら可能なのでは?


「マーヤ。手を出せ」


「嫌です。何する気ですか?」


「実験だ。僕がお前の魔力を操ることが出来るか否か。同じ波長の魔力であるならば接触していれば扱えるかも知れない。高価な魔宝石の魔力をお前のせいで消費したから補充したいし、ついでに実験をする」


「意味わかんないです」


「どの意味がわからない?」


「波長ってなんですか? まほうせきって?」


「魔宝石をしらない? どこで育ったんだ?」


 魔宝石は誰もが憧れる宝石だろう。

 結婚指輪に美しい魔宝石のついた防御の結界が張れる魔法道具を購入するなんてザラにある。

 それなのに知らないと?

 まさか山の中とかで育ったのか?


「そ、それは秘密です!」


 ……まあ誰にでも秘密はあるさ。

 調べる必要はないだろう。

 知られたくないことを知ろうとすると、僕の秘密も知られそうで嫌だし。

 とりあえず魔宝石と魔力の波長について説明するか。


「魔宝石というのは、簡単にいうとただの石に生きた魔力が宿ることで作られる。天然の魔宝石のほとんどが精霊が宿ることで出来ると判明していて、それらの魔力は人の平均魔力と比べれば膨大、圧倒的な差がある。それを駆使して人間だけでは到底扱えるはずのない魔法を魔宝石に宿った魔力で代用しているんだ。それが魔法道具や精霊魔法と呼ばれるもの。理解したか?」


「ほえー。なんか凄いですね。」


 理解出来ているか、もの凄く怪しいのだけど……。

 また聞いてきたら答えてやるか。

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