表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/55

相棒が作ってくれた資料

 刻印の血涙の精霊と契約破棄したその日。

 ケルトとマジナーサは神聖ミアナッシーク王国に残り、マーヤとエリックとスティナは来た時と同じように、アルファード王国には走って帰った。

 僕もさっさと帰ろう。

 ディゼオが昨日手に入れた資料とかを分析しているだろうし、なにか情報を見つけられるだろう。

 僕は転移の魔法道具を使って家に帰る。


「ただいま」


 家のリビングに入るとユリアがいた。

 のんきに宝石を磨いてニヤニヤしている。

 ディゼオはどこに行ったのだろう?


「あ、ニファンお帰りなさい。ディゼオは別の部屋で作業するって言ってどっか行ったわよ」


 ユリアが教えてくれた。

 別の部屋ってどこだろうか。

 仕方ないので部屋のドアを片っ端から開けていく。

 どこいったのかな。

 一階にはいないようなので、二階に上がり、階段の前のドアを開ける。

 大きな机の上に沢山の本や紙、そして人の頭ほどの水晶型の記録装置が置いてあった。

 その水晶の前にディゼオは座っていて展開された画面を難しい顔で睨んでいる。


「ディゼオ、なんかわかった?」


 びっくりするくらい机の上に綺麗に並べられた紙を見ながら思う。

 ディゼオって意外と綺麗好きだよね。


「まだ全部は読めてないが、いい情報が結構あるぞ」


「へえ、僕も手伝おうか?」


「ニファンはこんな地味な作業より魔法を頑張ってくれ。お前の魔法次第で魔宝石を取り戻せるかが決まるし、俺たちの正体もバレるんだ。それに戦術祭のやつの魔法道具作成もあるだろ」


 まあその通りだ。

 僕としても魔法の研究や開発のほうが得意だし。


「じゃあ任せるよ」


「ああ、あとで情報をまとめて重要なことを教える。あ、ニファンは資料をどこまで読んだ? そこは省くぞ」


「読んでないよ。昨日はマーヤがつきまとってきて大変だったから。……というか、マーヤって勇者なんだな」


「なんだ、勇者ってバレたのか。ニファンには教えるなって陛下に言われてたのに」


「サーチならいいんじゃない? 同一人物って知らないだろうし」


「まあそうか。じゃあ知らないふりを上手くしてくれよ?」


「大丈夫だ。マーヤのスキルについてはサーチじゃなく僕も知っている。もしものときは、そこから推測マーヤが勇者だという結論に至ったってことにすればいい」


「知ってるってこと前提なのか……」


「いや、ちゃんと知らないふりもやるよ。……出来るだけ」


「ちゃんとやれよ」


 わかってる。

 ちゃんとしないと僕たちが罪を犯してるってばれる。

 ばれてもいいけど、それはかなりキツイ生活になるだろう。

 甘いもの食べられなくなるから出来れば避けたい。


「とりあえずニファンは魔法道具の開発を最優先で頼む」


「ありがたいね。僕の部屋にいるから何かあったら来てくれ」


「わかった」


 僕は面倒なことをディゼオに任せて、僕は学園で授業をするために準備をする。

 さて、今日も教師とっして頑張ろう。


~~~~


 今日の学園の仕事は終わり、三時くらいに家に帰ってきた。

 そのあとは、いつも通り魔法関係の開発や改造をしていたが、いつの間にか部屋が暗くなっている。

 部屋の天井に取り付けた魔法道具を呪文を唱えることで起動させ明かりをつける。

 もう夕方を過ぎてしまった。

 幻術魔法のアイデアはまだまだあるから続けていたい。

 でもディゼオがいるのに夕飯を食べなかったら怒られるので、食事にしよう。

 ディゼオのいる部屋に行ってみると、ディゼオもまだ作業をしていた。


「ディゼオ、夕飯なに食う?」


「あー、何でもいいぞ。もうちょっとで終わるから待っててくれ」


 ディゼオが本にペンを走らせてるのを眺めながらしばらく待つ。

 ちらちらと記録の魔法道具を見ているようだ。

 しばらくしてディゼオがペンを止めて伸びをする。


「ニファン、これが今回、手に入れた情報だ」


 今書いていた本を差し出してくるディゼオ。

 ぱらぱらと軽く目を通す。

 なかなかの情報が手に入ったようだな。

 あとでしっかり読んでおこう。


「飯はどうするんだ? 今から作るのか?」


「どうしたい? 俺はどっちでもいい」


 飯の相談をしながら一階へ行くと、肉の焼けるいい匂いがしている。

 ユリアが料理でもしているのだろうか?

 リビングのドアを開ける。

 中央あるテーブルに豪華な料理の数々が置いてあった。

 ここはいつから高級レストランになったのだろう。

 ユリアはキッチンで肉を焼いているようで、僕たちがきたことに気がついていないようだ。


「ユリア、どうしたんだこれ」


 声をかけるとユリアは顔を上げてにっこりと笑みを浮かべる。


「お祝いよ。ケルトの魔力が帰ってきたんだから、めでたいことでしょ?」


「ケルトは神聖ミアナッシーク王国に帰ったぞ」


「知ってる。でもケルトの魔力が帰ってきたのは、ニファンの仕事のおかげなんだから、仕事の成功祝いってことで」


「……そういえば、怪盗の仕事で目的達成って初めてかもな」


「そうなの?」


「盗みは成功しても、目的は達成出来てなかったし」


「目的は宝石を盗むんじゃなくて、魔力を取り返すことだっけ? 初の成功で尚更めでたいじゃない」


 そうだな。

 ユリアの言う通りだ。

 あと、めでたいことはもう一つある。


「ユリアという協力者が出来た歓迎会もついでにやろう」


 僕は満面の笑みを浮かべてユリアにいう。

 ユリアはぽかんとして料理をする手を止めた。


「肉が焦げるぞ」


「あっ!」


 慌てて手を動かすユリア。

 顔が若干赤いのは、火の前にずっといたからだろうか?

 彼女から目を逸らして、人の二の腕ほどあるブロック肉を見つめる。


「ニファン……嬉しいけどついでっていうのは余計なのよね」


「仕事の成功祝いなんだろ? ついでじゃん」


「そうだけど、気持ちってものがあるの! そんなんじゃ、女の子をドキドキさせることは出来ないわよ! 魔法大好き馬鹿なニファンに言っても無駄だろうけど」


「ユリアが女の子? 性悪女の間違いだろ」


「なにそれ酷い! そんなこと言うなら食べさせないわよ?」


「別に飯は食わなくても問題ない」


「デザートもあったのに残念ね」


 デザートだと?

 ユリアは冷蔵庫を開けてにっこりと笑う。

 そこにはキラキラと輝くフルーツポンチ。

 なにそれ食べたい。


「ユリア、あのフルーツポンチよりもキラキラしている美しいものをあげよう、といったらどうする?」


「魔宝石ってこと? でもニファンは私に魔宝石をくれる約束じゃない。そんなのダメ」


「確かに盗んだものはユリアにあげるけど、ユリアに魔宝石を買ってあげるとはいっていないだろ?」


「私が欲しいって言ったら、買ってくれるの?」


「ああ、一つだけだぞ」


「いくらでもいいのよね?」


「良いけど、無理矢理買い叩くのはなしで」


「……仕方ないから、食べてもいいわよ! ただし、ちゃんと紙に私に魔宝石買うって書いて!」


「僕は約束を破るような男じゃないぞ」


「泥棒は嘘つきよ。でもあなたは予告通りに盗む怪盗だから、紙に書けば絶対でしょ」


「はいはい。わかったよ」


 羊皮紙を取り出して、さらさらっと書く。

 ニファン・ヴィオラン・アスタールはユリア・エイレーネに魔宝石を一つ買う。


「ほら、しっかり受け取れ」


「わーい! じゃあ夕飯にしましょう!」


 その日はユリアと軽い悪態を吐きあいながら、楽しく過ごした。


 そのあとディゼオに渡された資料を見た。

 魔法組織デジメーションがどんな悪事をしていたかが、多く書かれている。

 ほかにも魔力を奪うための魔法道具なんてのもあるようで、それを渡して奪わせているらしい。

 やっぱりディゼオは優秀だな。

 ただ一つ気になったのは、なぜか法王の情報が書かれていなかったこと。

 かなり大事なことなのに、ディゼオは見落としたのだろうか?

 少し引っかかりはするものの、あとでディゼオが気づけば教えてくれるだろうと、楽観的に考えた。

次話は11月15日に投稿予定です。



2020/1/6 追記

確認したところ、ちょっと物語の日にちが変なことになっていたため修正しました。

(学園の仕事がある日なのに、休日として書いてしまったところなど)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ