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宝石店の店主

 しばらくたったころ、神聖ミアナッシーク王国で無事ケルトの魔宝石をみつけだし、時々魔宝石がある貴族の建物から動いてないか確認しながらのんびりと交渉の日まで過ごしていたわけだが、はてさて相手はどうでるだろうか。

 今日は学校も休みなので朝の五時に例の宝石店の前にいた。

 といっても宝石店はそんな朝早くに店を開けるわけではないようだ。

 でもケルトの魔宝石を持っている貴族がいつ来るかわからない以上、僕はまるごと一日宝石店に居座る。

 ついでに仕事相手として、ここの店主と話し合うのも面白いだろう。

 読書しながら店が開くまで外で待つとしよう。

 店の扉に背を預け、自分で作った魔法書を読んでみると、なかなか楽しくてここを改良したほうがいいかもと、いろいろな書き込みをしてしまう。

 改良は机があるところで今度やる。

 しばらく夢中になっていると、突然肩を揺すられた。

 何だと思って顔を上げたら、この前の宝石店の人ではないか。


「あなた、人の店の前で何してるんですか!」


「いや、貴族と交渉するために来ただけ。でも店がまだ始まってなくて暇つぶしに読書を」


「こんな朝早くからご苦労様です。とても邪魔ですが」


「すまんすまん。でも貴族サマがいつ来るかわからないって言ってたじゃん? 朝早くに貴族がきて、それとすれ違いで会うことが出来ませんでした、なんて悲しいことしたくなかったんだ」


「そうですか……」


 僕が扉から離れると、お店の人は扉の鍵を開けて中に入ったので、僕も続いて入った。

 どうせ暇だし、お店の人の手伝いでもやるかな。


「……ところでその本、魔法書ですね。ご職業は魔法使いで?」


 お店の人が聞いてくる。


「まあね。戦うほうの魔法使いじゃなくて、魔法書を描いたりするほうの魔法使いだけど」


「魔宝石が必要なのですか?」


「魔法道具職人も兼業でやってるんだよね」


「多才なのですね」


「僕は魔法に関してはとても素晴らしい才能を宿しているからな」


「はあ、そうですか」


 お店のカーテンを開けたり、魔法で掃除を手伝ったりしながら話を続ける。


「あなたはここの店主なのか?」


「そうですよ。宝石をメインで販売しておりますが、なかなか良い魔宝石と魔法道具もそろっております。使い勝手が良い道具しか取り扱っておりませんので、魔法道具専門店のように掘り出し物があったりという楽しみはありませんが」


「へえ」


「兼業で魔法道具職人をしていらっしゃるあなたから見て、ここの魔法道具はどうですか?」


「んー、品質も便利さもまあまあってところ? 有名な人が作ったわけではないけど、それなりの腕の職人が作ったまあまあ良い道具って感じ。一般人が結婚指輪として使う程度なら、このくらいで十分だろう。中級くらいの冒険者が使うんだったら物足りない性能かも知れないな」


「なるほど。参考になります」


「僕の魔法道具も売ろうか? ちょっとだけ高く売れるかもよ?」


「それは嬉しいですね。魔宝石と物々交換はどうです?」


「それいいね。金より魔宝石ほうがありがたい」


「あなたが来るので魔宝石は沢山入荷したんです。買ってくださらないと困りますよ」


 店の開店準備が終わったみたいだ。

 でも店主は早速魔宝石を詰め込んだ箱を僕に見せる。

 三箱分持ってきたあと、魔法で鍵のかかっている箱も持ってくる。

 どうやら最後の箱が一番高価な魔宝石が入っているのだろう。

 僕も売れるものを適当に出しておく。

 基本魔法道具を売りに出す予定だが、盗んでいないほうの魔宝石も袋のなかに入れておいた。


「アクセサリーに見える魔法道具が良いと思って、それ系を沢山持ってきた。好きなのを選んで魔宝石と交換していいから」


「……ぼったくるかも知れませんよ?」


「ぼったくれば? 魔宝石くれるならちょっとした損くらいどうってことない」


「そんな無駄遣いして大丈夫ですか?」


「大丈夫。金ならいくらでも稼げる」


「そうですか……。では魔法道具の説明をお願い出来ますか?」


「任せろ。まずこの指輪だが、一般向けに作ったもので攻撃を自動で弾く結界を搭載してある。使い切りではなく何度も使えるし、魔宝石に魔力を込めれば半永久的に使えるだろう。こっちのブレスレットだが――」


 それぞれを魔法素人でもわかってもらえるように説明していく。


「どうだ? 素晴らしい魔法道具の数々だと思わないか?」


「確かに私が取り扱っている魔法道具とは全く違います。自動発動とかなんですか? 発動のはやさも凄いですし……本当にあなたが作ったんですか?」


「そうだ。素晴らしいだろう?」


「これいくらで売れば良いんでしょうか……」


「さあ? 色々相場を調べてみればいいんじゃない?」


「そうですね。そうします」


「一つ助言しておくと、熱心に魔法を学ぶ人か、魔法道具をよく知る人にこの魔法道具どう思うって聞いたほうがいいと思う。勿論ある程度信用できる人にね」


「はあ。わかりました」


 魔宝石と買い取ってくれなかった魔宝石と魔法道具はポケットにしまっておこう。

 しばらくはお店の手伝いをしながら親交を深める。

 そうしたほうが、僕の肩を持ってくれやすいだろう。

 会話でわかったことは、店長の彼の名前はカエルスで、六歳になったばかりの子供がいるらしいということ。

 その子は魔法に興味があるようで、それがきっかけで宝石だけではなく魔法道具も売りに出すようになったんだとか。


「将来は魔法使いでしょうかね」


「魔法使いといっても沢山あるから、本当にお子さんが魔法使いになる気ならしっかり調べたほうがいいよ。酷いのだと、魔法で強化した体一つで魔物の群れに突っ込むアホな魔法使いがいるから」


 五の魔法使いのうちの四、魔導師のジークレインがそのアホなわけだが。

 なんで肉弾戦するあいつが僕より上なわけ?

 僕のほうが優秀なのだからジークレインは順位さげて、僕は順位をあげてくれてもいいじゃん。


「魔法使いというと後衛職というイメージなのですが……」


「後衛職だよ。前衛なんて少数派」


「ですよね」


「でも五の魔法使いの一人は肉弾戦する奴だから憧れる奴らはいそうだな」


「……それはありえますね。ちなみにニファンさんは前衛は出来ませんよね?」


「んー、僕は少し特殊で、親の方針が剣士だったから、僕は剣が扱える。だから魔剣士として前衛に出ることもありうるかな。やりたくないけど」


「なるほど」


「でも魔法使いといえば後衛だよ。僕も戦うとしたら出来れば後ろのほうから魔法を放っていたい。本当は戦いもせずに部屋のなかで魔法を作っていたいけど」


「研究熱心なのですね」


「魔法は素晴らしいから僕を魅了してやまないんだ」


 色々な魔法のことについて話しているとお客さんがやってきた。

 例の貴族ではないようだが、まあ気長にな。

 店主のカエルスが対応しているので、この店にあった魔法道具の点検でもしておこう。

次話は5月23日投稿予定です

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