表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/55

神聖ミアナッシーク王国での恩人

 ふう。これで魔法陣は完成だ。

 あとはケルトの魔力に合わせた改良をすれば完璧だ。


「ケルト。こっちに来い」


 楽しそうに女子たちと遊んでいたケルトを呼ぶ。


「は、はいです!」


 慌てたように小走りで僕のもとに来た。


「とりあえず最初は魔法の練習になる。この魔法陣に魔力を流して魔法を発動させようか」


「神様に祈らなくていいですか?」


「そういうのはどうでもいい。最優先は魔宝石の発見だ。この魔法は術者の魔力と同じ魔力を探知する魔法。最初は小さな範囲で探そうか。どんどん捜索範囲を広げていきたいけど、辛くなったら休んでくれ」


「わかったです」


 ケルトを魔法陣の真ん中に立たせて、魔法の発動をさせる。

 魔法陣が淡い青色に輝きだし、とても美しく神秘的な光景が浮かび上がった。

 だが、すぐにもとの魔物の血の色に戻ってしまう。

 そしてケルトはその場に座り込んだ。


「この魔法なんなのです?」


 ケルトの顔色が悪い。

 仕方ない。

 休憩だな。


「これは探知や探索の魔法だ。情報量が多いから術者に負担がかかるけど、探し物には打ってつけだろう?」


 一応負担軽減の陣も組み込んであるけど、それでも慣れないとキツいものがあるよね。

 ポケットから治癒効果のついてるベッドを取り出して、ケルトそこに寝かせてあげた。


「できればこの国丸々探索範囲に出来るくらいにはなってもらいたい。僕は同時進行で別のやり方でも探すことになるから、一人で出来るようになって。魔法陣はあげるからさ」


「が、頑張るです……」


 さて。ケルトが休憩してる間に魔法陣の改良だな。

 今みた感じだとケルトの魔力が魔法陣から少し漏れ出してた。

 僕専用に調節してたからもっとケルトに合わせないと。

 少ない魔力を無駄使いしないように。


 血を吸い取る魔法道具で一部の文字を消して、もう一度書き直していく。

 ケルトは治癒魔法が得意らしいからそれに近い形の属性で構成し直してみた。

 これでロスも少なくなるはず。

 もう一度ケルトに使ってもらって、それで大丈夫そうならケルトに魔法陣の使い方の指導。

 そのあと僕は精霊とケルトの魔力を探すための魔法を使って頑張ろうか。


「私も別のルートで二人の魔宝石を探してみます。ヴィオラン、ケルトをしばらくよろしくお願いしますね」


 え、それは困るんだが。

 僕は僕でやりたいことがあるし。

 ……仕方ない。ここは相棒に任せよう。


「ディゼオ! ケルト用の魔法陣完成したらケルトのことよろしく!」


 ディゼオはギロリと僕を睨みつける。

 でも僕が子守りを出来るわけがないと悟ったのか、ため息をついて引き受けてくれた。


「ケルトのことは俺が面倒みてやるが、あまり無茶はするんじゃないぞ」


「問題ないって」


「夢中になりすぎて睡眠を削るのはマジでしないでくれ。あの時みたいにぶっ倒れられたら困る」


「あー……」


 教師始めたばかりのころ、魔法の開発を依頼されたことがある。

 でも魔法の開発が思った以上に楽しくなってしまって、寝ずに何日もいたら授業中にぶっ倒れた。

 魔法で睡魔を誤魔化したりして、一週間くらい徹夜してたかな。

 あれ以来ディゼオに厳しく監視されてるから徹夜は二日までにして、出来るだけ仮眠を取るようにしてる。

 今回のケルトの件も僕の魔法の成果が発揮されるものだから夢中になるだろう。

 それを危惧してるんだろうなぁ。


「……気をつける」


「もしも徹夜なんてしたらお前に貰った魔法道具で強制的に眠らせるからそのつもりで」


「はーい」


 ディゼオは心配しすぎだ。

 徹夜しても一週間は耐えられるんだから、少しくらい寝なくても大丈夫だって。


「私も魔宝石を探しに行ってきます」


 僕たちの会話を聞いていたマーヤが挙手していった。

 探すっていってもどうやって探す気だろう。

 まさか、徒歩で人に聞きまくって探すとかじゃないよな?


「マーヤ、何か考えがあるのか?」


 一応聞いてみる。

 マーヤは一瞬考え込んだが、すぐに僕のほうをみてにっこりと笑う。


「まだ魔法は使えませんが、やれることはあります。私は少しだけ特別なようですから」


 確かに特別だ。

 僕から見ても、マジナーサやエリックたちから見ても特別な存在なのは認める。

 でも何が出来るんだ?

 研究対象として物凄く興味があるのだが……。


「先生にはまだ教えませんよ? ……実験の材料になりそうで怖いですし」


 実験ってそんな怖いものじゃないのに。

 ちょっと魔力を弄ったり、出来るか出来ないか本人に試して貰ったりするだけだ。

 抵抗したら怖いことするかも知れないが、抵抗しなければなんの問題もない。


「今朝のダンジョン行く条件に実験させてくれって言ったらどうする?」


「うっ……実験されますよ。痛いこと以外なら!」


「本当だな?」


「や、約束します」


 よしっ!

 今の言葉、しっかりと聞いたからな!

 どんなことしようか?

 やっぱり最初に疑問に思ったことがいいか?

 いやでも……うーん、悩む!

 あとでじっくり考えようか。



 マーヤたちが魔宝石捜索にどこかへ向かい、僕の家には僕とディゼオとケルトしかいなくなった。


「ケルト、調子はどうだ?」


「……また魔法使うのです?」


「使ってくれないと困る。あまり無理してもらっても困るが」


「……頑張るです」


 それから何度か魔法を使ってもらい、高性能なケルト専用魔法陣が出来上がった。

 これなら問題なく使えるだろう。

 あとはケルト次第だ。


「しばらくは魔法を使う練習だ。何かあったらディゼオに言ってくれ」


「ヴィオランお兄ちゃんは一緒じゃないですか?」


「ケルトより僕のほうが探すことに優れているから、少しでも早く見つかるように頑張るんだよ」


「わかったです。わたしも頑張るです!」


 ケルトのやる気にあふれる言葉が聞けたので、後のことはディゼオに任せる。

 僕は転移の魔法陣がある部屋へと移動した。


 防犯を任せている素晴らしい僕の魔法道具たちを一時的に解除して部屋の中に入る。

 そして転移の魔法陣を起動させて、目的地を設定した。

 場所は神聖ミアナッシーク王国。

 ケルトの魔法石が奪われた場所が、その国だ。

 ケルトとマジナーサ、スティナが育ったその国は、ミアナッシーク教を国教としている。

 本当ならこの国には行きたくなかったが魔宝石のためだ。

 あー、でも行きたくないな。

 あんなヤツが法王の国なんて。

 いや、でもこれは僕のためでもある。

 しっかりとケルトの魔宝石を見つけて、僕の魔宝石も頑張れば見つけられると証明し、更に魔力を奪った黒幕についての情報も手に入れなければならない。

 どうせ今日はあんなヤツに会うことはないんだ。

 法王だって僕のことは忘れているだろうし。

 自分にそう言い聞かせ深呼吸してから、神聖ミアナッシーク王国へと転移するために画面のボタンを押した。



〜〜〜〜



 神聖ミアナッシーク王国のとある街の大通りに面した酒場。

 消して大きくはないが、知る人ぞ知る名店と言えるほどの酒場である。

 その店の二階。

 店長の住居であるそこには、誰も入ることが出来ない部屋が一つあった。

 そこが僕の隠れ家の一つ。

 といっても、怪盗では使えない魔法陣ではあるが。

 鍵を開けて部屋を出て、防犯の魔法道具をしっかり起動させてドアが開かないのを確認してから、階段を降りる。

 そして一階の酒場の厨房までやってきた。


「お客様? こちらは関係者以外立ち入り禁止なのですが……」


 この店の新人なのか、困った顔をしながら僕にそういっているエプロン姿の女性。

 どうやって厨房に入ったのだと言いたげだな。

 教えるわけにはいかないけども。


「店長いる?」


 とりあえず店長に会いたい。


「あの……どちら様でしょうか?」


「この店の上の階の一部所有者」


「へ?」


 新人さんみたいだし、 わからなくて当然かな。

 さっさと店長を呼ぼう。


「リエーナ! 久しぶりに会いに来たよー!」


 大声で呼んでみると店長のリエーナが慌てたように早足で来てくれた。

 そんなに急がなくても僕は逃げないのに。

 そう思っていると、リエーナは僕の胸ぐらを強く掴んで睨みつけてきた。


「なんでいる? 何しにきた?」


 つり目気味の女性が物凄く迷惑そうにしながら凄んでくる。

 酷いなぁ。

 久しぶりに会えたのに。


「リエーナに会いに来たのさ」


「気障な台詞はいらない。あんたが魔法以外で飛んでくるなんてありえないわ」


 まあその通りだ。


「ちょっと用があってきただけだよ」


「飛んでくるっていう手紙くらい出しなさい」


「急用だったんだよ。それと今日からちょくちょくこっち来るから」


「正式に入国してからにしてほしいんだが……」


「バレなきゃ大丈夫。バレてもなんとかなるって」


「あんたはそうでも私はどうだか」


「用が終わればしばらくは来ないよ」


「そうしてほしいね」


 僕をさっさと追い払いたい感じのリエーナだったが、深くため息を吐いてからトゲトゲした雰囲気をなくし、真剣な眼差しで見つめてくる。

 胸ぐらは離してくれないが。


「ニファン……元気そうでよかったわ」


 そう言ってリエーナは、満面の笑みを浮かべてくれた。

 リエーナは滅多に笑わないのに、会って早々これはやめてほしい。

 僕が認めるほど美人なんだから。

 ちょっと照れくさくなって僕はそっぽを向いた。

 ……まだ胸ぐら掴まれてるんだけど、いい加減離して?

 でもそれをいうと怒りそうなので、別のことを言おうか。


「僕は天才だから体調管理もしっかりしてるし、元気なのは当たり前さ」


 いつものように、でも少し早口になりながらいう。


「徹夜してない?」


「徹夜くらい問題ない」


「全く……。会った頃の少年と同一人物とは思えないよ」


 ……まあそうだね。

 家を出てすぐにこの国に来た僕は、全てに絶望していたから、自信満々な今の僕はリエーナにとって凄い変わっているように見えるのだろう。

 絶望の中リエーナに会って、彼女とその家族に世話をしてもらった。

 あの時は本当に助かった。

 魔法学園の存在もリエーナたちから教わったから、今の僕は教師をしているといっても過言じゃないわけだし。

 本当にリエーナには感謝しているよ。

次話は4月18日投稿予定です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ