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協力依頼と挑戦状

 学生時代に何度か訪れたエリックの自室へマーヤを送り届けたあと、僕は来た時と同じように転移の魔法陣に乗り、家まで帰ってきた。

 さて。やるべきことをやろう。

 全ての魔法道具の改良を早急に開始しなければ。

 まずはこの転移の魔法陣から改良を始める。

 この魔法陣をマーヤに奪われでもしたら大変だ。

 マーヤがそんなことする子には見えないけど、念のため対策はしておいたほうがいい。

 それに間違ってマーヤがこの陣に乗って、この魔法陣で万が一にでも誤作動を起こし、怪盗サーチの基地へ飛んでしまったら、僕が怪盗をやっているとバレる。

 学園の研究室の防犯魔法道具も優先的に改良すべきか。

 そこから繋がる基地への道の防犯も強化。

 あと異空間収納の魔法道具もだな。

 どう強化すべきか?

 昔ボツにした指紋の読み取り機能の追加と、研究中の魔力操作による暗証番号、又は記号の入力で起動停止させる機能も追加でつけるか。

 筆と魔物の血液を取り出し、転移の魔法陣に使われた血液を魔法で消して、魔法文字を描き加えた。

 その作業を続けていく。

 だんだん楽しくなってきて、途中で見つけた欠陥を直したり、より良く改良したりと色々いじった。

 ある程度改良を終えると改良した魔法陣を魔法書に記録し、各国に繋がっている転移の魔法陣を改良。

 でも全ての魔法陣に僕が手を加えるのは面倒だから、転移の魔法道具と繋がる全ての魔法陣を血液と魔力を使った魔法で改良点を複写。それを転移させて各国の転移魔法陣の改良点を反映させた。

 とりあえずはこれでいい。

 この部屋の防犯対策の魔法道具の改良もしたいが、それより先に怪盗基地の防犯対策強化が必要だ。

 あれやこれやと改良を進めていく。

 異空間収納の魔法道具の改良もした。



〜〜〜〜



 朝になってしまった。

 楽しくなって、つい寝ることを忘れていた。

 転移の魔法道具の改良と怪盗基地の防犯強化。あと異空間収納の魔法道具の改良も出来たから、しばらくは怪盗だと知られる心配もないだろう。

 少し早いが学校へ向かおうか。

 あっ。いや。

 マーヤが家に来るかも知れないのか。

 仕方ない。

 家の外で待っていよう。


 家の門の前に出てから、僕はとある魔法道具を使う。

 結界つき簡易ベッドと目覚まし時計だ。

 マーヤが来るまで家の前で寝る。

 マーヤが来なくても目覚まし時計で起きられるから、授業には間に合う。

 では寝よう。

 僕は素晴らしい魔法道具に包まれて、幸せな気分で眠った。



〜〜〜〜



「〜〜せっ! 先生! 起きてください!」


 マーヤの声が聞こえた。

 目を擦って声のするほうへ顔を向けると、今にも泣きそうなほど心配顔をしているマーヤがいる。

 そんな顔して一体どうしたんだ?


「おはよう。マーヤ」


 とりあえず起き上がってマーヤに挨拶しておく。


「おはようじゃないですよ! どうして外で寝てるんですか!」


「マーヤが来るのを待っていたんだ」


「待つなら起きて! 寝るなら家で寝てください!」


 そんな怒鳴らなくてもいいじゃないか。

 ベッドと目覚まし時計をポケットの中に片付ける。

 僕の様子を見ていたマーヤが深いため息をついている。


「ここ歩道ですよ……」


「家の中だと授業時間までに起きられなくなりそうだったからな。外ならある程度の緊張感のなかで寝れるし、すぐに起きられていいだろう?」


「いつからここに? 昨夜からずっとここで?」


「いいや、昨夜は寝るのを忘れてたから、今朝ここで寝た」


「徹夜ですか?」


「魔法道具を作ったり改良したりと夢中になってしまってね」


「今日の授業、大丈夫ですか?」


「午前中は寝てても問題ない」


「授業をサボる気ですか!?」


「生徒たちは魔法道具を作るだけだし、僕が寝てても勝手にやるだろう」


「……」


「マーヤは引き続き魔力操作の練習だな」


「……先生は自由ですね」


 僕は魔法使いの頂点に立つ男だ。

 誰にも縛られることはない。

 自分のやりたいように生きていく。

 そう決めている。



 授業中、生徒たちに魔法道具を作らせておいて僕は眠った。

 でも生徒から質問があるときは僕を起こすのだけど。

 僕が授業中に寝ていたと生徒たちが学園長にでもチクれば、僕はディゼオにこっぴどく叱られるだろうな。

 そのときはマーヤの魔力について説明すれば、今回は見逃してくれるだろう。

 次やったら冒険者組合の僕を狙っている連中に僕が怪盗だってバラしそうだけど。

 しばらく、教えては寝てを繰り返していると、授業が終わった。

 欠伸と伸びをしながら立ち上がって号令をかける。

 昼になるまでは研究室で寝ていようか。

 目を擦りながらマーヤに声をかけて研究室へ向かう。

 教室を出たところでディゼオに捕まったが。

 生徒の誰かがチクったな?

 あらかじめ考えていたことを言わなければならないか。


「やあ、学園長」


 とりあえず初めは挨拶だ。


「おう。ニファン。とりあえず研究室で話せるか?」


 ん?

 このディゼオの感じは怪盗についてか、ほかの秘密事項についてだな。

 なんだ。叱られるんじゃないのか。


「国王からの依頼でマーヤに魔法を教えなくちゃならないし、極秘のことなら僕の家でよろしく」


「じゃあとりあえず冒険者組合からの手紙だ。一枚はニファン当て。もう一枚は極秘だから誰にも見られないように」


「わかった」


「あとでお前ん家に行くから時間あけとけよ?」


「はーい」


 手紙を二枚受け取って差出人を確認しておく。

 一枚目は僕宛ての冒険者組合の怪盗サーチ対策部隊からだった。

 これはいつものだろう。

 五の魔法使いは魔法に長けているから怪盗サーチを捕まえる協力をしてほしいってやつ。

 毎回断ってるし、今回も断る。

 次も冒険者組合怪盗サーチ対策部隊からだな。

 宛先は……怪盗サーチ!?

 慌ててサーチの名前をもう一つの手紙で隠す。

 マーヤをちらりと見てみたが、別の生徒とお話中だった。

 あぶねー。

 ディゼオめ!

 サーチの名前くらい隠しておけよ!

 はあ、とため息を吐いてポケットに手紙をしまう。

 ……手紙はあとで見よう。


 マーヤに声をかけて研究室へ向かう。

 怪盗サーチ宛ての手紙は多分、挑戦状だろう。

 こういう魔宝石あるから盗めるもんなら盗んでみろって感じ。

 わざわざ魔宝石を探しだしてくれたのだから、こっちの探す手間が省ける。

 その魔宝石が僕のものなら最高だけど、そうでなくても僕のものではないとわかるのだから別の魔宝石を探せばいい。

 挑戦状は初めてじゃないし、ちゃんと準備していけば問題ないし。

 ……ディゼオがこの手紙をどうやって入手したかが気になるが。

 前回と同じで冒険者組合が怪盗サーチ宛ての手紙を道にばら撒いたか?

 まああとで聞けばいいや。



 研究室についたので、引き続きマーヤの魔力操作の練習をする。

 といっても僕がやれることは少ない。

 マーヤの頑張り次第だしな。

 それ以外では……全て実験になってしまうだろう。


「マーヤを使って実験していいか?」


 もう一度聞いてみた。

 そしたらマーヤは半目で僕を睨んでくる。


「嫌です。先生は魔法が絡んだら危ないので、絶対嫌です!」


 やっぱりそうか……。

 マーヤの魔力操作の習得が早くなるかもしれない方法を思いついたのに。

 それが可能か実験したかった。

 もう少しマーヤの心を開いてからじゃないとダメだな。

 会ってから三日目だし、仕方ないっちゃ仕方ない。

 マーヤを殺すような実験はしないから安心してほしいなぁ。

 まあゆっくり行こう。



〜〜〜〜



 午後の授業も終わり、マーヤとも別れて家に帰ってきた。

 ディゼオが来るまでは家の防犯装置の改良をしておこうか。

 庭に出て塀や土の中に埋め込んである魔法道具に書いた魔法陣を改良したりしていると、そよ風とともにチリチリという鈴の音が聞こえた。

 これは僕の家のノッカーの役割をしている魔法道具の音だ。

 この家の敷地全体に鈴の音が風に乗って届くようになっている。

 ディゼオが来たのだろうか?

 一度改良を中断して門まで歩いていく。

 やはりディゼオだった。


「ニファン。来たぞ」


 ディゼオを招き入れ門を閉めたあと、改良途中の魔法道具のもとまで戻ってくる。

 ディゼオは不思議そうについてきていた。

 僕はディゼオを無視して作業を続ける。

 しばらくして改良を終えた。

 さて。次はディゼオとお話だな。


「待たせたな。ディゼオ」


「それはいいが何してたんだ?」


「魔法道具の改良。下手したら僕の防犯装置を破ってしまう人物が現れたから急いで改良してるんだ」


「はあ!? ニファンの魔法道具をか!」


「そのせいで今日は寝不足だ。金ぴか関係のところは昨日の夜に防犯装置の改良は済ませてあるから心配するな」


「そうか……。ちなみにそれは誰なんだ?」


「マーヤ・レイザンガリフ・カワシロ。国王からの依頼で魔法を教えている少女」


「あの子か」


「マーヤの魔力は僕の魔力と同じ波長なんだ」


「そんなゼロに等しい可能性を引き当てるとは流石というかなんというか……。運もお前に味方してんな」


「それだったら魔宝石を奪われたりしない」


「ニファンは親に恵まれなかっただけのこと」


「魔法使いの家系に産んでくれたことだけ感謝してるよ」


「お前らしい。で、渡した手紙は読んだか?」


 手紙?

 あ、そういえば、僕宛てとサーチ宛ての手紙をディゼオから渡されたな!


「完全に忘れてた」


「まーた夢中になってたな? 手紙くらい忘れずに読めよ」


「ごめん」


 ポケットから手紙を取り出して封を切る。

 僕宛てのものは、やはり怪盗サーチを捕まえる協力をしてくれというものだった。

 これは無視でいい。

 で、怪盗サーチ宛ては?

 手紙を読んでみるとやはり挑戦状だった。

 一週間後の三日月の夜。ヒロマインツ王国の美術館に海の破片と呼ばれる美しい魔宝石を展示するそうだ。

 それを奪ってみせろってこと?

 言われなくても奪うけど、僕の魔宝石じゃなかったら嫌だな。

 まあ今まで盗んだ魔宝石も僕のものじゃないから今更ではあるが。

 これからディゼオといろいろ相談するのだし、とりあえずお茶でも準備しようか。

次話は1月24日投稿予定です

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