Vol 5DOLL
DOLL
深紅の機体の下腹部から出てきたパイロット
その人影はコクピットから出てくると
すぐさまコクピットに戻り
通信回線を【指令室】にあわせ一言
「あぁ〜クソッ、超疲れた。クレアお茶持ってきて」
するとモニターの左下に人の顔が映った
『何度も言いましたけど、私にそういう事は言わないで下さい』
モニターの向こうの顔は
パイロットの顔を見ずにずっと書類を見ていた
「あとついでに客人だよ」
パイロットは横から小さな箱を取り出して
中の飴を一度に5つ頬張っていた
「客人?では客室を用意しておきましょう」
「いや、医務室の方がいいかも」
「?」
パイロットがそう言った理由はメインモニターにあった
メインモニターに映っていたのは
白目をむいて倒れている清次の姿だった
1時間後 医務室
清次は純白のベッドの中で目を覚ました
「・・・・・・」
あまりのことに声が出ない
とりあえずここから逃げ出そうかと思い
ドアの前まで来た瞬間
ガチャ ガン!
「あ」
「あ」
ドアが突然開き
清次は鼻血を出して倒れた
3分後
「いやぁ〜ゴメンね」
先ほどパイロットとモニター越しに話していた女性が笑顔で謝った
ちなみにドアを開けたのはコイツ
「あんた誰?ここどこ?」
清次は半ば不機嫌な表情で尋ねた
「私はクレア、クレア・リジュン。そしてここは・・・」
「あんたの居た時代より700年後の未来」
今だヘルメット被り続けている
深紅の機体のパイロットがセリフを奪うように言った
「あ、俺桐生ってんだ宜しく」
桐生は短くKYな自己紹介をした
「700年・・・?・・・未来・・・・?」
清次は突然の事に困惑していた
そしてクレアは明らかに
「言っちゃったよ」と言う顔をしていた
クレアはこの事実を聞くと立ち直れないかもしれない
そう思って言わなかったのだが
「未来!?マジで!?スゲーじゃん!!」
心配する必要ゼロ
清次はこの状況でも超前向き思考だった
普通の人間の思考回路
未来に来た→元の時代に返れない!?→絶望→自殺
清次の思考回路
未来に来た→普通の人間よりスゴイ→ついてる→俺最強
「それと・・・ちょっと来ていただけます?」
クレアはそう言って清次の腕を引っ張った
清次は拒否するつもりだったが
クレアの腕を引く力に体を止めることができなかった
そして医務室から歩くこと約500m
通路を歩いているとクレアが喋りだした
「あなたはあの・・・深紅の機体が見えた?」
「?ああ、見たよ」
それを聞くとクレアは少し喜んだように
言葉を弾ませた
「あれは『DOLL』と呼ばれる物で2年前南極で見つかった5体の内の1体」
5体の内の1体
見たところあれは戦争にも使えそうだ
それが5体あればどうなることか
「そしてあれを動かせるのは特定の人間だけ」
何だかちょっとずつオチが読めてくる気がする
「その内4人はこちらで捜し当てたの彼女もその一人」
(桐生もパイロットなのか・・・・・)
「パイロットには全員共通点があってね」
クレアは巨大な格納庫の端にある
パスワード入力機にカードキーを通し
数字を入力していった
(16回押したから16桁か・・・・・)
清次はそんなことを考えながら聞いていた
そして「GALVAREN」と書かれた巨大なゲートが開きだした
「皆右目が機体色と同じオッドアイになるの」
(じゃぁ大丈夫だ、俺両目とも黒目だもん)
清次は自分の顔が移っているゲートをみて安心した
しかしその考えは1秒で吹き飛んだ
「これがNo-001ガルバレン」
清次の目の先にいたのは
漆黒の機体
そして清次の右目は
吸込まれる様な
漆黒