Vol 3 門の向こうへ
門の向こうへ
教室が闇に染まった
誰もが皆悲鳴を上げて騒いでいる
「何だ!?」「キャァア!」「ウワー!」
「助けて〜!!」「先生を呼べ!」
生徒達はなんとかドアを探り当てて教室から出た
清次と亜美以外は全員
「何だぁ?」
清次は亜美の腕をつかみ立ち上がった
そして亜美は清次の後ろの何かに気がついた
「清次・・・・あれ」
清次はその言葉に振り向くと
自分の後ろにある巨大な門と人に気付いた
「やっと見つけましたよ」
銀色の台座の上に立っている、ローブを被った人が喋った
「誰だぁお前」
清次は臆することなく
その人物に近づいていった
「申し遅れました、私門番のピールと申します」
ピールと名乗った人物は礼儀正しくお辞儀をした
清次も亜美も呆然としていた
「いきなりではありますがこちらに来ていただけないでしょうか」
清次は凍りついた
なぜいきなり現れて自分を連れて行こうとするのか
なぜ自分でなければいけなかったのか
清次の頭の中は混乱していた
しかしその状況を整理し、清次は結論を出した
「嫌だ」
たった一言、されど一言
その一言は重みのある一言だった
闇の教室がしばしの間沈黙に包まれる
「えぇ・・・・と・・・もう少し考えては・・・」
「嫌だって言ったら嫌だ」
清次はピールの言葉を遮り言った
「大体さぁ、いきなり出てきていきなり来いって胡散臭さ抜群じゃん」
ピールはある意味尤もな清次の言葉に少し考えた
そして数秒後その口を開いた
「こちら側に来れば今世界で起こっている昏睡事件を解決できるかも知れませんよ?」
その一言で清次の心は揺らいだ
それと同時に亜美の表情も険しくなった
「それは・・・・本当かぁ?」
清次はピールをほぼ睨みつける様に見つめた
そしてピールは口元に歪んだ笑みをうかべ一言
「本当でございます」
清次は軽く笑いながら門の前まで行った
「あんた運がいいね、10分前までの俺なら確実に断ってたよ」
そういうと清次は亜美の方を向いた
「そういうことだから、あとよろしくぅ」
亜美は気付いていた
清次が自分のためにあっちに行くのではないことを
「何でアンタが行くの!?アンタじゃなくてもいいじゃない!!」
亜美の目からは涙が零れ落ちていた
清次はその一言にも笑って答えた
「俺はお前の笑顔のために行くんだよ」
そう清次が言った次の瞬間、門が開いた
門の向こう側は光で真っ白だった
「どうぞお気をつけて」
ローブで顔が見えない筈のピールの言葉を聞いたとき
亜美はピールが笑っているのが解った
そして清次が門をくぐった時、ゆっくりと門は閉じていった
門が全て閉じきった時
清次がくぐった門も
ピールが立っていた銀色の台座も
教室を覆っていた闇も
全てが消えてなくなった
「・・・・清次・・・・・・・」
亜美の清次を呼ぶ声だけが
悲しく消えていった