Vol 2 謎の昏睡
謎の昏睡
只今の時刻
7時13分56秒
登校時刻は
8時15分
結果:遅刻
「もう無理だぁ〜」
僕は商店街のど真ん中で亜美に向かって言った
「まだ大丈夫!走れ」
亜美にとっては余裕で間に合う距離だったが
清次にとっては軽く10分はかかる距離だった
「先行くからねー!」
そう言った亜美はすぐさま走り出し
すぐに見えなくなった
「あいつ本当に人間かぁ?」
清次は息を切らしながら亜美を見送った
そしてこれからどうするのかを考えた
どうせこれから学校に行っても間に合わない
ならトコトン遅れてやろうじゃないか!
清次はそんなことを考えながら商店街を歩き出した
(でも暇だなぁ)
あたりをキョロキョロと見回し何か無いかと思っていると
電化製品屋の「SAWAMATSU」が目に入った
店先には何台ものテレビがショーケースに入っていた
(・・・ちょっとのぞいてくかぁ)
近くによって見るとニュースがテレビに映し出されていた
(つまんねぇ)
清次は心底つまらなさそうな顔になった
そしてその場を立ち去ろうとしたが
テレビの画面に「特大ニュース」の文字が出た
(これだけ見たら学校行くかぁ)
そう思い、清次はテレビの中のアナウンサーを見つめた
「最近謎の昏睡が急増しています」
清次はここだけ聞いて
(どこら辺が特大なんだぁ?)
と思ったが、次の瞬間その理由が分かった
「謎の昏睡は世界各地で起こっています、それも世界中で1日に約50人です!」
清次がこのような失踪事件を聞いたのは初めてだった
少なくとも清次が記憶している中で60年間このような事件は無かった
「・・・・・・へぇ」
清次はあまり気にせずに歩き出そうとした
その時
【見つけた】
声が聞こえた
しかしあたりを見回しても特に変わったところは無い
「気味が悪ぃ」
清次は早歩きでその場を去った
15分後 教室
「何してたんじゃ!ボケー!!」
教師からの激しい怒声が教室に響き渡った
「いや・・それは車に轢かれそうな子供を助けて・・・・・・」
下手な言い訳を並べながら清次は少しずつ後ずさりしていく
そして教師はついに呆れたようで
「はぁ・・・もういい、座れ」と言った
清次は打って変わってニコニコしながら席に着いた
「バーカ」
横から亜美が腹を抱えていた
清次が起こられている間ずっと笑っていたらしい
「そんな事より、今日人数少なくねぇ?」
あたりを見回すと空席がいくつかあった
(5・・・いや・・6・・・?)
「昏睡状態だってさ」
その言葉に清次は少し驚いた
朝のニュースがこんなにも身近だなんて思っていなかった
キーンコーンカーンコーン
「ハイ、終わり〜」
やっとのことで授業が終わり休憩時間がやって来た
(だっるぅい)
清次はグッタリして机にもたれかかった
このまま寝てしまおうと清次は思ったが
亜美の話し声がそれを遮った
「清次って将来の夢とかあるの?」
唐突な質問だった
「そんなこと聞いて何かあんのぉ?」
清次は虚ろな目を亜美に向けながら
けだるそうに訊いた
「別に?聞きたいだけ」
亜美のそんな質問にも清次は真剣に考えた
(俺のしたいことかぁ)
清次は自分の将来など考えたことなど無かった
そして少し考えてこういった
「御伽噺みたいな冒険でもしてみたいね」
その言葉を聞いた亜美は呆けていた
かと思うといきなり笑い出した
「アハハハハ!アハハ!あんたやっぱ最高だよ!!」
そんな話をしていると校内放送が流れてきた
「霧乃 亜美さん、今すぐ職員室に来て下さい」
「何だろ」
亜美は不思議そうに職員室に走っていった
亜美は成績こそ悪いが学校での評判は悪くないので
呼び出されることなどめったにないのだが
そして亜美はすぐに戻ってきた
亜美の表情は暗かった
「どうしたぁ?」
清次はうつむいた亜美の顔を覗き込んだ
「お母さんが・・・急に意識不明になったって・・・・電話で」
亜美は今にも泣きそうだった
しかし涙を堪えながら亜美は荷物をカバンに詰め込んでいた
清次は何も言えなかった
ただ黙り込むしか出来なかった
「バイバイ」
亜美は一言そう言うと教室から出て行こうとした
しかし次の瞬間
【開門】
謎の声が聞こえたと同時に
教室が闇に染まった