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Vol 14 極の地

ドクン


ドクン


ドクン


ドクン


自分の心臓の音が聞こえる

こんなにはっきり聞こえたのはいつ以来か・・・・・

「炎璽やヴィアンもこんな気持ちなのかな」

清次は薄暗いコクピットで呟く

レーダーが敵の接近を知らせている

その距離が近づくたびに清次の心音が大きくなる

(ビビッてるのか・・・・俺)

しかしそれも無理はなかった

先の戦いでの圧倒的な敵の戦力、性能、威圧感プレッシャー

どれをとってもあちらの方が上回っていた

(大丈夫・・・・勝てる、俺は生き残る)


ビーーッ!

ビーーッ!

ビーーッ!


敵機が作戦開始領域に侵入した

『皆、頑張ってね』

クレアの声が皆を励ます

その声は少しいつもとは違った声だった

ひとしきり泣いた後の独特のかすれ声

『No-002 ヴァイン、出ます』

『No-004 グレイヴ、行きます』

桐生とヴィアンが轟音を轟かせ、敵に向かって突撃していく

清次は進むためのペダルを踏み込むことができなかった

「足が動かない・・・・いや、動かしたくない」

清次は一人呟きながらレバーを握り締める

2人は死ぬかもしれない状況でも躊躇ちゅうちょせずに行ったのに

自分が果てしなくバカらしかった

「踏み込めっ・・・踏み込めよ・・・・今しかないんだよ!!」

清次は自分の度胸のなさを呪った

こんな重要な時に皆の役に立てないなんて


『ビビッちゃった?』


クレアの声に清次は体を一瞬強張らせた

「あ・・・・ぁ・・・・俺・・・・」

清次は声にならない声を発しながらモニター上のクレアを見る

その顔は冷たく、清次をさげすんだような顔だと思った

しかしその顔はいつもと変わらない、むしろいつもより安心感を与える笑顔だった

「足が・・・・動かせないんだ・・・・震えて・・・・」

清次は動かせない自分の脚を睨みつけながら涙を流す

『大丈夫だよ、君は死なない』

「そんな保障はどこにも無い!」

清次が声を大きくして叫ぶ

耳を塞ぎ、目を閉じて、体を丸める


『死なせない、絶対に』


クレアが威厳を込めて清次に告げる

清次はモニターのクレアに視線を向けた

その目は鋭く、しかし和らげに輝いていた

その一言で清次の心は激しく動いた

さっきまでの恐怖はどこかに吹き飛んだ、足も動かせる

体にエネルギーがみなぎってくるのを感じる

「ありがとう・・・・・行ってくる」

清次はモニターの先の敵を見据えた

その目に恐怖は欠片もなく、逆に勇気が満ち溢れていた

『また不安になったら・・・・こう思って』

クレアは顔に満面の笑みを浮かべて言う



『笑顔のために、自分が今何ができるのかってね』



「No-001 ガルバレン 行くぞ!!」

ガルバレンはすさまじいスピードで格納庫を出発する

そして敵機を確認し、接近していった

(・・・・2機?1機は前のと違う奴だな)

敵は2機居た

1機は前のと同じ、超火力を備えた重武装のDOLL

もう1機は飛行機を少し縦長にしたような機体

黄金に輝く機体色

鋭角的な先端

中心部に装着された少々大きめのミサイルコンテナ

そして機体後部には巨大なブースターユニット

おそらくは機動力に特化した機体なのであろうと清次は推測する

そして清次は黄金の機体に接近し、攻撃を仕掛けた

「先手必勝!死ねっ!!」

移動中の機体にビームサーベルでの一撃を加えようとした

しかしビームサーベルから伸びたビームが

黄金の機体を真っ二つにしようとしたその時


パシュゥン


「!?」

ガルバレンのビームソードのビーム部分が

刃の形状を崩し、霧のように空中に飛散していった

そして黄金の機体は速度を上げてガルバレンのモニターの死角に回り込む

「速ッ・・・・!」

そして金属のすれる音が聞こえる


ガシュッ  ガガガガガガ  ッキン


「この音は・・・」

『させません!』

ヴィアンが黄金の機体を殴り飛ばす

しかし黄金の機体は体勢を崩しながらも

中心部のミサイルコンテナにセットされたミサイルを一斉発射してきた

さっきの音はミサイルハッチを開けた音だったのだ

「この程度の数なら・・・・・!!」

炎璽はグレイヴの腰に装備されている

2連式ハンドガンを2丁両手に握り、ミサイル群に向け発砲した

見る見るうちにミサイルの数が減っていく

ガルバレンも右へ左へと縦横無尽に空中を飛び回りミサイルをかわしていく

「避け切れるか・・・・・」

清次がそう思った瞬間だった



『だから人間は嫌い、すぐに油断するからすぐ終わっちゃう』



若い女の声が聞こえた

そしてレーダーの危険信号アラートが鳴り響く

その先にいたのは超火力を有するDOLLだった

両肩の大型ミサイルコンテナが開き、ミサイルがセットされる

『バイバイ』

その言葉と共に桐生を消した大量のミサイルが飛んでくる

全方位からミサイルが飛んでくる

炎璽の射撃が間に合う量ではない

基地からの援護射撃も届いているが無意味に等しかった

「嘘だろ・・・・・」


ドドドドドドドドドドドドドドド


ミサイルが一斉に爆発する

辺りは爆炎と煙で何も見えなくなった

「ッッッッ・・・・!!」

クレアは司令室で息を呑んだ

そして手の平で顔を覆った

「守れなかった・・・・私は・・・また・・・」

クレアは床に膝をつき、自分の無力さを嘆いた


そしてある異変に気付いた

床が冷たい、空気もひんやりとしている

いや、ひんやりどころではない

「寒い・・・・・?」

クレアが目を開け辺りを見回すと

そこにはただただ氷の大地が広がっていた

「どこだココ」

「どこでしょうか・・・・」

「どこなんでしょう」

背後から3人の声が聞こえた

ヴィアンと炎璽と清次の声だ

「皆!無事だったの!?」

クレアは抱きつく勢いで3人に駆け寄る

その質問に清次は少し困ったように答えた

「今解ってるのは、皆何も解らないってことだけ」

「そう・・・・」

クレアは露骨に肩を落として残念がる

そしてもう一度辺りを見回して、思う

「ここどこかしら」

当然といえば当然の疑問

何故今まで疑問に思わなかったのかが疑問だ

「南極か北極だろうな」

「根拠は?」

「地球の上でこんなに氷が張ってるなんて北極か南極だろうよ」

「それは根拠とは言わないと思います」

「同感です」

清次の意見を全員で潰しながら会話を続ける

そしてここで立ち止まっていても始まらないので

4人は取りあえず前に進むことにした

「それにしても寒いわね」

クレアは小さく呟く

そう言われればクレア以外の3人はパイロットスーツを着ていて

体感気温変化機能のおかげであまり寒さをあまり感じていない

それに比べるとあまりにも頼りないクレアの制服

「貸してやりたいけどコレ脱いだら裸同然だからな・・・・」

「構わないわ、脱ぎなさい」

クレアは無理矢理清次のパイロットスーツを剥ごうとする

勿論清次は走って逃げる



数分後


「ハッ・・・ハァ」

清次はとクレアは疲れ果てて座り込んでいた

「寒ぃ〜死ぬ〜イヤ〜」

クレアは文句をたれながら清次を殴る

「何で俺っ!?」

清次は頭を抱えて身を守る

すると後ろから炎璽とヴィアンがやって来た

「何ですかコレ」

炎璽は清次とクレアの漫才のようなやり取りを完全に無視し

2人の後ろのに目を向けた

クレアと清次もそれに習って目を向ける

そこにあったのは

周りの物とは比べ物にならないほどの氷山だった

しかもそれには巨大な穴が開いていた

そして目の前には「入って下さい」と言わんばかりの

人が通れるほどの大きさの穴が奥まで続いていた

「入りますか?」

「ちょっと待って・・・ココは」

「GO!!」

清次はクレアの言葉を聞かず氷のトンネルをくぐって行く

そして50m程進むと広い空間に出た

「何だ・・・・ココ」

その空間にはクレーターが5つあった

そして無数に転がっている氷の欠片

明らかに中で何かがあった証拠だ

「見ちゃったかぁ」

クレアが肩を落としながら言う

その顔は「何かを知っている顔」だった

「何なんですか・・・・ココ」

炎璽はクレアに問いかける

その問いにクレアは当たり前のように言った



「ココは南極、2年前DOLLを見つけた場所よ」



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