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Vol 13 もう一度

あなた誰ですか?



その言葉は聞いていた者全ての心に突き刺さり、動きと思考を止めた

ただ一人、クレアだけは迅速に対応した

『清次君!桐生を司令室に連れてきて!』

「医務室じゃないのか!?」

『速く!!』

「・・・・・解った」

清次は桐生の乗っているコクピットを拾い上げ

ガルバレンのスラスターを噴かせた

クレアは司令室でため息をついた

「とうとう・・・・・出てきたのね・・・・・」


ズガガガ・・・・・ボゴボゴ・・・


近くでコンクリートが崩れるような音が聞こえる

「連れてきたぞ!!」

清次は意識の無くなった桐生を抱えて司令室まで走ってきた

「ずいぶん速いわね」

「悪いな、部屋1つダメにしちまった」

「へ?」

クレアは窓を開けて周りを見た

すると左に建物に左手を突っ込んで立っているガルバレンが見えた

「・・・・・・・」

「そんな事より!桐生を・・・」

清次はクレアに桐生を差し出す

桐生の血はすでに止まっており、清次によって応急処置も施されている

「桐生はそこのソファーに寝かせて、清次君はこっちに座って」

クレアは対面式のイスに腰をかけた

清次は言われた通りに桐生をソファーに寝かせた

そしてクレアに向かい合ってイスに腰をかける

「桐生の言葉は聞いた?」

クレアは清次の目を見つめていった

「聞いてたよ・・・・・・・あんた何か知ってんのか?」

清次はクレアの目をなかば睨みつけるように見つめる

「簡単に言うと、今の桐生は桐生じゃない」



「・・・・・・は?」



清次思わず声を漏らした

桐生が桐生じゃないとはどう言う意味なのか

「今は『ヴィアン』になってるの」

「ヴィアン?なに言ってんだ?」

清次は混乱してきた

少しずつ何が何だか解らなくなってきた

「悪いけどこれ以上先は言えないの、桐生を部屋に連れてってあげて」

「あ・・・・ああ」

清次は納得しきれない感情を抑えながら

ソファーに寝ている『ヴィアン』を担いで部屋を出て行った


(何なんだよ・・・・桐生がヴィアン?・・・わけ解んねぇ)


「ん・・・・うぅん・・・・ん?」

背中に担いでいる桐生から声が聞こえた

清次は少し希望を抱いていた

実はさっきの言葉は桐生のイタズラで

皆の反応を見て面白がっているのではないかと

「あなた・・・ガルバレンのパイロットの人ですね」

清次の淡い希望はコナゴナに打ち砕かれた

「あぁ、そうだよ」

「お名前は何とおっしゃられるのですか?」

「清次だよ、神恵清次」

「そうですか、私はヴィアンです」

「よろしくな」

「宜しくお願いします」

一通りの会話を交わすと2人の間には沈黙が訪れた

何となく気まずい雰囲気

「あの・・」

清次がヴィアンに声をかけたその時



『あーあー、いきなりですが本基地は只今より地下に移送します、総員振動に備えなさい』



クレアの陽気な声が基地内の緊急放送を通じて聞こえてかと思うと

基地から重力が消えた

「うぉわっ!!」

清次やヴィアンの体が宙に浮く

それだけではない、自動販売機やイスまでもが宙に浮いていた

「何で地下に移送するだけで無重力になってんだよ!」

清次は足をバタつかせながら必死で壁を目指す

足が地面についていないとどうも不安なようだ

「おそらく基地全体が9.8m/sぐらいで落下してるんでしょう」

「結局どうなってんだよ!」

「私達は落ちてるけど、地面にたどりつかないんです」

そんな会話を続けていると少しずつ重力が出てきた

だんだん地面が近くなる

そして遂に重力が元に戻り、清次たちは地面にたどりついた


『地下移送完了、誰がケガしても文句は受け付けませーん。以上』


地下移送完了の放送が基地内に響き渡り、すぐに静寂が訪れた

「大丈夫か?」

「頭を打ちました、非常に痛いです」

「医務室行くか、配置とか変わってなきゃいいけど」

いつもの桐生なら放って部屋に戻るところだが

ヴィアンは口調が丁寧なせいか、放っておくと自分が悪役になってしまう気がする

清次はいつもの通路を歩いて医務室を目指す

そして医務室にたどりつき、ドアを開けた

するとそこには医者はおらず、炎璽や凍璽がいた

「なにしてんだ?」

「さっきの移送で頭打ったんです、あ〜痛い」

凍璽は頭を抑える炎璽にシップを貼ろうとした

すると横からヴィアンが手を伸ばし、炎璽が手で抑えているところを見た

「血が少し出てますね、ガーゼと包帯とって下さい」

「は?」

「速く」

「ん・・・ハイ」

「どうも」

ヴィアンはガーゼと包帯を受け取ると

ガーゼを傷口にあて、ガーゼが取れないように包帯を巻いた

その手つきはおよそ素人のものではなかった

なおかつ不器用な桐生の姿ですることでギャップがでている

「お前らは驚かないんだな」

清次は長イスに座り2人に声をかけた

「十分驚いてますよ」

「さっきクレアさんから聞きました」

「地下移送の話は?」

「知ってたらケガしてませんよ」

「なるほど」

どうやらクレアは地下移送を誰にも知らせていなかったようだ

しかし誰にも知らせずに自分一人で移送をすることはできないだろう

「でも何で今更・・・・・・?」

凍璽が小さい声で呟いた


だれにも聞こえないように・・・・小さく・・・・静かに・・・


『炎璽、凍璽、清次、桐生、以上の4名は今すぐ司令室に来てください』


クレアの声がスピーカーを通して4人の耳に入る

「行くか」

「行きましょう」

4人は医務室を後にし、足早に司令室へと向かった


カッ カッ カッ カッ


ペタッ ペタッ ペタッ ペタッ


コッ コッ コッ コッ


ザッ ザッ ザッ ザッ


4人のそれぞれ違う足音が広い廊下に響き渡る

ヴィアンは先ほどの戦闘で靴が破れてしまったので裸足だ

炎璽はパイロットシューズ、凍璽は革靴

清次はスニーカーだった

そして4人は司令室にたどりつく

「失礼します」

炎璽がドアを開け、4人は中に入っていった

すると司令室はいつもの明るい雰囲気ではなく

中央に3D地形表示装置が設置され

壁一面に作戦プランが貼り付けられ

大きなパソコンが4〜5台置いていた

そしてクレアの目がいつもの爛々(らんらん)とした目ではなく

敵と戦うときの『本気マジ』の目だった

「今からミッションよ」

その瞬間から4人の周りの空気が変わった

おふざけの気持ちではない

本気の本気の気持ち

「またあいつらが来たのか」

「えぇ、しかも今度は2機よ」

「両方ともDOLLですか?」

炎璽がクレアに詰め寄る

それもそのはず、もう1機がDOLLであるかないかによって

自分達の勝敗(生きるか死ぬか)が決まるのだ

「おそらく・・・・そうだと思うわ」

クレアは重々しく口を開く

それは自分が申し訳ない気持ちがあったからだ

もしも清次たちが全員負け、敵が基地を襲ってきたとしても

5000mの地下移動距離や100のトラップ

300以上の物理防壁と電子防壁がクレアたちに逃げる時間を与えてくれる

勿論クレアには清次たちを見捨てるつもりは無いが

皆にそれは伝わらない、伝えることができない

クレアにはそれが非常に申し訳なく感じた

「私は貴方達を見捨てないわ、絶対に」

クレアは心をこめてそう言った、そう言うしかなかった

「地下に移送したのは他の職員の命を・・・・・」

クレアがそう言おうとした瞬間

清次が手を伸ばし、クレアの頭を小突こづいた

「解ってるよ、地下移送は仕方なかったんだろ?お前は悪くない!悪いのはあいつらだ」

「そうですよ、クレアさんは悪くありません」

「大丈夫です、皆信じてますから」

「皆の言うとおりです、どうか負い目を感じないで下さい」

クレアは4人の自分を信じてくれるということに心を打たれた



ありがとう・・・・・みんな・・・・・



クレアは照れくさい言葉を心の中で呟き

今回のミッションの説明を始めた

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