Vol 1 始まりの朝
始まりの朝
「ふぁ〜あ」
とあるアパートの一室
その布団の中で少年はあくびをした
少年の名は「神恵 清次」
中学2年の14歳だがすでに一人暮らしを始めている
理由は両親がいないから
両親がいないといっても捨てられたのではない
母は清次を産んですぐに、
父は去年交通事故で死んでしまった
最初は祖父と祖母が引き取ろうとしたのだが
「一人暮らしする!!」
清次はそういって聞かなかった
祖父も祖母もそんなことができるわけが無いと思い
反対したのだが、家から出てこようとしなかった
祖父はついに諦めて一人暮らしを許可した
そして現在に至ったわけである
「・・・・・もうこんな時間だなんて憂鬱だよぉ」
虚ろな目で見つめた時計は7時45分をさしていた
清次は仕方なく布団から出た
12月の冷たい空気が肌に触れた
「やっぱ寒いぃ」
もう一度布団に入ってしまった
(今日はもう休もうかな・・・・)
そう思った次の瞬間
ジャラ・・ カチャカチャ ガチン
ドアから妙な音が聞こえてきた
「またか・・・・・」
清次はうんざりしたように顔をしかめた
そして鍵をかけていたはずのドアが開かれ
「おっはよー!さぁ起きろ!!」
制服を着た女の子が
清次がいる布団に向かって大声で言った
「・・・・・・・・・」
しかし返事は無かった
女の子はため息を吐きながらドアを閉めた
そして布団に歩み寄り
布団を全力で蹴った
無論、清次もろとも
「痛っ!!」
清次は転げまわった
「速く起きないアンタが悪い」
女の子は当たり前のように
テレビの電源を入れて
冷蔵庫をあさり始めた
「何すんだよ、亜美ぃ」
女の子の名は「霧乃 亜美」
清次と同い年の幼馴染
中2の女子にしては身長が高く
やたらと運動神経が良い
そして毎朝合鍵で勝手に部屋に入ってくる
「そんな事より速く準備しないと遅刻だよ?」
亜美の言うことももっともなのでとりあえず準備をすることにした
10分後
「はっ・やっ・くっ・はっ・やっ・くっ」
玄関で靴を履いている清次に
亜美は急げ急げと急かしていた
清次は靴を履き終えると
「行ってきます」
誰もいない部屋に一言言って鍵をかけた
亜美と清次は早足で学校に行った
しかしこの二人は後に
この平凡な暮らしに別れを告げ
重大な選択を迫られることを知らなかった
そして二人がどのような答えを出すのか
それは秘密です・・・・