3日目<夜>
「なんなんだ貴様らは!!」
城門をぶち破り武装バンで突っ込んで来た珍客である俺たちの前にオマコンが言うところの
「姫騎士」とやらが立ちふさがった。
長いブロンドの長髪に細やかな装飾を施した武具や装飾品に身を包み
凡そ戦いには向きそうもない細腕にゾンビも切れなさそうなレイピアを構え…
そして内心ブルブルと震えながら必死でこちらを睨みつけてくる気の強さ。
なるほど姫騎士とはよく言ったもんだ。
もちろん俺たちは礼儀正しいアメリカンだ。自己紹介も丁寧にやってやってもいいが
状況は一刻と悪化していく。なので端的に言うことにした。
「生き残りたいやつはこの城から出て行ってもらう。俺の指示に従え!」
とな。
それを聞いたオマコンは頭を抱え、ジタンはニコニコ笑って傍観、マックスに至っては何を考えてるか分からないが俺は続けていったのさ。
「もう1度いうぜ。城門は今俺たちがぶち壊した。あと数分と立たずにゾンビの群れに
この城は侵入される。食われたくない奴はこの城から逃げ出すこったな」
「ふざけるな!!!」
そこで姫騎士の限界が来たらしい。
半ばジョニーの声を遮る形で怒鳴りつけ、ジョニーの目の前につかつかと詰め寄った。
今にも胸倉に掴みかかりかねないが、身長差があるのでうまく掴めないらしい。
レイピアの切っ先を顎に突きつけ震える声でジョニーにさらに詰め寄った。
「貴様らは!何をしたのか分かっているのか!今!この城には女子供しかいない!
何故なら今外にいるゾンビの群れに男たちは果敢に向かっていったからだ!」
「そして!城門を貴様らに壊されたせいで!その戦ってくれた男たちが今度はゾンビになって襲ってくる!!
これがどれほどの悪夢なのか貴様らには分かっているのか!!!」
怒り心頭といったところだろう。一気にまくしたてるその姫騎士のレイピアの切っ先を
人差し指でどけながらジョニーは言った。
「分かってるさ。俺たちは今からあのゾンビ共を一匹残らず全滅させるんだからな」
姫騎士にはさぞや奇怪に見えただろう。いやもしかして何を言ってるのか理解すらできなかったのかもしれない。
姫騎士の顔は怒りと戸惑いと違和感で形容しがたい顔になっていた。
なにか言いたげな姫騎士の言葉を待たずジョニーは続けた。
「オマコン!やつらを殲滅するにはどうする?」
「武装バンには燃料のガソリンが山ほど積んである。そいつを城にまき散らしやつらを誘い込んで蒸し焼きにしよう。体がでかいやつらもいるからね、外で焼くより効果的なはずさ」
「ジタン!女子供ばかりで病人もいるだろうがどうする?」
「城の戸板をストレッチャー代わりにして病人や老人を運ぼう。こういう城には
王族の脱出用の秘密通路があるはずだ。僕が指揮をとってそこから順番に脱出させる」
「マックス!…はゾンビの群れが逃げる人間に襲い掛からないよう最後尾を固めてくれ」
口を開けてあっけにとられる姫騎士にドヤ顔を向けたジョニーはニヤニヤ笑いながら姫騎士に詰めよった。
「姫騎士さんよ?おまえこそ自分の役割分かってるのかい?もたもたしてたら全滅するぞ!
分かったらジタンと女子供引き連れてこの城を脱出するんだな!」
そういって動こうとするジョニーの裾を姫騎士が掴む。
「お前は…いやお前らは一体なんなんだ…?」
最初に問い正した内容とほぼ変わらず、だがニュアンスを変えたその問いにジョニーは少しだけ考えて答えた。
「ゾンビのエキスパートさ」と。