3日目<昼>
「ビッグなパーティーを始めようぜぇぇぇぇっ!」
いうが早いかジョニーたちの武装バンは崖から一気に飛び出した!
空中を浮遊しながらゆっくり自由落下をしていく武装バンは不幸にもこちらに気づいた
オークゾンビの顔をひしゃげさせながら着地する。
「ちょっと!乱暴なんじゃないか?!」
座席にしがみ付きながらオマコンが悲鳴じみた声を上げるがジョニーは笑ってスルーする。
オークゾンビの体をクッションにして武装バンは地面をワンバウンドで着地。
その勢いに乗せてゴブリンゾンビを何体か巻き込みながらターンする。
眼前には無数のゾンビの大群の群れに思わず口笛を吹いちまった。
しかしやることは決まっている。
「ゾンビ映画ではゾンビは車に勝てねえのがお約束さ!全員ひき肉にしてやるぜぇぇぇ!」
アクセルを全開で踏み込んだ俺はゾンビの群れに向かって突っ込んでいった!
相手がゴブリンだろうがオークだろうが人間のゾンビとそう大差はない。
武装バンに横付けされた三角木馬みたいな突起物に跳ね飛ばされ次々のひき肉になっていく。
「普通こんなにゾンビをひいちゃうと肉が駆動部に引っかかっちゃいそうだけど大丈夫かな?」
不安がるオマコンにマックスは無言で力強く頷く。
そんなことは想定内だといわんばかりの自信に満ち溢れた顔だ。
そうなのだ。ここにいる男たちはゾンビ映画のエキスパートなのだ。
おおよそ起きるであろうトラブルなんてとっくにお見通しってわけだ。
もちろん俺には何も理解できないが対策は万全なのだけは分かるのさ。
「あとはよくあるのはゾンビに囲まれて動けなくなっちまうってのだが…こうだだっ広ければ
外周のゾンビの少ないところを突っ走れば囲まれる前に離脱もできるってわけさ!」
最初の勢いでゾンビの群れを弾き飛ばし、空いた穴から手薄な場所に抜け出ていた武装バンは
城を円状に囲んでいたゾンビの群れの1番外側から削り落とすように外周からゾンビの群れをひき肉に変えていっていた。
だが、だ。
「ジョニー!数が多すぎる!」
オマコンが悲鳴を上げる。武装バンの窓に張り付いてくるゴブリンゾンビの数は走るほどに数を増していた。
「チィ!オマコン運転代われ!こいつらは俺が」
と俺は自慢のチェーンソーを武装バンの窓に設置した「チェーンソーだけ外に出せる隙間」から突き出し
ゴブリンゾンビを真っ二つにしていく!
「はっはー!ざまあないぜ!」
「頼むから転倒して間違ってこちらを切りつけたりしないでくれよ?」
と冗談めかしていうジタンに肩をポンと叩いてウインクする。
「安心しな先生。ちゃんとマックスにお願いして窓にチェーンソーを固定できるように
改造してもらってるからな。手を離したら動きが即座に止まる安全装置付きだぜ?」
そう。お見通しなのだ起こりうるトラブルは。
だからこそ。
ゾンビの群れにたたずむ山のような大きさのゾンビから目を離せずにいた。
ゾンビ映画の中でも巨大ゾンビというのは例としてはかなり少ない。
何故なら映画でゾンビになるのは人間であって、トロルやサイクロプスではないからだ。
「オークゾンビの数倍はあるね。この武装バンでも倒せるかどうか」
ジタンのその目利きはおそらく正しい。
武装バンの強さは質量x突進力=パワー!という単純な図式だが
その巨大なゾンビにたどり着く前に他のゾンビの群れにその突進力が半減されてしまう。
そして質量的にも向こうさんの方がクソ重いのは明らかだ。
「おそらく突進していってもあいつは倒せねえ。あいつに武装バンごとひっつかまれて
ゾンビの群れに囲まれてるのが目に見えてる。とはいえただ逃げるってのも情けねえ。それなら
道は一つしかねえ」
「城に逃げ込む…か?」
ジタンのつぶやきに無言でうなずく俺にオマコンがすかさず口をはさむ。
「城に逃げ込むにしても城門は閉まってるし、架け橋は上がってる。周りには水で囲われた堀だ
どうやって城に逃げ込む気だい?」
そうなのだ。この城の周りの堀は遠目から見ても数メートルはありそうなほど深くその中はゾンビでひしめき合っていた。
「そりゃあこうやってさ!」
俺はまた一気にアクセルを踏み込み城門に向かって武装バンを突進させる。
オマコンは嘘だろ!とか叫んでるが関係ねえ。
城門は当然ながら硬く閉じられている。
どうやろうが中のやつらが俺たちを招き入れてくれるわけがねえんだからな。
そのために。
俺は最初に飛び込んだ時にクイックターンする事でできたひき肉の山。
堀の前にうずたかく積まれたその山をジャンプ台にして。
俺たちは勢いよく城の扉をぶち壊し、血まみれの武装バンで…城の中に飛び込んだんだ。