18日目<???その10>
リッグたちはその視線の先にある超大型ゾンビに気づいた後、大きな騒ぎこそ起きていないものの
周りは恐慌状態に陥っていた。
あるものは子供を抱えて泣き出す妻子、何か言葉にならない言葉をブツブツつぶやきながら辺りをずっと見渡す初老の男などなど…
ただリッグにしてもそれは大差はない。
なにせ情報があまりにも足りないのだ、自分の妻子や村人を守らなければいけない責任
それらを銃による威圧で押さえつけた罪悪感、そしてすがるような周りの視線を感じ取り
思わず吐き出してしまいそうだ。
無意識に手を伸ばしていた銃も何に使うつもりだったのか…ふと気づいてから手を放す。
超大型ゾンビにはこんな小口径の銃が通じるわけもないし、村人に余計な不信感を与えるだけだ。
大きく深く深呼吸をし…そう離れていない他の高台を見やる。
細かい状況こそ見えないが似たようなものだろう、ざわめきながらこちらを伺って…いや、叫んでいる…?
「ネズミが!ネズミがぁ!」
高台にいる男の悲痛な叫びで気づいた。
高台の根本に無数のうごめく小さな影…ネズミどもだ。
そいつらが高台の根本に食いついて、徐々に高台が傾いていくのが見える。
「馬鹿な?!あのネズミどもが人以外を食うなんて…?!」
リッグは驚愕していた。
今まで捕まえた人間を地下の檻に入れて閉じ込めた…村の人間が逃げ切るまでの生贄として。
彼らがネズミに襲われた後を何度も見てきたが、衣服こそ食い破りはするものの
基本的には肉にしか興味を示さなかった。
証拠に木で出来た檻は無傷に等しかったのだ。
それがここに来て、高台をまるで倒すことを目的とするように行動している。
「まさか…知能をつけてきているのか…?」
「うわぁぁっぁぁぁあああああああ!!!」
リッグがその結論に至るまでについにその別の高台はネズミに切り倒され…
そこにのっていた数人の男女はあっという間にネズミの群れに覆われた…
「……………っ!」
もはや一刻の猶予もない。
高台は安全な場所ではなくなった。
次にこちらの高台が襲われるのも時間の問題だった。
だが今うかつに降りてもいいのか…自分のみならず妻子や仲間を危険にさらしてどこに行こうというのか。
その選択肢がないことにリッグは下唇を噛み締めた。
だがその時、一緒にいたリッグの子供がポツリと言葉を漏らす。
「笛の音だ…」
「…なんだって?」
リッグはその言葉に反応する。この状況で笛を鳴らすということの意味はもうリッグにも分かる。
そして遅れるようにエンジン音が辺りに鳴り響く。
「いやっはぁぁぁぁ!」
叫びながら最初にチェックと乗ってきたモトクロス…それに二人乗りするジョニーが叫びながら笛をかき鳴らす。
その音にネズミの大群は明らかに反応してみせた。
「なんのつもりだ!!」
「おたくらが逃げる時間を稼ごうっていうのさ!」
そういって手に持っていたガソリンの入った袋を高台の根本にジョニーは投げ捨ててみせた。
「これがあれば逃げれるだろう?」
そういってニヤリとニヒルな笑顔をリッグのいる高台に向ける。
先程まで絶望に顔を曇らせていたリッグの顔にわずかに口が緩むのをリッグの子供は見逃さなかった。
「さあ!大脱走の始まりだぁぁぁ!」
チェックの飛ばすモトクロスをまるで黒い波のようなネズミの大群が溢れて集まろうとする。
「逃げる先はどっちだ?!」
「当然あそこさ!」
そういってジョニーは超大型巨人を指差してみせた。




