18日目<???その9>
まあそもそも無理なんだがな…
とチェックと一旦別れたジョニーはポツリとそんな事を漏らしてみせた。
手持ちのガソリンだと言いはったものはこれもチェックと同様にリッグの家に立て掛けておいたものを
かっぱらってきたものだ。
村を統治して、できるだけ逃亡者やよけいな真似をさせないよう抑制していたリッグの性格から
逃亡で使える車などを使える状態で放置しないだろう。
それであればいざというとき使えるようにかつ管理したいとなればガソリンなどの燃料を全部抜き出しておいてリッグたちだけで管理する…
おそらくはそういった事をしているだろうと推察した上で、それっぽいものをどさくさで撮ってきたに過ぎない。
それに単純に今の手持ちで数リットル程度であるそれが読みどおりガソリンだったとして
無数のゾンビを焼くにはまるで足りない。
うまいことゾンビを檻の中に誘導して、あわよくば入り口だけ火をかけて封鎖できれば数は減らせるかな…
という目論見がある。その程度のもので自信があるわけでもなかった。
それでも…女子供がいるこの村にいてゾンビが襲ってくる…その状況で何もしないわけにはいかない。
その気持だけがジョニーを突き動かしていた。
でないと体を張ったオマコンやジタン、マックスの3人に申し訳が立たないからな…
そんな事を考えているうちに、檻の前に到着したジョニーは別れたチェックの場所を再確認しようと
ぐるりと目を周囲の民家の上に巡らす。
その中の一つの家の上でチェックが遠方を見て、固まっている…信じられないものを見ているような仕草をしているのが分かった。
「今更ゾンビの大群でビビるとも思えねえし、ネズミか…?」
とジョニーも、目線を同じ方向にずらす…とチェックと同様にジョニーも固まってしまう。
二人の目線の向こう、数キロほど先に見える巨体…以前見たあの超大型ゾンビと同様の個体…
それがゆっくりこちらに向かってくる姿だった。
「マジかよ…クソッタレが」
思わず悪態をついてしまう。
まだ通常サイズのゾンビであれば何かしらやれることはあるだろう…が、あの超大型ゾンビ相手では
現状のジョニーは…いやこの場にいる人間は全員無力に等しい。
もはや逃げるしか手はない。
それもゾンビより動きが早いであろうネズミに追われながらだ。
絶望的な状況で出来る事などそれしかない。
そう歯噛みするジョニーだが、あの臨機応変に対応するチェックが未だ食い入るように超大型ゾンビを見つめて動かない。
何が起こっているのか…
ジョニーも民家の上に登り、眺めて初めて見えた。
「…ネズミが超大型ゾンビを食ってる………?」
そう超大型ゾンビの足元には無数の黒点がびっしりと張り付いており、目を凝らすとそれらがうごめいているのが見えた。
「これはチャンスかもしれんぞ…」
ポツリとつぶやくようなチェックの声にジョニーも反応する。
「理屈はわからんが、ネズミはあの超大型の…ゾンビ?に夢中らしい…それなら」
「村の連中を説得して、車で逃げ出せるかもしれない…ってか?」
と手元のガソリンをこれみよがしにチャポンと揺らしてみせた。
今ならあの頑固なリッグを焚き付けて、この村の車ごと村民を避難させられるかもしれない。
村の脅威であるネズミは超大型ゾンビに夢中だし、その地響きは周辺のゾンビもひきつけてくれるに違いない。
後は…リッグ次第だ。
二人はお互いの顔を見て無言でうなずき、踵を返してリッグたちのいる高台に走っていった。




