18日目<???その7>
「ゾンビとネズミ両方がくるぞ!村民を全員高いところに避難させろ!」
ジョニーの怒号が響く。もはや言い争いしている場合ではない。
「さっきの貴様らの松明か?!」
リッグの怒号も響く。
リッグからすればさっきのチェックの松明が合図になっていると思ってもしょうがない。
理屈派ゆえに、ハッタリと言いながらも松明が原因である可能性を否定しきれていないのだ。
「悪いが松明はハッタリだ!」
あっさりネタばらしするチェック。
それを補足するようにジョニーは笛のほうが原因だと自分の手持ちの笛を見せながら、先程笛の音が聞こえてきた高台を交互に指差してジェスチャーして見せる。
「ばかな…、ゾンビの地鳴りでかき消されるようなそんなか細い笛の音がネズミを呼び寄せるものか」
「大人には聞こえないんだよ!」
頑なに笛の音が原因だと認めようとしないリッグに、たまらずリッグの子供も声を上げてしまうが
お互いはっとなりリッグの子供の方は口をつぐんでしまう。
どうやらそのやり取りだけで事の顛末を想像できてしまったのだろう。
ゆっくり手をおろしたリッグはデリルと呼ばれる弓使いに下がるよう合図を出してから
ジョニーに声をかけた。
「すまなかった、あんたらの話を信じるからその子を離してやってくれないか?」
幾分先程より穏やかになった声色のリッグの声にチェックは無言でゆっくり子供を離す。
気まずいのか戻りづらそうなリッグの子供の背中を軽く押してやり漸くリッグの元に戻っていった。
「さて…どうする?」
その様子を見届けてからリッグにそう問いかけるジョニー。
今この現場の主導権はともかくこの村を統治しているのはリッグたちで、ジョニーたちは部外者だ。
判断を仰ぐことで、暗に勝手に余計なことをしないで指示に従うつもりだというポーズを見せた。
「…………高台にみんなを避難させる」
絞り出すように言うリッグ。この村には3箇所の高台がある。そこに避難させるというのだ。
「あんたらには悪いがまだ信用したわけじゃない。避難するのは構わないが高台以外の場所に行ってくれ」
「信用してないのはお互い様だ」
皮肉でもなく実際、ネズミの餌にされかけたわけだ。信頼関係など築けるわけがない。
そうこうしているうちに地面が軽く揺れだしてくる。
どうやらゾンビというのでも数匹現れたとかそういうレベルですらないようだ。
まるでゾンビの軍隊が行進してきたような地響きが大地を揺らす。
「ジョニー!俺たちもやばいぞ!」
チェックが吠える。ちゃっかりリッグたちの家に立て掛けてでもあったのだろう手斧のようなものを手に入れている。
抜かりない男だな、とハっを軽く笑いかけた後、ジョニーが言ったことは信じられない台詞だった。
「それじゃあゾンビ退治にいくか」
チェックの正気かこの男という目つきからわざとらしく目をそらし、ジョニーは舌なめずりして見せた。
その様子に、チェックは半ばあきらめながら先を走るジョニーの後をついていった。




