18日目<???その3>
ジョニーたちが村の牢に囚われて未明…およそ数時間の間。
かかとに仕込んでいた小指の先ほどの笛を指先でつまみつつ、息を吹き入れる。
大人たちでは聞き取れない可聴領域…周波数が一定以上高い音で鳴り響く特殊な笛は
ジョニーたちの耳にはかすかに笛が息で震える音だけを響かせていた。
ジョニー曰く「ピーターパンにネバーランドに連れていってもらえるぐらい純真な子供」にだけ聞こえる笛は
静かに長く鳴り響いて見せた。
「…少し思うんだが、もし仮にこの笛の音が聞こえて興味を持ったとしてだ。実際に音の聞こえるここに来るまでどれぐらいかかると思う?」
と、疑問に思ったチェックの問いに素直に答えてやるとしよう。
「音に気付くのに2,3日、興味を持つのにさらに倍。音源がここだと気づくまで含めて最低10日ってところかな?」
「………なるほど、気の長い話だ…」
聞くんじゃなかったといった体でふて寝を始める。
確かに自分たちが餓死するかどうかのタイムレースだ。
気の長い話だというのは至極ごもっともだろう。
だが、その機会は実にすぐ訪れてくれた。
翌日の夜ないし夕方、笛を吹き続けたジョニーたちの牢屋の近くに明らかに隠せていない気配が近付いてきた。
牢の光を取り込んでいる小窓の付近にうっすら映る薄い影。
おそらくは10歳前後の2人組。
彼らがこっそりこちらの様子をうかがっているのが、ジョニーたちにははっきりと感じ取れた。
チェックとジョニー2人は寝てるふりをしつつ、闖入者たちの様子をうかがっていたが
彼らは子供でありながらはっきりとした口調でジョニーたちに話しかけてきた。
「起きてるのは分かってるよ。笛を吹いてるのはおじさんたち?」
とまだ声変わりの済んでいないであろうハスキーボイスで話しかけてきた。
小窓から見えるあの姿は…確かリッグと奥さんと一緒にいたあの少年だ。
「ああ…俺が吹いた。俺の事は覚えてるかな?」
ゆっくり目を開け、落ち着いた口調で少年に話しかけたジョニーに、少年は無言でうなずいて見せた。
「笛を吹くのを止めて」
そう少年は言い出し、口に人差し指御あてて見せる。
「それはいいが、君たち次第かもな」
とあえて理由を聞かずに間髪入れずに、答えを返す。
だが想定していたのは何故笛を吹いていたのかだったので、いきなり吹くのを止めろと言われるのは予想外だった。
「笛を吹いちゃいけない理由があるのかい?」
そこに横からチェックの優しい声が響く。
「あいつらが来るんだよ」
横からもう一回り幼い少年がひょっこり顔を出す。
話をして警戒が解けたのか好奇心が勝ったのか。
「あいつらってのは…まさかゾンビかい?」
「ううん、違うよ」
一瞬ぞっとした結末をあっさり子供は否定してくれる。
「ネズミが来るんだ。すごい怖いの!」
幼い方の子供が身振り手振りでぶるぶる震えながら教えてくれる。
「怖い…ネズミ…?」
そう。まだジョニーたちは理解が出来ていなかったのだ。
ここは異世界だという事が。




