18日目<昼>
さすがに柵を引き倒して通るのは印象が悪くなるかもとモトクロスを脇の茂みに隠してから。
ジョニーとチェックは枝で作られた柵を乗り越えて村の方角に向かった。
正直モトクロスを置いていくのは不安があったが、柵から見ても外部の人間を警戒しているのは明らかだ。
そうジョニーは分析して見せた。
「そういった集団の中に、武装してモトクロスで音を響かせていくと相手が警戒しちまう…
だから悪いがここからは歩いていこう」
ジョニーはチェックにそう説明して見せた。
チェックも特に異論はなかったし、ジョニー曰くここから村は遠くはないという。
それにモトクロスでここまでくる最中でゾンビの死体…といっていいのかどうかわからないが、
動かない死体は見かけたものの動くゾンビは皆無に等しかった。
注意して歩けば、問題はないように思ったわけだ。
ただ…ジョニーは別の危険性も考慮していたのだが。
「おぉい!どういうこったこれは!!」
突然のことにチェックは地下室の木製の檻の格子をひっつかみ叫んでいた。
ジョニーはやっぱりかといった様相で頭を抱えていた。
モトクロスから降りて十数分。それほどの距離じゃない道を歩いていくと
村の住人であろう男が見張り台替わりに木の上からこちらを覗いているのが遠目にも見えた。
おそらくモトクロスの音が聞こえていて様子を見に来たのだろう。
ジョニーとチェックは敵意がない事と、武器を持ってないことを強調するように両手を上げつつ
見張り台の男に近づいていくと…おそらく見張りを見つけるとそこに誘導させるようになってるのだろう。
自然と獣道になっている不自然に整備された部分に葉が積み重ねられていたのだが、そこに設置された落とし穴に落とされ…気づいたら地下牢の中だった。
チェックはひとしきり叫んでみたものの何の反応もない事を悟り、そうそうに諦めて地面に腰をつく。
「ジョニー…これはどういうことだか分かるか?」
「ああ…まあなんとはなくだがな」
頭を抱えているジョニーに思い当たることがあるのかとチェックは聞きたいのだろう。
まあゾンビ映画でもよくあるやつだ。
「簡単に言えば集団ヒステリーの類さ…ある日突然世界がゾンビに包まれる。すると色々考えこんじまう訳さ。
ある日突然隣のやつがゾンビ化するかもしれない、かまれてるのを隠して一緒にいるかもしれないし
新しく人が増えたらそいつらの中にそういったやつらがいるかもしれない。
挙句の果てにはゾンビ化した家族をかくまっててバレたらこっちを殺しにかかってくるやつもいる。
まあ…大混乱だわな」
やれやれといった感じでジョニーはため息をつく。
そうすると状況を収めるためリーダーシップを発揮しだすやつもいるのだが、大概はうまくまとまらない。
何故かっていやあ全員がとりあえずゾンビから逃げてきた赤の他人だからだ。
よく知りもしない人間に自分や家族の命運を預けようなんてやつは…まあ半分ぐらいはいるかもしれないが
全員が全員そうではない。
そうして思い思いに行動されて挙句の果てにはゾンビを招き入れ大混乱が起きる。
「そういう有象無象をどうやってまとめるか。もうそうなったら恐怖政治しかないわけさ」
銃を持ってると簡単かもしれない。空に一発撃ってぶち込まれたくなければいう事を聞けと叫ぶか
もう実際足なりなんなり撃ってやれば大概のやつはおとなしくなる。
ああ、ゾンビは別だが。
「今は誰かしらがリーダーになってこの集落をまとめてるんだろう。おそらくは見張りに立ってたのも
姫騎士が言ってた戻らなかった村人の1人だろう。よほどここの居心地がいいと見える」
そういってジョニーは皮肉ったような苦笑いを浮かべる。
そうなっていた時を考えてモトクロスは置いてきたのだ。
もしジョニーたちと同じようにこの異世界から来た人間からすればモトクロスの機動力は魅力的だ。
たちまち没収されてしまっていたことだろう。
実際ジョニーたちが持っていた手持ちの食料などは漁られて取られてしまっていた。
「しかし…そうなると俺たちはどうなる?」
「さてなあ…わざわざ牢みたいな場所にぶち込んだってことはすぐ殺す気はないんだろうが…
まだここのリーダーに理性があるならゾンビになるかどうか見届けるため…かもしれんが
狂ってたら…」
「狂ってたら…どうなる?」
思わずチェックがごくりと喉を鳴らす。
「非常食替わり…だったりしてな」
考えたくもないが…この村に大人数を養える備蓄はなかった。保存設備もない事を考えると
食い物は直前まで生かしておくに限る。
「うんざりだなそいつは…」
完全に血の気が抜けたチェックはもう立ち上がる気力もぬけたと言わんばかりにへたり込んだ。
そりゃそうだ。
こんな世界で人肉を食うなんてそんなのはゾンビだけで十分だろう?
だが今のところジョニーたちにできる事はないといえる。
こういう時は寝るに限る。
ジョニーは冷たい地面にごろりと寝転がり。ゆっくり寝息を立て始めた…




