16日目<未明その4>
「チェ----------ック!!」
ブルーズの野太い声が洞窟内を響き渡る。
一足遅れて岩の雪崩れた音がその声をかき消し、同時にモトクロスに乗っていたチェックと女の姿が岩の雪崩れの中に消えていく。
が。一瞬遅れて器用に岩の雪崩れを避けたであろうチェックが若干ふらついていながらもモトクロスから振り落とされずに
武装ジープの後ろについた。女の姿は岩にまかれてしまったのか見えなくなっている。
チェック自身のヘルメットにもこぶし大の穴がぽっかり空いていた。
それがなければ即死だったに違いない。
「あのゾンビたち動きがオカシイ!…いやあれは…」
いつも冷静さを欠かさないチャッキーも言葉を失う。
岩肌を抜いて現れた大量のモンスターゾンビたち…それらが武装ジープの真後ろをピッタリついてくる。
恐ろしい速度だった。
「次は走るゾンビかよ!!」
ジョニーも唸る。
ゾンビ映画で最初の頃は、のろくだが力の強い鈍重なゾンビが数で迫ってくる映画が主流だった。
そんな中突如としてゾンビ界の一世を風靡したのは、無数のゾンビが走って迫ってくる新種のゾンビたちだ。
ゾンビマニアの中でも「走る」派と「走らない」派に分けられるぐらいメジャーになったそれは
異世界であってもそうらしい。
「しかも…早いぞ!こっちはアクセル全開だってのによ!」
後部座席のエフィーも悲鳴のような声を上げる。
チェックの姿が見えた瞬間から、ジョニーはアクセルを踏み込んでいた。だが、おっさん4人は重量オーバーなのか速度は思うようには出ない。
「チェック!お前はジープの前に出ろぉ!追いつかれちまう!ハンドルは俺が持ってやる!」
ブルーズは後方にむけて叫びながら助手席からハンドルをつかむ。
「ジョニー!お前はぁアクセル踏んでるだけでいい!だから頭を働かせるんだ!このままじゃ追いつかれちまう!」
ブルーズの独白めいた叫びで、ようやく事態に頭が追い付いてきたらしい。
一瞬驚いたような目をしたジョニーは自分の手持ちの装備を思い出しながら後方のゾンビたちを睨みつける。
走るゾンビは基本集団で行動する。人の動きや振動で人を判別し襲っていた今までのゾンビとは一線を画す。
何故なら今まで通りであればそんな激しい動きをするならば共食いしてもおかしくないからだ。
そして一部映画を抜粋するならば彼らの好物は生きた脳細胞という事になる。
消えた女の事を一同が極力思い出さないよう、その話はしまい込む。
とにかく走るゾンビと出くわしたのであれば決して止まらない事が条件だ。
人と人であればまだ逃げ切れる目もあるかもしれない、だが武装ジープと同速で走るゾンビ相手に
おっさん連中では逃げ切ることは不可能と言える。
幸いな事に道は一本道で、ほぼほぼ直線だ。よほど予想外な事でも起きない限り武装ジープを走り続けてさえいれば
しばらくの時間は稼げる。
だが、おや?とある事に気づいたジョニーは隣のブルーズにある疑問がわいた。
「ブルーズ…あんた運転の経験は?」
「ぁあ?あるに決まってるだろぉ。なぁにこんな経験しょっちゅうさぁ
時速60km以上で走り続けないと爆発するバスを運転したり
屋根のないタクシーを運転しながら飛び降りてきた女を受け止めたことだってあるぜぇ」
『それダメなフラグ(やつ)じゃねえかな?』
車上の3人の声がきれいにハモった時、武装ジープの前方上部から落石が起きた。
いるんだこの世には理屈抜きで、ハンドルを持たせちゃいけない不運な男ってやつが。
ジョニーがそれを後悔している間に落石は武装ジープの前方に巨大な障害物と化し転がり飛んでくる。
かろうじてモトバイクに乗っていたチェックはそれを躱せたが、無数に飛んでくる岩に武装ジープは
正面から飛び込むことになったのだった。




