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8日目<夕方>

「さっきの場所に戻る?!正気かお前!?」

開口一番、エフィーはジョニーにそう吐き捨てた。


やっとこ洞窟から抜け出したジョニーたち一行は、小一時間ほど無言のまま放心していたが

すでに日も暮れかけていたこともありジョニーは、今後どうするかと前置きした上でいったのだ。


ロスに戻るためにさっきの場所に戻る、と。


聞くに堪えない罵詈雑言を繰り返すエフィーをチャッキーが抑えている間に続きをブルーズが問いただしてきた。

「今更あんたの事を疑う気はねえが…しかしその発言は到底正気とは思えねえ。

訳は聞かせてもらえるのかい?」

ブルーズはジョニーの目の奥を見透かすかのように見つめながらそういった。


ジョニーは実際悩んでいた。

3人の刑事、しかも現役現場の最前線で活躍する優秀であろう3人相手に

やれ「ここは異世界でゾンビの発生源なんです。元の世界に戻るにはゾンビの多いところに行けば何か手掛かりがあるかもしれません」だなんて

そんな荒唐無稽な話を信じてもらえるだろうか。自分だってある種最初は冗談かと思ったというのにだ。


だが…その歴戦の刑事たちを相手にジョニーはごまかすことも話をぼかすことも出来ないと考えた。

自分に出来ることは客観的に、そして正確に自分が見聞きして来た事を伝えるだけだと考えたのだ。


ショッピングモールに逃げ込んだ事、そこであった3人と一緒に武装バンに乗って逃げた事、気づいたら異世界にいた事、そして…

ゾンビと戦ってその3人はおそらく命を落とし1人になった事…


ポツリポツリと話す内容をブルーズ、チャッキー、エフィーも黙って話を聞いていた。

話をし終わった後、その静寂を自分の膝をポンと手でたたき

「だいたいの話はわかったぁ」とブルーズはうなずいて見せた。


「信じるのか?こんな話を?」

「鵜呑みにはしねえさぁ…刑事だからな」

そうジョニーの台詞をばっさりと切った後、ブルーズは続けていった。


「でもまああんたが嘘をついてねえって事ぐらいは分かる…おそらく正しいだろうってこともな。

まあ刑事のカンってやつだがね?」

そう言ってニィッと豪快な笑みを見せる。

チャッキーも大きく、エフィーは不承不承といった体で頷く。


「ありがとう…助かるよ。おかげで今後の話がスムーズにできる」

一息ついた後、ジョニーは焚火を起こしながら話した。


「さっきの場所に戻るとは言ったが、またこの横穴を通って戻るわけじゃない…

あんたたちに会う前に車に乗った夫妻にあった。4人ぐらい乗れるようなミニワゴンだ。

その走行軌跡はこのあたりの道を通ってきてる…

つまり、さっきの洞窟がロスに繋がってるならぽっかり空いてるはずなのさ。

ミニワゴンが通れるようなでっけえ大穴が、さ」

そう指を地面に指しながら芝居がかった言い方で続ける。


「もしそんな大穴があればゾンビが出てこれねえわけがねえ。だからまずはゾンビを探す。

そしてその周辺を調べれば…最終的にはロスに帰れる」


そう言い切るジョニーを3人はじっと無言で見つめていた。

幾ばくかの静寂の後、はぁ…と大きくため息をつきながらエフィーもようやくしゃべりだした。

「しょうがねえ…ここが異世界だろうがグランド=キャニオンだろうが車もなし宛てもなしじゃ

どうしようもねえしなぁ。まあ俺はゾンビとなんて絶対戦わねーけどな!」

「そうハイウケドさっきの状況を見るにキョンシー…いやゾンビは相当数いるミタイだ。野放しにはデキナイ」

「ま~~~たお前はそういう正義感ぶるけどな!命があっての物種って言葉しってるかぁ?!」

と出会った頃と同じようにチャッキーとエフィーで口論が始まる。


こいつらはいつもこうなんだと静観するブルーズ。

ジョニーとしては声につられてゾンビが襲ってこないか内心穏やかではないのだが。

何はともあれだ。


今日はゆっくり休もう、一応乾物や木の実ばかりだが森で調達しておいた食い物もある。

明日になったらこの崖道を下って楽しい楽しいゾンビ狩りとしゃれこもう。


そのジョニーの台詞に他3人は苦笑いを浮かべながらぎこちなく頷くしかなかった。



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