8日目<未明その4>
「行け行け行け行け!GO!GO!!GO!!!GO!!!!」
誰かとなく出た掛け声に一同は素早く動く。
一番に動き出したのはエフィーだ。
光が照らすX印の真下で中腰になり、バレーのトスをする時のように腕を前に組む。
それを確認してるとは思えない速度で、その腕を足場にチャッキーが飛び乗り
軽やかに頭上の割れ目に吸い込まれるように入っていく。
「さあハヤク!」
入ったと思ったらすぐ器用にさかさまに上半身を出し手を伸ばしたチャッキーに引き上げられる形で
エフィーも一呼吸おいて登っていく。
「ブルーズ!」
「俺はいいから早く登れぇぇぇっ!」
ジョニーの声を遮るようにブルーズが叫ぶ。
その間にも前方のゾンビ4体が、ブルーズの銃で倒されようとしていた。
「モタモタしてんじゃねーよ!早く来い!ミンチ肉になっちまうぞ!」
せかしながら手を伸ばすエフィーに半ば吊り下げられる形でジョニーも引き上げられる。
が、体を動かし慣れてないからかチャッキーのようにすんなりは登れない。
足をバタバタさせつつ踏ん張るが、なかなか登れない。
木を切り倒すのは得意でも木登りは得意じゃないんだしょうがないだろ!
と心で舌打ちしている間にも後続から縄でひとまとまりになったゾンビがジョニーに迫る。
「こな…っくそがぁ!」
迫ってくる鈴の音を頼りに、ゾンビの頭めがけてドロップキックまがいの蹴りを入れつつ
その反動でなんとか天井の亀裂に滑り込む。
「ひっひっ!」
なんて情けない声を上げながらブルーズも片手で銃を乱射しつつ、片手でジョニーの足にしがみ付く。
もはやゾンビとブルーズの距離は1mにも満たない距離になり四方を囲まれていた。
ジョニーを引き上げたチャッキーとエフィーはブルーズの両肩をそれぞれ持ち上げようと掴むが
ゾンビの手がブルーズの足にまでかかっていた。
「くそ!クソクソクソ!手を放せってんだ気色わりい!」
丁寧に自分に近い順に頭を打ち抜いていくが、ゾンビの手がブルーズの足に食い込むように離れなくなっていた。
さすがのブルーズも半泣きのような声を上げつつ、掴まれてない方の足でゾンビの手を蹴るが手は一向に離れない。
次第に、ゾンビの手にどんどん他のゾンビの体重がかかり、チャッキーエフィー共引きずりおとされかける。
「チキショー!!」
ブルーズのやけくそ気味な咆哮が洞窟内を震わせた。
手元の銃はすでに弾が切れカチカチとむなしい音を立てるばかり。
チャッキーエフィーもさかさまのまま踏ん張ってるが、ブルーズをつかむ手がガタガタ震えて限界も近かった。
その時。ブルーズの足が生暖かいものに濡れた感触があった。
足を食い破られた…
ブルーズがそれを覚悟した時。
ゾンビの手がすり抜けた。
「!!いまだ!引き上げろ!!」
ジョニーの声に合わせて、一気にブルーズを引き上げる。
そのまま逃げるような速度で、岸壁ともいえるその岩の隙間を登りきった4人は
元々ジョニーがいた崖の途中にある細道までたどり着くと一斉に空を見上げて倒れこんだ。
ブルーズは自分の足を見ないようにしながら触れてみると
生暖かい血のような感触に大きなため息をついた。
「フォーリー…それに息子よぉ…すまねえ、もうお前たちにゃぁ会えねえようだぜぇ…」
なんてため息をつく、ブルーズにジョニーはトントンと肩をたたいた後、足をよく見るように指さした。
「なんだこりゃ…黒い…血…?いや」
「ガソリンだよ。武装バンに乗ってた時の余りを皮袋に入れてたんでね。足に流してみたんだよ」
ガソリン、すなわち油だ。これならゾンビの手が滑るかと思いとっさにブルーズの足に流したわけだ。
ふへへ…とよく分からない笑いを上げたブルーズは、安心したのかそのまま失神するかのように道に倒れ伏した。




