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1日目

ロスがゾンビまみれになって1日目。武装バンのラジオからはひっきりなしに

避難所への誘導放送やら救援要請やらが流れてくるが俺達には関係なかった。


「だって人のいるところに行ったら噛まれてるのを隠してるやつが出てゾンビパニックになるだろ?」


ゾンビ映画で鍛えられた俺たち4人にとってそんなものは自明の理だった。

ならば人がこれないような場所にこそ安全はある。


海は?だめだ。船の上でパンデミックが起こる。ゾンビは海底を歩いてくるんだ。映画で見た。

僻地の監獄は?だめだ。収容されてる囚人が問題を起こしてゾンビを招き入れる。映画で見た。

壁を作って安全な国を作る?だめだ。国民がアカペラを歌いだしてゾンビが壁を破壊する。映画で見た。


あーだこーだ話しながらもゾンビ映画好きな俺たちが意気投合するのに時間はかからなかった。

そんな俺たちが今どこを走っているのか誰も把握してないなんて誰が想像できる?

誰も俺たちを責める事なんてできないはずだ。


ひとしきり笑いあって落ち着いた俺たちは深い霧に覆われた荒野を走っている事に気づく。

だだっぴろい荒野なんてアメリカでは日常茶飯事だが前もろくに見えない霧なんてもんは

だいたいろくでもない事が起こる前振りだ。


「車を止めて周囲を確認するか?」

「それはダメだ。周囲を見回してるうちにゾンビに囲まれるフラグだ。僕がGPSで調べるよ」


車を運転するジョニーこと俺に対してそう提案したのは眼鏡をかけたひょろ長い男。

名前はオマコン。常にバカでかいIpadを脇に抱えているのだが、そのpadの裏にソーラーパネルを張り付けてるイカれた男だ。

だがゾンビに囲まれたら充電できなくなるからなというオマコンにそれ以上の言葉は俺達には不要だった。


「GPSでわかるのは場所だけだろう?」

「GPSで場所を割り出したら気象衛星をハッキングして周囲の映像をリアルタイムで確認するのさ」

妙に機械関係に詳しい男はこういう状況では必須だ。

それ以上の言葉は俺達には不要だった。


しかしオマコンは途端に戸惑いだしやがった。

「インターネットに繋がらない…」

おいおいおいおいまじかよこいつ。こうなったらこいつは色恋沙汰で問題を起こしたあげく

発狂しながらゾンビに食われる役しか残ってないぞ。


「オマコン…悪いがこの武装バンは3人用でな」

「今4人乗ってるだろ!?違うんだよGPSにもアクセスできないんだが問題はそこじゃない。

…いいか?この画面を見てくれ。何か気づかないか?」


そういって俺たちにオマコンはオフラインでも確認できる地図アプリを見せてきたのだが問題はその形だ。

「わかるか…?どれだけ縮小表示しても…アメリカがない。それだけじゃない。日本も中国もヨーロッパもない。代わりに広がるのは見たこともない1つの大陸だが…まるでパンゲア大陸だ」

学のないオマコンを含めない3人はパンゲアだかパンドラかは知らないが

バカでかい1つの大陸だということは分かった。

「オフラインの地図でこんなバグは考えられない。つまりここは…アメリカじゃない!」

『な、なんだって!?』

この時に俺たちはすでに異世界に来てたってわけだ。

お笑いだろう?ゾンビ映画だと思って最適な行動をとってきたはずなのに

実はジャンルが違ってたわけだ。

まさかゾンビ映画じゃなくて異世界漂流ものだったなんてな。

そうなると途端に俺たちは無知になる。

だってそうだろ?銃をぶっ放せない映画なんてストレスが溜まって仕方がないんだ。5分だって落ち着いてみてられやしない。


途方に暮れる3人にオマコンは眼鏡を輝かせて言ったよ。

「大丈夫。僕は異世界物も詳しいからね。きっと役に立てるはずさ!」

それ以上の言葉は俺達には不要だった。

その瞬間オマコンは名アシストポジションの重要人物なのを皆が確信したからな。


俺たち4人はオマコンの指示の元、集落を探すことにした。

ご丁寧にIpadの地図にはその場所が記されていたからだ。


そんな中、車を運転しながらジョニーこと俺は思っていた。


(アシストポジションをくれてやるが皆を指導し導くリーダー役は俺が戴くからな)


…なんて、な。

まだジョニーはゾンビ映画のセオリーから抜け出せないでいたってわけさ。

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