6日目
さて…まずは当面の武器をそろえないとな。
姫騎士との別れを済ませたジョニーは、ほとんど着の身着のままの恰好で比較的視界の開けた森の中を
散策していた。
通常、こういった森の中はゾンビの格好の隠れ家であり避けるべきだ。
ゾンビ映画でも逃げた先でゾンビに襲われるシチュエーションはだいたい決まっている。
郊外の牧場。ゴーストタウン化した辺境の町中。そして森の中だ。
だがジョニーからすれば森は宝の山といえた。
まず食料として木の実やキノコ等が豊富である事。
季節にも左右されるが木登りしなくても手に入る野イチゴなどは簡単に見つけやすい。
狩猟経験があれば動物を狩る事もできるだろう。
サバイバル生活をしている某軍人も、貴重なたんぱく質はだいたい山や水辺からとっているしな。
時間をかけるのが危険なら簡単な罠を設置するという手もある。
また森の奥地まで入り込まなければという条件付きだが、ゾンビが隠れる場所が限定的な事。
森といっても木と木の間には隙間が存在する。
注意深く目を見張ればゾンビが潜んでいそうな場所はだいたい見当がつく。
もちろん素人では見落としもあるだろうから、不慣れな人間は連れてこない方がいい。
段差やぬかるみなどに注意を払える人間でないのなら外周部を遠巻きに散策するのをお勧めする。
ちなみに寝床が必要な場合は、森の高い場所にハンモックという手が安全だ。
簡単に設置ができ、持ち歩きも容易。
ゾンビに囲まれた場合のために、投げ縄があれば木々を伝って逃げることも可能だ。
そして木材の入手が容易な事。
すなわち武器の素材が手に入るってことだ。
「そして…最悪森を燃やせばゾンビは全滅だ」
森林保護団体に激怒されそうだが、まずは人命だからな。
それもこれも木こりという職業柄培った知識と経験がある故でもある。
だが一つ気がかりな事がある。
「どうやってアメリカに帰るか」である。
現状、手掛かりは皆無に等しい。
ジョニーたちにしても荒野を走っていたらいつのまにか異世界に来ていたのだ。
だが、姫騎士に話したあの「仮説」が正しければ必ず帰る手段はある。
こちらの世界に紛れ込んだ人間がゾンビになった事が発端であったなら。
そのゾンビが元の世界に戻ってきたからこそ
ジョニーたちのいたアメリカでゾンビパンデミックが起きたはずだからである。
なのでジョニーは待つことにした。
新たな漂流者が異世界に来る事を。
「もし…見知らぬ土地に迷い込んだと思ったなら…だいたい人の行動パターンは決まってるからな」
そういってジョニーはニイっと歯をむき出して…準備に取り掛かった。