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4日目<深夜>

城は巨大な松明と化していた。


燃え盛る炎は城を包み込み、照りかえった赤と青の光が夜の闇を吹き飛ばす。

燃え上がった炎にあぶられて超大型ゾンビは両手両足をもがくようにでたらめに振り回していた。


だが、武装バンが。

それに乗ったジョニーが超大型ゾンビを城に釘付けにする。


膝に突っ込んでいた武装バンだが、超大型ゾンビの体が防波堤の役割を果たしていたおかげで

直接炎にあぶられずには済んでいた。


だが、ゾンビが焼かれるほどの高温は武装バンの中も例外ではない。

エアコンからは熱風が吹き付け、ハンドルは火傷するほどの熱量を持っていた。

それでもジョニーは一心不乱にハンドルを握りしめ、脂汗を浮かべながらも

超大型ゾンビから目を離さない。


いつもの軽口が出る余裕もない。

少し気を緩めれば暴れる超大型ゾンビに武装バンごとハンドルを持っていかれそうになる。

アクセルを踏む足も暫く前からもう感覚がない。

ガソリンメーターも空を示すemptyまでゲージが振り切っていていつ動かなくなるか分からない。

焦げて腐った生肉の匂いに何度も吐きそうになる。


そういえばなんで自分たちは関係もない、それも異世界の見知らぬ他人を

助けようとしているのだろう?


ゾンビ映画でも見ていて疑問に思っていたものだった。

正常だった頃の世界のルールやモラルに囚われて理屈に合わない行動をするやつらがいる。

ゾンビ映画の主人公たちを見ては合理的じゃない。それじゃあ生き残れないぜ。といつも思っていた。


案の定というかだいたいそれが元でトラブルが起こる。

それがゾンビ映画のセオリーであり現実世界でのエンターテイメントだった。


だから実際、そんな事態が起きたら…

役にも立たない人間なんてほっておいて、分かっている人間だけで新天地へ逃げ出そう。

そう考えたからこそジョニーはショッピングモールに立てこもっていた

オマコン、ジタン、マックスらとたった4人でロスを脱出したのだ。

なのに何故…


何故…だって?


「へ…へへへへへ…何らしくねえこと考えてんだ俺はよ…っ」

どうやら軽く意識がぶっ飛んでたらしい。

ああ、そういえばなんで人を助けるのかとか言ってたっけ…?


「そりゃあ助けられるから助けるんだよ…!決まってるだろうが…!」


流儀も信仰も人種も関係ない。

世界があわくってる時に理屈なんてどうでもいい。

助けられるから助けるのだ。

他の連中だって助けるのに反対したやつは1人もいなかった。


だってよ…ゾンビに襲われた怖さは何より俺たちが理解してるんだからよ。


武装バンのハンドルとアクセルを手近にあった道具で無理やりロックする。

長くは持たないだろうがそれでいい。


「どんなに暴れたくてもよ…そのぶっとい手足を切り倒しちまえば暴れようがねえだろ…!」

チェーンソーを持ち上げ、ジョニーは武装バンから飛び降りる。

膝から地に着いた超大型ゾンビは、ちょうどジョニーの目の前にその足の太ももをさらしていた。


「ちと臭いが熟成肉でこんがりバーベキューにしてやるぜぇぇぇぇぇっっっっっっ!!」


渾身の一振り、二振りで両足をそぎ落とし…

踏ん張ることが出来なくなった超大型ゾンビは武装バンと共に城の業火に突っ込んでいった。


ぅぉぉっぉぉぉぉっぉぉぉぉっぉぉっぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…


恨めしそうな断末魔を上げ…超大型ゾンビは炎にくべられ。

同じように炎にまみれた武装バンの爆発に巻き込まれ、炎の中に消えていった。


「やれやれだ…やっとこの辛気臭い一日が終わってくれそうだぜ…」


霞んだ瞳で空を見上げる。

もう暫くまともに拝んでない朝日ってやつを目いっぱい浴びることが出来そうだ…


そんな事を考えながら、ジョニーはその場に倒れこんだ…



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