4日目<ジョニー>
何か地響き…が聞こえた気がした。
それが気のせいではないということは一斉にゾンビたちが城に向かっていくことでジョニーは理解した。
あの3人が何かやったな、と。
「へへへ…さすがは俺が見込んだ3人だ」
アクセルを踏みしめだいぶその総数を減らしたゾンビたちを、轢き飛ばしながら様子をうかがう。
すると…今まで武装バンにつかず離れずを守っていた超大型ゾンビがゆっくりと城の方へ向かっていくではないか。
「よぉしよしよしよしよし…いい子だ…そのまま城にスライディングしちまえ…ほらいけよ、いっちまえ!」
文字通り手に汗を握りながらジョニーは小声で超大型ゾンビに声援を上げる。
普通サイズのゾンビはもはやほぼ全てがひき肉になるか、城の中に入っている。
あとはあの超大型ゾンビが入り口にはまって動けなくなるぐらいしてくれれば最高だ。
ゆっくり…ゆっくりと進む超大型ゾンビにイライラしながらも自分の方に引き付けてしまわないよう
離れた外周からその様子をじっと見つめていた。
だからこそ気づいた。
妙な違和感を。
いや違和感ではない。
確実にずれていた。
「おいおいおいおいおいおい待てよこのくそったれ野郎が…なんで城の入り口じゃなくてちょっとずれてやがんだおい」
ジョニーの見た通り…超大型ゾンビの進行方向はわずかに城から逸れて湖に向かっていた。
もし城に引き込んだゾンビごと、この超大型ゾンビを焼き殺せなければおそらく倒す術はもはやない。
ジョニーは急いでアクセルを踏みしめ超大型ゾンビを先導しようとする。
「おいこら!このくそったれゾンビ野郎!こっちだよこの間抜けが!お仲間のケツが小さすぎて見失ったのか!それならこのバンのケツを目印に追っかけてきやがれ!」
エンジンを吹かして目の前で煽っても超大型ゾンビはうつろな瞳を湖へ向けていた。
まさかの俺がしくじるのか!?
今城の中ではあの3人が目覚ましく活躍しているだろうに
この俺が台無しにしちまうだなんて!
そう3人の活躍を信じて疑わないジョニーはなにか打開策はないか必死で考える。
考えろ考えろ…決して思考を止めるんじゃねえぞジョニー!
お前はどうする…!何かを誘導したい時…なにか使えそうな…木を切り倒す時…!!
「そうだよ…あるじゃねえか!あの大型のボンクラにとっときの必殺技がよぉ…!」
ジョニーは武装バンのアクセルを踏みしめて超大型ゾンビの後ろに回りこむ。
わずかに進行方向をずれてはいるがほぼ城の方向には向いている。
なら、望む方向に倒れるように切り倒せばいい。
「でけえ木を切るときはよ…倒したい方向にわざと先に切れ目をいれてから逆から切り倒す!
だが人間みてえな体してるお前には切れ目なんぞいらねえぇぇぇ!」
アクセルを全開にして超大型ゾンビの…膝裏に突っ込む!
勢いよく突っ込んできた武装バンの圧力に押され超大型ゾンビは思わず倒れこむ。
何が起こったのか分からないであろう超大型ゾンビが虚空を仰ぐ。
そんな超大型ゾンビにジョニーは叫んでやった。
「どんないいガタイしたでかいやつでもよお!膝裏から不意打ちしてやりゃ倒れこんじまう!
こいつが『膝カックン』ってやつだぜぇぇぇぇぇ!」
おそらく人類史上初の武装バンで膝カックンをしたジョニーはだがそれでも額から汗をにじませる。
アクセルを限界を超えて、さらに押し付けるように踏み込み固定する。
このまま城に押し込んで超大型ゾンビを城にくぎ付けにする!
ぉぉぉぉおおおおぉぉぉぉ…ぉぉぉ…!
初めてまるで声のようなうめき声を上げる超大型ゾンビを睨みつけながらジョニーは言う。
「このままテメエを蒸し焼きにする!
俺が先に根を上げるか!お前が先にこんがりローストになるか!
チキンレースといこうじゃねえか!!!!!」